2017年5月に読んだ本
●7650 家康 ー自立編ー (歴史小説) 安部隆太郎 (幻冬舎) ☆☆☆★
「等伯」が畢生の大作、傑作だっただけに、家康というあまりにも手垢のついた題材に、筆者が取り組んだのは、意外であり、危惧も持った。ただ、著者も言っているように、信長、秀吉は、物語上のキャラクターはだいたい決まっているが家康こそ、様々に描かれてきた、というのも事実。
●7651 夜の谷をいく (フィクション) 桐野夏生 (文春社) ☆☆☆☆
過去の作品から、いつか書くんじゃないだろうか、と想っていた、連合赤軍もの。その後の連合赤軍というには、悲惨すぎるし、そこにはこれっぽっちの共感もないが、女王の手に掛ると、孤独な老人小説として、リアルに、恐ろしいまでにリアルにせまってくるのだ。そして、全然予測していなかったので、ノーガードのはらわたにたたきつけられたラストには、驚いてしまった。傑作とは言いがたいが、やはり女王恐るべし。
●7652 ミステリ国の人々 (エッセイ) 有栖川有栖 (日経新) ☆☆☆☆★
日経連載時から愛読していた作品。作者の言うように(たぶん)初心者にも、僕のようなマニアも楽しめるように、工夫していて感心した。52人中読んでいないのが10人もいるのが悔しいが、カドフェル・シリーズは本書の影響で2冊読んでしまった。(「戻り川心中」も読み返してしまった)
しかし、「シンデレラの罠」の「ミ」には、笑ってしまった。僕は映画版ガンダムの「マ」を思い起こしてしまったが、分かる人はいるのだろうか。また、亜愛一郎の「三角形の顔をした老婦人」もナイスチョイス。まあ、僕なら風太郎は「八坂刑事」ではなく(読んでないし)「妖異金瓶梅」のあの人で決まりなんだけれど。
毎回のイラストがカラーで表紙に使われているのも、贅沢で素晴らしい。新聞連載はこうであってほしい。で、ラストが学生&作家アリスだったら、満点だったのだけれど、まあそれは続編ということで。
●7653 素敵な日本人 (ミステリ) 東野圭吾 (光文社) ☆☆☆★
もはや新刊で敢えて読む気がなくなった著者だが、今回は短編集で、評判がいい。図書館でもわりと早く入手できて、一気に読んだが、やはり微妙なでき。この一作という作品がないのだ。
ちょっと似たパターンの作品が多すぎるし、驚きもそれほどではない。駄作とはいわないが、これで日本ミステリのレベルを計られるのは困る。やはり、ディーヴァーの「クリスマス・プレゼント」レベルを著者には期待したい。
以上、今月は人生何回目かのスランプでした。少しずつ復活しますので、何とかご容赦を。