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2015年 9月に読んだ本

 ●7298 キャパへの追走 (NF) 沢木耕太郎 (文春社) ☆☆☆☆
 
キャパへの追走

キャパへの追走

 

 

 

「十字架」が上梓されたとき、正直しつこいなあ、と感じたのだが、読了後はあの「崩れ落ちる兵士」の真贋問題を遥かに超えた感動の書(ミステリ?)であった。そして、キャパにおけるゲルダ・タローの存在の大きさ、新しさに体が震えた。

そこで、今回もまた何で続編が?と思ったのだが、本書は「十字架」の続編というより、前篇、助走、という位置づけの本であった。

キャパの旅の後を追いかけながら、その写真の位置を実際に沢木が確認し、可能な限り同じアングルで撮った写真を、キャパの代表作の数々の下に配置する、というアイディアは抜群で、素晴らしい効果をあげている。

ただ、惜しむらくは少々長すぎる、というか、四十か所は多すぎて、途中やや冗長に感じてしまった。そして、本書はやはりウィーランの「キャパ」と「十字架」を先に読んでおかないと、本当の面白さは解らない。

そういう意味では、このタイミングで上梓されたのは、作者の冷静な作戦があるように感じる。最後に、ウィーランの墓まで出てきて、驚いてしまった。

しかし、沢木ももう少し事前に調べろよ、と言いたくなることも多かったのだが、たいがい偶然が起きて、何とかなってしまったり、さらに素晴らしくなってしまう。まあ、作ってないとは思うのだが、計算された無謀さが、ちょっと鼻についたり、それこそキャパと重なったり。

 

 ●7299 記憶破断者 (SF) 小林泰三 (幻冬舎) ☆☆☆★
 
記憶破断者 (幻冬舎単行本)

記憶破断者 (幻冬舎単行本)

 

 

最近の小林は見放しているのだが、新刊が簡単に入手でき、他の本を二冊投げ出してしまったので、読む本がなくなり、手を出したら一気読み。(イーガンの「ゼンデキ」2部に入ってすぐギブアップ。確かにイーガンに家族の物語を求めていない。

次の原田マハの「奇跡の人」は、去場安に続いて、介良(けら)れんという人物が登場した時点でギブアップ。このネーミングはないでしょう。あきれてしまった)

博士の愛した数式」で有名になった、前向性健忘症の主人公と、他人の記憶を改ざんできる超能力者=殺人鬼との戦い、と書くとあまりにとんでも設定だが、それなりに読ませる。

ただ、後半のどんでん返しの連続、特に最後のオチは、これノートを改ざんしてしまえば、何でもアリなので、ちょっと嫌になってしまった。他の短編集とも繋がっているらしいが、正直そこまで調べる気にもならなかった。(折原一の「倒錯のロンド」を思い起こしてしまった)

 

●7300 舞面真面とお面の女 (ミステリ・ホラー) 野崎まど (MW文) ☆☆☆☆

 

 

やっと図書館でゲット。これにて、最原サーガ全巻読了。本書は第二作であるが、堂々の傑作である。またその内容は、確かに野崎印ではあるが、他の作品とは微妙な違いもある。

もちろん、どんでん返しもあるのだが、本書は他に比べて、シンプルで太い作品に感じた。そして、それもまた野崎のひとつの魅力に感じた。

前半というか、最終章まで本書はまるで横溝ミステリのような、遺言の謎を解くパズラーである。ただ、そこにお面の少女=みさき、が登場してから、物語はオカルティックな謎に包まれるのだが、野崎はその謎をギリギリ合理的に解決して見せる。

それは(やや抽象的だが)シンプル、かつ論理的な見事なパズラーである。そして、最後に本書は野崎版○○○○となる。これまた、意外性はそれほどないがストーリーとしては、本家を越えて(日本流にアレンジして)読ませる。

