中山七里おすすめ神7

①連続殺人鬼カエル男

 

連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)

連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)

 

 

②さよならドビュッシー

 

さよならドビュッシー (宝島社文庫)

さよならドビュッシー (宝島社文庫)

 

 

③贖罪の奏鳴曲

 

贖罪の奏鳴曲 (講談社文庫)

贖罪の奏鳴曲 (講談社文庫)

 

 

④追憶の夜想曲

 

追憶の夜想曲 (講談社文庫)

追憶の夜想曲 (講談社文庫)

 

 

⑤テミスの剣

 

テミスの剣 (文春文庫)

テミスの剣 (文春文庫)

 

 

⑥スタート!

 

スタート! (光文社文庫)

スタート! (光文社文庫)

 

 

⑦要介護探偵の事件簿 (苦しい!)

 

要介護探偵の事件簿

要介護探偵の事件簿

 

 

柚月裕子おすすめ神7

①孤狼の血

 

孤狼の血 (角川文庫)

孤狼の血 (角川文庫)

 

 

②あしたの君へ

あしたの君へ

あしたの君へ

 

 

③検事の本懐

 

検事の本懐

検事の本懐

 

 

④最後の証人

 

最後の証人 (宝島社文庫)

最後の証人 (宝島社文庫)

 

 

⑤検事の死命

 

検事の死命 (「このミス」大賞シリーズ)

検事の死命 (「このミス」大賞シリーズ)

 

 

⑥盤上の向日葵

 

盤上の向日葵

盤上の向日葵

 

 

⑦慈 雨

 

慈雨

慈雨

 

 

 

2017年 8月に読んだ本

●7679 濱地健三郎の幽なる事件簿 (ミステリ) 有栖川有栖 (角川書)☆☆☆★

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 心霊探偵・濱地健三郎を主人公とする短編集。傑作「幻坂」に2編出ていた、とのことだが、うっすらとしか記憶にない。濱地は、死者の念が見えるという、榎木津のような断定だが、本書はホラーではない。(全然怖くない)かといって、西澤お得意の特殊設定ものでもない。

じゃ、何かと言われると、著者も後書きで苦労しているが、うまく表現できない。というか、ストーリーはホラーよりミステリによっているが、心霊現象のしばりがゆるすぎて、ちょっとパズラー時には弱いのだ。

ただ、キャラクターは立っていて、文章も良くて、クイクイ読めるので、何か後味はホラーと逆のテースト。後半の「霧氷館の亡霊」と「不安な寄り道」が、まずまずだったということは、やっと著者もこの設定の使い方が慣れてきたということか。

「幻坂」が傑作だっただけに、少し物足りないが、読んで損はないと想う。火村のアンチテーゼのような、濱地探偵の次に期待。

 

●7680 「司馬遼太郎」で学ぶ日本史 (歴史) 磯田道史 (NHK) ☆☆☆☆
「司馬?太郎」で学ぶ日本史 (NHK出版新書 517)

「司馬?太郎」で学ぶ日本史 (NHK出版新書 517)

 

 磯田=江戸の専門家?と司馬遼太郎というのは、イメージが合わなかったのだけれど、そう言えば、磯田は竜馬について書いていた。しかし、やはり磯田の表現能力は素晴らしい。わかりやすい。あっという間に読んでしまった。

司馬史観は、明治を善、昭和を悪(鬼胎)としすぎることに、違和感をずっと感じていた。(だから、僕の「坂の上の雲」への評価は少し厳しい)しかし、こうやって、「国盗り物語」=織田信長から、昭和まで論理的に順に説明してもらうと、決して司馬は単純にそう考えたわけではなく(当たり前か)この国の陥りがちな悪癖(調子に乗ること)への警鐘であったのだ。

磯田が「花神」が司馬のベスト、というのもなかなか気が合うなあ。まあ、僕は竜馬を上にするが、花神も大好きだ。ただ、題名は磯田道史の「司馬遼太郎入門」の方が正しい気がする。

