2018年1月に読んだ本

●7717 ぼんくら (時代小説) 宮部みゆき (講談文) ☆☆☆★

 

ぼんくら(上) (講談社文庫)

ぼんくら(上) (講談社文庫)

 

 大矢によると、宮部が「どぶどろ」が大好きで、トリビュートした傑作ということで、彼女は時代ミステリベスト3を本書と「どぶどろ」とあの「警視庁草紙」としているのだ。果たして、そのプロットは「どぶどろ」とうり二つだが、文章はこっちの方がはるかに読みやすい。解説で北上が書いている弓之助やおでこ、と言った脇役の造形も素晴らしい。(北上が「どぶどろ」に触れていないのは物足りないのだが)

途中、そうか僕は宮部の時代小説を無視しすぎた。ここには、お宝が隠されているのではないかとうれしくなってしまったのだが、さて謎解きの段階になると、残念ながらいただけない。まず、論理が美しくない。そして、結局ロジックがゆるいのだ。AかBか、論理ではなく、何となくどちらかに決まってしまう。

歴史ミズテリ=捕物帖は、科学捜査もなく、この緩さが三が手なのだが、やはり本書もそこから逃れらられていない。そして、宮部は現代ミステリでもそこが弱点なので、まあ、時代ミズテリを量産するのは、戦略としては正しいのか。

 

●7718 北条早雲 明鏡止水篇 (歴史小説) 富樫倫太郞 (中央公) ☆☆☆☆

 

北条早雲 - 明鏡止水篇

北条早雲 - 明鏡止水篇

 

 シリーズ4作目だが、正直この時代は背景がよく理解できず(山内上杉と扇谷上杉の対立とか、堀越公方とか)三冊でやめていたのだが、偶然図書館で見つけて、読む本がなかったので、読み出したら一気読み。面白かった。

というのも、本書には軍配者が大勢でてきて、知恵比べとなるのだ。イマイチ特徴がなかったシリーズに、著者はヒットシリーズのテーストをもってきた。そして、とりあえずそれは成功している。