しかし、それらの数々の魅力(熊?さんや、みさきのギャグも今回はすべらず冴えている)以上に、僕が感心したのは、途中でみさきが喝破する、真面の本質である。

ここで、物語の色彩、景色がガラリと変わる。ラノベ風の文体で、ここまで深い人物造形には驚いてしまった。

しかし、自業自得なのだが、やはり「2」を読む前に本書も読んでおくべきであった。「2」における、退屈している真面、という存在の真の意味を理解してから読めば、「2」の最後の展開はさらに面白く読めた気がする。

そして、本書で無双を演じるみさきを、最早が手玉にとることで、最早の超人性が更に強調されただろう。そこだけが、残念だ。どうやら10月にはひさびさに野崎の長編が上梓されるようだ、期待したい。

 

●7301 孤狼の血 (ミステリ) 柚月裕子 (角川書) ☆☆☆☆★

 

孤狼の血 (角川書店単行本)

孤狼の血 (角川書店単行本)

 

 

何度も書くが、著者への僕の期待はもはや風前の灯。で、今回も何と悪徳警官モノ、と聞いて、おいおい方向間違ってるぞ(黒川路線で、直木賞狙い?)と思って、興味は湧かなかったのだが、こういう時もまた簡単に新刊をゲット。

まあ、本の雑誌でサッカーの方の杉江が今年のベスト、と書いていたのを信じて、何とか読みだした。冒頭から、まさに極道と警官は紙一重、という感じで希代の悪徳警官、大上の存在が凄まじく、一気に引き込まれる。(舞台は広島ではなく、たぶん呉をモデルにした架空の町)

ただ、達者なことは解っても、著者がこっちに進む必要はないのに、という思いはつきまとう。まあ、読みながら見たことはないのだが、東映任侠映画ってこんな感じ?などと思っていた。

しかし、ラスト50ページの予想をはるかに超えた驚愕の展開には、呆然としてしまった。なんだ、これは。本書は柚月版「猛き箱船」であり、悪の成長小説、ビルディング・ロマンなのだ。凄い。

しかし、結局やくざの抗争はどうなったの?と思ったら、たった2ページで、アメグラ風処理をしてしまい、そのセンスに感嘆。

そして、そして、ラストのこれまたたった2ページのエピローグは、まるで「ゴッドファーザー」。日岡がマイケル・コルレオーネに重なってしまった。まさか、著者がこんな路線で、こんな傑作を書くとは、想像もできなかった。脱帽。

 

●7302 職業としての小説家 (エッセイ) 村上春樹 (スイチ) ☆☆☆☆★
 
職業としての小説家 (新潮文庫)

職業としての小説家 (新潮文庫)

 

 

大宮そごうの三省堂で本書の山積みを見つけ、レジでこれは紀伊国屋から仕入れたのか?と聞いたら、その狙い(ネット対抗)まで丁寧に説明してくれた。そのやり方に未来は感じないが、とりあえず村上のチャレンジに協働することにする。

そして、本書の出版社がスイッチ・パブリッシング(柴田のモンキー連載)であると知り、やはりこれはあだ花で終る気がした。しかし、内容は素晴らしい。(「村上さんのところ」が、くだらなくて購入をやめた後だったので特に)

ここには、僕が30年以上寄り添ってきた素の村上春樹がいる。(その距離は少し変化したが)じっくりと、読み込んで、深いため息をついた。詳細は描かないでおくが、このリアルなバランス感覚とオカルト一歩手前の超越感の共存こそ、村上の本質だとつくづく思う。

最初に村上を読んだのは、SRの会の書評で「羊」が、青春への「長いお別れ」と描かれていて、(順番は思いだせないのだが)鼠三部作を一気に読み、ついに日本にも、こんな作家が現れたのか(日本流私小説と次元の違う作家)と狂喜したのを思い出す。