 

●7681 ここから先は何もない (SF) 山田正紀 (河出新) ☆☆☆

 

ここから先は何もない

ここから先は何もない

 

 

 

題名はボブ・ディラン。内容は著者があとがきで書いているように、あの「星を継ぐもの」への不満の解消するために書いた、とのことで、小惑星で何万年前の人骨?が発見される、というのは何度読んでも魅力的だ。また、もうひとつの動機として70年代著者が中間小説誌に、まだなじみのないSFをどうやって書こうとしたか、は本書の冒頭の銀行のシーンで見事に生かされていて、すっと物語に入れた。

そこから、あれよあれよと一癖のある、しかし犯罪者ではないメンバーが集合し、謎の解決のため、米軍基地に進入するあたりは、まるで「火神を盗め」のようで、わくわくした。しかし、今回は主人公がハッカーというのがくせ者で、物語は電脳空間で推進力を失ってしまう。(少なくとも僕には)

というわけで、前半はひさびさの大傑作か、と想ったのだが(神、進化、生命、とてんこもり)途中から訳が分からなくなった。結局、本書は神シリーズ、シンギュイラリティー版、なのか?

山田正紀は不思議な作家だ。大好きだし、かなり読んでるつもりだが、この一冊というのがないし、最近のは雑すぎる気がする。でも、早いうちに何とか、山田正紀おすすめ神7を作りたい。小松左京と同じで、どうにも思い出せない作品が多いのだ。

 

 ●7682 真夏の雷管 (ミステリ) 佐々木譲 (角川春) ☆☆☆★ 

真夏の雷管

真夏の雷管

 

 道警シリーズ第八弾、とのことだが、たぶん僕はこのシリーズを3,4冊読みながらも、派手で雑だなあ、と感じて、読まなくなっていた。ただ、新刊夏枯れの今、ネットの評判も良さそうなので手に取った。(一方、真保の新刊はあまりネットの評判が悪くて、やめてしまった)結論から言うと、警察捜査小説としては、テンポよく一気に読ませる。ただ、ミステリとしては、あまりにもひねり、けれんがない。まあ、87分署みたいに文庫で一発だったら、これでいいのかもしれないが。さて、佐々木も神7作れるのだが、道警シリーズも警察官の血も、僕の場合入らなくて、初期の戦記物ばかりになりそうなんだよね。

 

 

  ●7683 NHKニッポン戦後サブカルチャー史 (社会学) 宮沢章夫 (NHK) ☆☆☆☆ 
NHK ニッポン戦後サブカルチャー史 深掘り進化論

NHK ニッポン戦後サブカルチャー史 深掘り進化論

 

  少し前、NHKで宮沢がやっていたTV番組の続編のノベライズ、らしい。僕は今回は見逃してしまった。で、大森の「SF」は何を夢見るか?が読みたかったのだが、内容はまあ当たり前で、それほどでもない。 逆に期待していなかった、泉麻人の「深夜テレビの背徳」が、オールナイトフジに偏らず、結構自らの体験とシンクロして楽しんでしまった。まあ、あと都築響一の「ヘタうま」で、ひさびさの蛭子のマンガ(当時僕は結構好きだった)を見て、今の蛭子との落差に今さら愕然とする。 


●7684 サザンオールスターズ 1987ー1985 (音楽) スージー鈴木 (新潮新) ☆☆☆☆  
サザンオールスターズ 1978-1985 (新潮新書)

サザンオールスターズ 1978-1985 (新潮新書)

 

 「クワタを聴け!」(中山康樹=亡くなってしまった)を読みながら、本書に手を出したのは、副題の年代。そうこの時代こそが、僕の学生時代であり、サザンとの蜜月であった。(正直、後期の「TSUNAMI」の評価にはぞっとする)個人的に、自腹で買ったLPは「ヌードマン」と「カマクラ」で、「メロディ」と「バイバイマイラブ」がベストと想っていた僕には、気持ちのいい評論だった。そうそう、もう一本、シングルを中心にしたテープのベストも、すり切れるまで聴いたのだが、その時のベストは「C調言葉」と「涙のアベニュー」。 


