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2017年4月に読んだ本

●7642 騎士団長殺し 第一部 顕われるイデア編 (フィクション) 村上春樹(新潮社)☆☆☆★

 

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

 

 7年ぶりの新作、ということで、本屋は本書に占拠されています。というわけで、今回は図書館に予約。結構早く手に入りました。で、早速読み出したのですが、微妙な感じですね。

冒頭は落ち着いた平易な文体で、一気に引き込まれたのですが、読み進むにつて、「多崎つくる」でも感じた既視感が半端なくなってきます。これを集大成とは呼べないでしょう。過去のモチーフの繰り返し、というしかない。(たぶん、誰かがきちんと例証をあげてくれるでしょうが、村上ファンならあっというまに10個くらいは、あげられるのではないでしょうか)騎士団長もジョニーウォーカーかな。

というわけで、予約が殺到したせいか、下巻との間に20人くらい差があるので、面白ければ下巻は自腹でゴーと覚悟していたのですが、このできだと予約を待ちたいと想います。正直、後半はだれました。長い。

 

 

 ●7643 騎士団長殺し 第二部 遷ろうメタファー編 (フィクション) 村上春樹(新潮社)☆☆☆★

 

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

 

 そうこうしているうちに、下巻がわりと早く図書館から届いた上に、こっちがここ数年来のスランプで、全然本が読めなくて、結局下巻を手に取った。正直、上巻以上に動きがゆっくりで、読み通すのに苦労した。まあ、こちらの調子が最悪なのもあるのだが。

どこかの書評で、本書で村上は自分の自画像を描こうとした、とあった。そうとは想わないが、そう考えると、本書に過去の村上のモチーフが何度も繰り返されるのは、都合が合う気もする。

まりえの失踪は、加納クレタだし、時空を超えた受胎はふかえりだし、南京事件は、ノモンハンだし、「カフカ」「ねじ巻鳥」「1Q84」と、これでもか、と自作のパッチワークの総ざらえ。(「グレート・ギャッツビー」まである)

というわけで、デビューからの忠実なファンは、否定はできないが、新しいものを今回もまた感じなかったのも確か。筒井や小林のように老いが訪れるには、まだ早いはずだ。

 

●7644 月琴亭の殺人 (ミステリ) 芦辺 拓 (創元社) ☆☆☆★

 

ダブル・ミステリ

ダブル・ミステリ

 

 

 ダブルミステリとして、月琴亭殺人事件だけでなく、裏表紙からは「ノンシリアルキラー」という作品が逆に描かれていて、途中の袋とじで、2つのストーリーが合体する、という著者らしい凝りに凝った設定。

しかし、この設定は世界初!というものではなくて、折原一が「倒錯の帰結」で既に試みており、しかもそれは結構成功していて、個人的には折原のベストと想っている。で、それに比べると本書は、かなり雑な感じがする。

もう少し細部をきっちりつめるべきだと想うし、真犯人の設定も必然性が弱い。まあ、こんなことにチャレンジしてみる稚気には、感心するが。

 

●7645  走 狗  (歴史小説) 伊東 潤 (中公社) ☆☆☆★

 

走狗

走狗

 

 

主人公は、あの大警視川路利明である。川路と言えば、「警視庁草紙」の影の黒幕のイメージが強く、表題の「走狗」とはイメージが合わない。それを著者は、若き日の川路がいかに変貌をとげるかを描こうとする。そして、その原因はフランス留学時代に知ったフーシェにあるとするのだ。

正直、そのあたりの描写は、元警官から酒を飲みながら効かされる、という安易な設定だし、最近の伊東は特に近代を描くと、人物描写が軽くなるような気がする。まあ、その分読みやすいのだが、コクが足りない。

そして、結局川路は西郷を裏切りながらも、大久保の走狗として、大久保暗殺とともに滅びる。それは、著者の書くように、日本という国家の走狗だったのだろうか。どうも、この時代に関しては、こっちもかなり知識があるので、やや物足りなさが残る。やはり、西郷と大久保の関係は難しい。

ただ、細かくは分からないが、警察機構、公安と警視庁、警察庁の関係は、川路の構想がそのまま今も生きていることには驚嘆するしかない。しかし、本署における伊藤博文の描き方は、あんまりではないだろうか? 

 

●7646 村上春樹騎士団長殺し」メッタ斬り!(書評)大森望豊崎由美(河出新)☆☆☆☆

 

 

ひさびさのメッタ斬り!シリーズは、村上春樹斬り!確か、前回多崎つくるは、まさにメッタ斬りだったことを思い出し、今回もそうかと想ったら、騎士団長にはわりとやさしげ。まあ、そうしないと、批判ばかりじゃさすがに本にならないか。ただ、騎士団長に関しても、その論調は褒めているとは想えないけれど。

ようはこのところの村上春樹の長編は(1Q84,多崎つくる、騎士団長)は、設計図を引かずに長編を書いているので、結局伏線は回収されず、解決は訪れない。これが、ジャンル小説ファンにとっては、度が過ぎていて評価できない、という大森の論調には同感する。

だから、最近の作品だと「女のいない男たち」がベストとなり(短編だと投げっぱなしがそう気にならない)そこにも同感する。まあ、1Q84も出だしはエンタメとして素晴らしいのだが、結局何も解決しないんだよね・・・・

しかし、本書で一番感慨深かったのは、冒頭の大森の「はじめに」。大森は僕と同世代のSFもの。当時、「風の歌を聴け」を読んだ、SFものは村上を絶対にヴォネガットと比べたはず。そして、ラストのデレク・ハートフィールドと、キルゴア・トラウトを比べて、ついに日本にもこういう作家が生れたか、と驚喜したはずなのだ。

村上本人は、最初の二冊を評価せず、翻訳もしないので、忘れがちだが(まあ、その気持ちも分かるのだが)当初は、村上=ヴォネガットだったことを、忘れてはいけないのだ。

 

 ●7647 読書狂の冒険は終らない! (対談) 三上延倉田英之 (集英新) ☆☆☆★

 

 

 なかなか読みたい本がないので、こんな対談を手に取ったが、三上はビブリアを一冊読んだだけだし、倉田にいたってはアニメ作家らしいが、聞いたこともない。ただ、確かに二人とも、かなりの本好きで、結局最後まで楽しく読んでしまった。

いきなり、キングをはじめとしたモダンホラーで(ここは、キング嫌いの僕は辛い)次は、横溝と乱歩、そして角川映画赤川次郎、と一回り下の方が、もろ角川映画の影響を受けていることを痛感し、赤川ももう少しきちんと読まなければならないと感じた。

ただ、本人たちも認めているが、紀田順一郎荒俣宏に比べると、やはりスケールが違う。世代は違うが、喜国と似たテースト。ただ、ミステリ色が少し薄いが。