まあ、その頃大好きだった、カート・ヴォネガットに似ていたのもうれしかった。確か、時代の雰囲気を見事に切り取った、と所感を書いた記憶がある。

ただ、読み終えてしばらくして、三部作にはそのテーマである(と思った)「喪失」以上に、「死」の気配が漂っていることに気づき、愕然とした。そして、それは「世界の終り」で増幅され、「ノルウェイ」で頂点を迎える。

そして、長い時が過ぎ、村上も僕もまた大きく変貌し、本書を読んで思うのは、信じる力と存在そのものへのリスペクトだ。長い旅であり、紆余曲折いろいろあったが、結果的には、素晴らしい旅だったと思う。もちろん、まだ終わっていないのだが。

 

 ●7303 なにかのご縁(2)(フィクション) 野崎まど (MW文) ☆☆☆
 

 

第一作があんまりだったので、このシリーズは読まないつもりだったのだが、こういう時に限って図書館で簡単に手に入る。

で、仕方なく読み始めたが、今回も野崎らしさ(僕の考える)はほとんどなく、ギャグも幼児化している。何か、昔懐かしいテレビマンガの脚本でも読んだような感じ。

 

 ●7304 ウルトラマンが泣いている (NF) 円谷英明 (講現新) ☆☆☆☆
 

 

読む本がなくて、図書館の新書コーナーで見つけて読みだしたのだが、一気読みして自分の感情を持て余してしまった。題名から内容は予想がついたし、正直大人になってからはウルトラシリーズは、セブンまでしか興味がない。

しかし、しかし、この内容はひどすぎる。円谷というと(マラソンもあるけど)いまだに懐かしく暖かいものが溢れてしまう僕らの世代(著者も僕と同い年)にとって、この現実の醜さは、やはり強烈パンチである。痛くて、苦しい。

円谷プロの内情のひどさは、アマゾンの所感等々がまとめてくれているので、敢えて描かないが、著者の告発は完全に個人批判(叔父さんとその息子)となっていて、冷静に考えれば一方的すぎるのだが、著者は自らの父の不倫や兄のセクハラまで正直に書いており、(自らの中国事業の大失敗も)どんなひどい内容でも、たぶんその通りなのだろう、と思わせる真摯さがあるのだ。

そして、そこまでの精神浄化が必要であった、著者の苦しみと絶望を思うと、本当に僕自身の感情もどう処理をしたらよいのか、途方に暮れるのである。

 

 ●7305 戦国軍師入門 (歴史) 榎本 秋 (幻冬舎) ☆☆☆★
 
戦国軍師入門 (幻冬舎新書)

戦国軍師入門 (幻冬舎新書)

 

 

 

これまた、深い考えもなく読みだしたのだが、結構面白かった。様々な軍師が描かれているのだが、大友宗麟の軍師、立花道雪立花宗茂の義父)が一番興味深く、彼を描いた小説を探してみようと思う。

また、黒田官兵衛の描写にも力が入っている。とは言っても、著者も書いているが、本書は史実に忠実ではなく、古今東西の軍師本のサマリーのような本であり、それはそれで面白く、雑学本として良く出来ているのだが、それ以上のものでもないこともまた厳然たる事実。

特に、なぜか安易に戦国時代を現在のビジネス競争に例えた部分は、全く必要ないと感じた。

 
 ●7306 約束 K・S・Pアナザー (ミステリ) 香納諒一 (祥伝社) ☆☆☆★
 
約束 K・S・Pアナザー

約束 K・S・Pアナザー

 

 

K・S・Pシリーズひさびさの新刊は、番外編とは聞いていたが、まさか沖も貴里子も登場しないとは、あんまり。

それはさておき、内容の方はやくざ、韓国マフィア?悪徳警官が三つ巴でお宝を奪い合うという、古典的かつ派手な展開で、一気に読ませる。ただ、あまりにもアクションの連続で、大沢の狩人シリーズやタランティーノの映画のように、少々コクに欠ける。