●7685 芸能人と文学賞 (企画) 川口則弘 (KKB) ☆☆☆☆ 
芸能人と文学賞 〈文豪アイドル〉芥川から〈文藝芸人〉又吉へ

芸能人と文学賞 〈文豪アイドル〉芥川から〈文藝芸人〉又吉へ

 

  又吉のダイヒットが著者に、本書を書く期待を与えた。本来は直木賞男の著者が、細かいことはいわずに、芸能人の文学賞受賞うんちくを繰り広げるのだが、これが想ったより数が多くて、そのほとんどが記憶にあるのに驚く。(鈴木いずみが、こういう取り上げられ方をするのには、違和感があるが)

というわけで、最後の方はさすがに飽きてしまったが、著者の本の中では、一番楽しめたかもしれない。

 

●7686 ライプツィヒの犬 (ミステリ) 乾 緑郎 (祥伝社) ☆☆☆☆

 

ライプツィヒの犬

ライプツィヒの犬

 

 

個人的には「完全なる首長竜」以来、著者に注目している。そして、地味だが「鷹野鍼灸師」「機巧のイヴ」「思い出は満たされないまま」等々、ジャンルにとらわれず、着実に書き続けてきた。で、本書を読みながら、ついに著者もブレイクか?と期待を抱いた。

冒頭は、東ドイツにおける謎の殺人事件の描写で、それが一気に現在の日本にフラッシュバックして、主人公(劇作家・演出家)が、東ドイツの伝説の劇作家ギジの芝居を見に行き、途中で抜け出して、ギジ本人と桐山という謎の青年と出会うシーンから一気に物語に引き込まれた。

東ドイツというと須賀しのぶだが、著者はそれに劣らず、見事に東ドイツの演劇学校

(主人公が留学することになる)を描く。ただ、小説としては素晴らしいのだが、無理矢理ミステリ、というか殺人にした部分が、雑というか、分かりやすいというか、やや残念な出来。

というのも、メインの謎が(途中で予測がつくが)「俳優パズル」等々で、使い古されたもので、しかもそれがうまくはまっていない。でも、やっぱり本書は物語として素晴らしいし、キャラクターも立っていて、ブレイクは無理だろうが、少し甘い採点をしてみた。次作こそ、さらに期待。筆力は申し分なし。

 

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永井するみおすすめ神7+1

①大いなる聴衆

 

大いなる聴衆 (新潮ミステリー倶楽部)

大いなる聴衆 (新潮ミステリー倶楽部)

 

 

②唇のあとに続くすべてのこと

 

唇のあとに続くすべてのこと

唇のあとに続くすべてのこと

 

 

③欲しい

 

欲しい

欲しい

 

 

④ランチタイム・ブルー

 

ランチタイム・ブルー

ランチタイム・ブルー

 

 

⑤隣人

 

隣人

隣人

 

 

⑥ボランティア・スピリット

 

ボランティア・スピリット

ボランティア・スピリット

 

 

⑦天使などいない

天使などいない

天使などいない

 

 

+1、秘密は日記に隠すもの

 

秘密は日記に隠すもの

秘密は日記に隠すもの

 

 

今邑彩おすすめ神7+1

①金雀枝荘の殺人

 

金雀枝荘の殺人 (中公文庫)

金雀枝荘の殺人 (中公文庫)

 

 

②よもつひらさか

 

よもつひらさか (集英社文庫)

よもつひらさか (集英社文庫)

 

 

③「死霊」殺人事件

 

「死霊」殺人事件 警視庁捜査一課・貴島柊志 (光文社文庫)
 

 

④「裏窓」殺人事件

 