時々顔を出す、説明的な長ゼリフもらしくない。また、主人公の場違い?な正義感や、ラストの処理も、著者の思いは解らないではないが、僕の好みとはずれる。ちょっと期待が大きかっただけに、やや辛めの採点。(悪徳警官のオチ、このパターン最近多すぎる。法律で禁じてほしい)

 

 ●7307 火 花 (フィクション) 又吉直樹 (文春社) ☆☆☆★

 

火花

火花

 

 

嫁から、せっかく買ったのだから読んでみてと渡されたのだが、なかなか手が出ず、読む本がなくなりついに読了。さすがに、素人とは思えない文章だが(まあ、腐っても芥川賞だから、当たり前か)これは、太宰ですら嫌いな僕の好みではない。

(太宰は高校時代「とかとんとん」等々の短編には感心したが、大学時代「人間失格」を投げ出してから、縁がない)

しかし、こんな理屈っぽい漫才師ってありえるのだろうか。個人的には、これでは笑えない。面倒くさい、としか感じない。

 

●7308 流星ひとつ (NF) 沢木耕太郎 (新潮社) ☆☆☆☆

 

流星ひとつ

流星ひとつ

 

 

藤圭子の自殺後、緊急出版された本書に、当時はその背景をきちんと理解していないくせに何となく胡乱なものを感じて、手を出さなかった。しかし、こうして二年がたつと、事件の余波もおさまり、簡単に図書館で手に入ったので、思いきって読みだした。

本書は、79年藤圭子28歳、沢木31歳の時のインタビューである。内容は衝撃的だ。地の文が全くなく会話だけで本書は成り立っている。

本書の前に書かれた「テロルの決算」で、沢木は三人称を徹底し(だから、僕はテロルにあまり思い入れがない)本書の後は、一人称を徹底した「一瞬の夏」を書き、ついに「私ノンフィクション」を完成させた。それほど、この当時の沢木のNFの方法論へのこだわりは激しい。

したがって、本書をお蔵にしたのは、沢木があとがきで書いている理由(これもまた、正しいとは思うが)だけではなく、対象(藤)と深い仲になってしまったため、沢木の倫理観が出版を差し止めた、という噂の方が真実だと思う。

そして、この作品を読めば、誰もが二人の関係が只者ではないことに気づいてしまうのだ。正直、現実には何回もあっただろうインタビューを、一夜の物語に編集した沢木のやり方はあまりにもスタイリッシュで、あざとさすら感じる。

しかし、そこで語られる、本人ですら明確に認識していなかったであろう、藤圭子の生身の姿は、あまりに無垢で、真面目で、儚く、痛々しくもまた、魅力的だ。それに対して、金などいらないと、一席ぶつ沢木は、何とも子供っぽい。

そして、後半は沢木がしゃべらされる火花の散る対談と化す。やはり、これは斬新かつ素晴らしい作品だ。藤圭子だけが持っていた本書のコピーを、こうして30年後に敢えて世に出した行為の是非については、僕は正直判断できない。

本書を宇多田ヒカルが読み、母のかつての輝きを感じ、喜んでほしいとのみ思う。その意味では、沢木の気持ちは良く解るし、この作品もまたそれに耐えうる内容だと思う。

が、世の中、そんなに甘くないだろうなあ、ともまた感じてしまう。(「深夜特急」のあるシーンが出てきたときは、体が震えてしまった)

 

 ●7309 ナショナリズムは悪なのか (思想哲学) 萱野稔人 (NHK) ☆☆☆☆

 

新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか (NHK出版新書 361)

新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか (NHK出版新書 361)

 

 