「裏窓」殺人事件―警視庁捜査一課・貴島柊志 (中公文庫)
 

 

⑤盗まれて

 

盗まれて (中公文庫)

盗まれて (中公文庫)

 

 

⑥七人の中にいる

 

七人の中にいる (中公文庫)

七人の中にいる (中公文庫)

 

 

⑦i(アイ)鏡に消えた殺人者

 

 

+1、ルームメイト

 

ルームメイト (中公文庫)

ルームメイト (中公文庫)

 

 

  

2017年 7月に読んだ本

●7671 黒い波紋 (ミステリ) 曽根圭介 (朝日新) ☆☆☆★
黒い波紋

黒い波紋

 

 このところ、コツコツと安打(内野安打)を重ねてきた著者だが、残念ながら今回も単打止まり。長打、本塁打にはまだまだ足りない。もし、文庫書下ろしなら、ちょうど満足という感じかな。

自然死した老人の息子が、遺品の中からあるものを見いだし、政治家を恐喝することになるのだが・・・という物語。まあ、内容はせこいし、人の命が軽すぎるが、クイクイ読ませるのは確か。

そして、最後に(はっきり書いていないが)ちょっと驚くオチが2つ。だけど、その根本にある、2つの事件のつながりが(これまた書いていないが)単なる偶然、というのは、やはりいかにも弱い気がするなあ。

 

●7672 誰が歴史を歪めたか (対談) 井沢元彦 (祥伝文) ☆☆☆☆
誰が歴史を歪めたか―日本史の嘘と真実 (祥伝社黄金文庫)

誰が歴史を歪めたか―日本史の嘘と真実 (祥伝社黄金文庫)

 

副題が、日本史の謎と真実。題名から類推するような猛々しい内容ではなく、古い本だが(2000年)楽しめた。何しろ対談相手が凄いメンバーだ。梅原猛、森浩一、陳舜臣小松左京小室直樹高橋克彦田中優子山本夏彦半藤一利呉善花、というオールスター。(図書館で高橋克彦の本を検索していたら、本書を見つけた)

特に(予想通りではあるが)梅原、小松、小室、といった博覧強記の知の巨人と、井沢の「逆説」(言霊、怨霊、穢れ、等々)とは非常に波長が合い、対談が弾んでいる。もちろん、一人一人の分量が少ないので、物足りなさも残るのだが、気楽に読むには最適ではないだろうか。

そして、森、陳、小松、小室、山本、といった人々は、鬼籍に入ってしまった。(梅原と半藤は元気だなあ)ぜひ、今度は磯田との対談を読んでみたい。

 

●7673 同い年ものがたり (エッセイ) 佐高信 (作品社) ☆☆☆
“同い年

“同い年"ものがたり

 

 

結局、最後まで読んでしまったが、変な本である。<世代>と<人物>で語る昭和史、が副題で、昭和をいくつかの世代=同い年に区切って、100人近くの人物について書いているのだが、どこが昭和史かよく分からない。(一番古いのが、大正生れの村山富市

まず、選び方がよく分からないし、内容も短くて、著者の好き嫌い(しかし、それも何か婉曲な書き方)を書いているようにしか思えない。ひどい人(張本勲)など、名前しか紹介されない。で、好きな人?は新たに章を立てて長く書く。

どうも、僕は著者がよく分からないし、好きになれない。

 

 ●7674 黄昏の囁き (ミステリ) 綾辻行人 (講談文) ☆☆☆★
黄昏の囁き (講談社文庫)

黄昏の囁き (講談社文庫)

 

 綾辻の神7を作ろうと思ったら、作品が少ない上に、「囁き」三部作の内容が区別できない、というか思い出せない。すなわち評価できない。「殺人鬼」が未読なことは赦してもらうが(僕はホラー、特にスプラッターは大の苦手)これでは7冊選べないので、読み直すことにした。(一応、既読のはず)

このシリーズからだいぶ後、同傾向の「最後の記憶」がでて、これはまあ標準作だったが、それが傑作「アナザー」につながった、と想っている。

で、やっぱりホラーは苦手なので、一番パズラー色が濃いとネットに書かれていた、第三作の本書から逆に読み出した。

結論は微妙というか、傑作とは言えない。93年の作品だから、文章が若書きなのはしょうがないとしても、ストーリーが単調である。まあ、その分読みやすいが。で、ミステリー的なトリックは、二段構えになっているが、意外ではあるが、美しくない。

最初のミスデレクションだけだと弱いし、真の回答は、ちょっと動機に無茶がありすぎる。(ただ、このトリックが、のちに「アナザー」につながったのかもしれない)

以上、たぶん綾辻以外の作家の作品なら、もう少し甘くなるかもしれないが、綾辻がこれでは駄目な気がする。って、勝手なものだが。

 

●7675 暗闇の囁き (ミステリ) 綾辻行人 (講談文) ☆☆☆★
暗闇の囁き (講談社文庫)

暗闇の囁き (講談社文庫)

 

 続いて第二作だが、今度も微妙。本書も間違いなく再読なのだが、内容はほとんど覚えていない。なのに、当然かもしれないが、ミステリ(+ホラー)としての設計図はほぼ途中で分かってしまった。主人公の過去との関わり方(絵本)というのが、「黄昏」よりも、よく出来ているとは感じたが、もう少しうまい使い方があったように感じた。

たぶん、本書は著者も言うように「悪を呼ぶ少年」=双子、に今や大流行のあるネタをぶち込んでいるのだが、現時点から言うのは反則の気もするが、せっかくの素材を、文体が生かし切れなかった気がする。(それと、読み逃したのかもしれないが、冒頭の惨殺事件の犯人は結局誰なんだろう?)

というわけで、本書もまた神7に入れる気にはならなかった。「十角館」「迷路館」「時計館」「暗黒館」「アナザー」までは当確なのだが、あと「奇面館」を無理に入れても、やっぱり一冊足りないなあ。「緋色」に期待できるかなあ?

 

●7676  緋色の囁き (ミステリ) 綾辻行人 (講談文) ☆☆☆☆
暗闇の囁き (講談社文庫)

暗闇の囁き (講談社文庫)

 

 ついに、第一作。でやっとギロギリ合格か。再読なので、しょうがないが、たぶん初読当時は、この結末にかなり驚いたと想う。

囁き三部作を通しての文句、文章の稚拙さ(なぜか、三作目の黄昏が一番感じたが、読んだ順番か)や、警察の無能さ、さらには本書の隔離された女子高の寄宿舎、というベタな状況、等々は認めなければならないが、本書にはやはり驚きと、それを支える論理のアクロバットがある。

僕は「ユリゴコロ」を思い出してしまった。もちろん、そこまでは届いていないが。(また、このトリックは変形しながら、緋色・黄昏・アナザーと続いている感じで、読んだ順番は間違えた感じ)

というわけで、やっと綾辻の神7が、ぎりぎりだけれど作れそうだ。

 

●7677 スティグマータ (ミステリ) 近藤史恵 (新潮社) ☆☆☆☆
スティグマータ

スティグマータ

 

 「サクリファイス」から続く、シリーズ第五作で、何と図書館で一年以上待って、一気に読んだ。残念ながら今までの作品の詳細は忘れてしまったが、登場人物たちには何とか覚えがある。

そして、何より、いかにも欧州っぽい複雑なサイクルレースの世界が、リアルにビビッドに描かれていて、読み出したら止まらない。

問題はいつも、そこに絡む「死」犯罪の部分で、どうもやりすぎのような気がしてしまう。今回も、細かい伏線も張っているが、犯人の動機にイマイチ納得できない部分が残る。それでも、本書は爽快なスポーツ小説であるだけで、十分だが。

 