最近露出度が高く(特に僕の好きな「英雄たちの決断」でのコメントは素晴らしい)言ってることも骨太で、いつかきちんと読もうと思っていた萱野の「ナショナリズム」論。

冒頭から日本における格差問題は、グローバリズムにおいては貧しい国の人々と日本人の格差が是正されるのだから何ら問題はない、という著者の言葉にガーンと頭を殴られた。

したがって日本人が格差問題を考えるときは、ナショナリズムという枠組みを使わざるを得ないのだ。著者はゲルナーナショナリズムの定義(政治的な単位と民族的な単位の一致)とウェーバーの国家の定義(暴力行使の独占)を駆使して(これだけでも、頭が良くなった気がする)ナショナリズムを単純に嫌悪し、排除する論壇の無能さを、これでもかと暴き立てる。

ドゥルーズ=ガタリの言う、資本主義は国家によって成立したという説は、僕には非常に説得力があり、現在の諸問題を解決するには、ナショナリズムをコントロールするしかない、という著者の覚悟は痛いほど解る。

その現状認識はあまりにも正しい。ただ残念ながら、本書にはその解決策はほとんど描かれない。もちろん、そんなことが簡単にできれば、世の中はこんなことにはならない。それでも、それを次に期待したい。

 

 ●7310 保守問答 (思想哲学) 中島岳志・西部進 (講談社) ☆☆☆☆
 
保守問答

保守問答

 

 

最近御無沙汰していたのだが、続けてポリティカルな本を読む。中島を読んだとき、ついに西部の後継者が生まれたか、と思ったのだが、やはりこういう子弟?対談本があったんだ。

子弟なので、正直中島が西部をリスペクトしすぎており、内容は西部・保守論のおさらいのようになってしまったが、それでもひさびさに心洗われる気がした。

ただ、一点改憲論において、まさに今を先取りして(08年の本)議論は熱を帯び、今現在とは全く深さの違う二人の闘いに、心が震えた。(ただ個人的には、中島の意見はリアルすぎて、本質をはずしている気がするし、西部は偽悪的に粗暴すぎるが)

そして、中島がなぜ、仏教を勉強し、パール判決を描いたのか、ようやくつなげることができた。


 
●7311 放課後に死者は戻る (ミステリ) 秋吉理香子 (双葉社) ☆☆☆☆

 

放課後に死者は戻る

放課後に死者は戻る

 

 

 

「暗黒女子」でデビューした著者の第二作、ネットで評判がいいので読んでみた。文体、キャラクター、シチュエーション、どれもラノベ風で、まるでメディアワークス文庫のように、あっという間に読める。

ただ、冒頭の事故によって、崖から落ちた二人の心が入れ替わる、というのは「転校生」「秘密」と続く黄金パターンな上に、本書には「アナザー」要素も交じっていて、これはいくらなんでもオリジナリティーが足りない、と感じた。

もう一点、その入れ替わった主人公は、根暗のオタクだったのに、新しい体はハーフのイケメン超モテモテ男、というのも、いいかげんにしろよ、と思ったのだが、これは本書の隠れテーマに繋がり、ラストは結構いいかんじで終る。

そして、ミステリとしては、よく頑張ったと、納得できない、の中間という微妙な出来だが、ここは次作「聖母」に期待して、甘めの採点としておく。まだ粗削りだが、著者は化ける気がするのだ。

 

 ●7312 聞く力 (エッセイ) 阿川佐和子 (文春新) ☆☆☆
 
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聞く力―心をひらく35のヒント *3

 

 

図書館の棚に本書が十冊以上並んでいるのに気づき、兵どもの夢の跡というか、ベストセラーの悲哀を感じたが、TVの阿川は結構好きだし、小説もジャンルが違うので一冊しか読んでいないが、立派な文章だった。というわけで、読みだしたのだけれど、え!?という感じ。

これ、どう考えても、題名と内容があっていない。この題名だと、阿川のインタビュー虎の巻、という感じだが、実際は単なるインタビューのよもやま話の連続。しかも、ひとつひとつは短くて、深みが無く、正直たいして面白くない。

これがベストセラーになるとは、新書を買っている人と読書人は、違う人種なのかもしれない。

 