●7678 乱歩と清張 (エッセイ) 郷原 宏 (双葉社) ☆☆☆★
乱歩と清張

乱歩と清張

 

 一昔前ならば、松本清張=社会派が、乱步=本格派を滅ぼした?という妄言を信じる人もいたかもしれないが、実際には本書にあるように、乱步は清張を大きく評価していた。ただ、それが「一人の芭蕉」だったかどうかはわからないが。

まあ、特に乱步側は面白く読めたが、本書にはそれほど新しい記述はなかった。また、宇山なき今、書かれるべきなのは、その後の冒険小説と新本格の80~90年代の物語だが、それを書ける人がいるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山田正紀おすすめ神7+1

この神7は文句、異論、ありまくりだろうが、一応調べたら山田の小説を53冊読んでるので、一応僕なりの基準で選んでいることを理解ください。山田正紀は不思議な作家だ。そうか、伊坂や恩田のように、常にいつか凄い傑作を書くと期待させつづける作家の元祖だったんだ。

 

アフロディーテ 

 この作品を山田のベストにあげる人はまずいないはず。僕は大学時代に本書でギラギラとした夏休みを経験した、だけでなく、何と35年後に再読したら、本書の未来と現実が完璧にシンクロしてしまったのだ。しかも、その数日後に本当にひさびさに有栖川有栖に会うというおまけつき。本書は僕にとって、甘酸っぱい青春そのものなのだ。

アフロディーテ (1980年)

アフロディーテ (1980年)

 

 ②デッドエンド

神シリーズと螺旋。僕の大好きな隠れた名作。短いから破綻もない。

 

デッド・エンド (1980年)

デッド・エンド (1980年)

 

③神狩り

 今さら言うまでもない、著者のデビュー作。再読して、その内容のスカスカさに驚いたが、やっぱりかっこいいのにも驚いた。関係代名詞と薔薇。これは小説なのか?

 

 神狩り (角川文庫)

神狩り (角川文庫)

 

④弥勒戦争

 実は再読するまでは、本書が山田のベストだった。こんな理屈の勝った作品だったのか?

【新装版】弥勒戦争 (ハルキ文庫)

【新装版】弥勒戦争 (ハルキ文庫)

 

 

⑤地球・精神分析記録

いい意味で、山田のお勉強体質が出た傑作。再読にも見事に耐えた。

 

地球・精神分析記録(エルド・アナリュシス) (徳間デュアル文庫)

地球・精神分析記録(エルド・アナリュシス) (徳間デュアル文庫)

 

 

 ⑥襲撃のメロディー

 あまりに字が小さく、日焼けしていて再読はあきらめたが、僕の古いノートを信じれば大傑作。ただ、表紙にはコンピューターの入力用紙?らしきものが・・・・・

襲撃のメロディ (1978年) (角川文庫)

襲撃のメロディ (1978年) (角川文庫)

 

 

ブラックスワン

ミステリを一冊あげるなら「人喰いの時代」か「ミステリオペラ」が妥当かもしれない。また僕は「僧正の積木唄」も結構好きだ。でも、本書の発読時の所感をなぜか優先したい。(当時は山田がミステリを書くと思わなかったのだ)正直、再読するとかなり評価は落ちてしまったのだが。

ブラックスワン (ハルキ文庫)

ブラックスワン (ハルキ文庫)

 

 

+1 火神を盗め

再読して一番評価が下がったのが本書。「謀殺のチェスゲーム」も同じ。半村の伝奇小説と同じく、還暦間近のサラリーマンには、一般企業がこんな馬鹿なことをする小説は耐えられないのだ。学生時代は大傑作と興奮したのに。嗚呼。「エイダ」や「宝石泥棒」や「女囮捜査官」はどうしたんだ、と怒らないでね。ごめん。

 

火神(アグニ)を盗め (ハルキ文庫)

火神(アグニ)を盗め (ハルキ文庫)