 ●7313 若手社員が育たない。 (ビジネス) 豊田義博 (ちく新) ☆☆☆☆

 

若手社員が育たない。: 「ゆとり世代」以降の人材育成論 (ちくま新書)

若手社員が育たない。: 「ゆとり世代」以降の人材育成論 (ちくま新書)

 

 

副題:ゆとり世代以降の人材育成論。題名がつんくみたいだけれど、内容は真面目です。で、著者の分析の方法論(アンケートを多用)は下手なコンサルの常套手段という感じで、好きではないし、分析結果のまとめかたもやや切れが無く、冗長に感じる。

しかし、その結果は今の僕の皮膚感覚に非常にマッチし、大きく共鳴した。また、後半紹介される、著者の解決策としての、東田メソッドも、今僕がやってるGCSの自主運営に近いものがある。

学生が就職時に着目する四点とし、③を重視する学生が一番会社に不適応であり、④が一番適応する、すなわち環境適応能力が一番重要。従って、学生時代同質のエリートたちと、ボランティアやNPO等々で活躍するより、異質な環境で挫折し立ち直った経験のある人材が会社に適応する。

(①組織視点:企業のブランド、②仕事視点:職種、ワークスタイル、③展望視点:キャリア、④環境視点:働く環境、人間関係。)

その環境適応力をつけるための東田メソッド、1、ゼミを運営しているのは学生 教員は学習の題材=企画と場のルールを提示し、運営が学生にゆだねられる。2、リーダーとチーム制、どのメンバーも必ず一度はリーダーとなる。

3、企画とは勉強と遊び、すべてがプロジェクト形式。5、企画の進め方はRPDC、全員がリーダーシップをもってサイクルを回す、等々.。

まあ、解決を学生時代に求めるのは、本質から逃げている気もするし、そもそもリクルートの人間が言うか?という気もするが、これはぜひ当事者に読んでもらって、感想を聞くしかない。

 

 ●7314 勝ち上がりの条件 (歴史) 磯田道史・半藤一利 (ポプ新) ☆☆☆☆

 

(032)勝ち上がりの条件 (ポプラ新書)

(032)勝ち上がりの条件 (ポプラ新書)

 

 

副題:軍師・参謀の作法、ポプラ新書なんて知らなかったが、何ともまあ強力な二人の対談である。申し訳ないが、榎本とは格が違う。(歴史以上に、現実のビジネスとの比較・関連付けに、大きな差がでてしまった)

今回もまた、黒田官兵衛に力が入っているが(これは間違いなく大河のせい)半藤だから、戦国だけでなく、明治・昭和の参謀(の駄目さ)も詳しい。で、磯田の別の本でも魅力的だった、小早川隆景秋山真之が、今回もまた素晴らしい。

特に秋山の凄さが、最近やっと解ってきたのだが「坂の上の雲」で、本当に描かれていたのだろうか?少なくとも、NHKドラマではその凄さがさっぱりわからなかった。

 

 ●7315 ウェイワード (SFミステリ) ブレイク・クラウチ (早川文) ☆☆☆☆

 

ウェイワード―背反者たち― (ハヤカワ文庫NV)

ウェイワード―背反者たち― (ハヤカワ文庫NV)

 

 

「パインズ」から始まる三部作の第二作。正直「パインズ」のラスト、僕はそれほど驚かなかったし、小説としても買わなかった。しかし、第二作の評判がいいし、それ以上に一体どうやって続編を書くの?という興味もあって読みだした。

で、人物造形、文章力は格段にアップしている気がして、結構長いのだが一気に読了した。作品としては、間違いなくこちらの方が上。ただ、ミステリとしての謎解きが、イマイチなんだよねえ。おしい。

そして、驚愕のラスト。また、結局回収されないある伏線。しかし、この伏線も含めて、なぜか誰も言わないのだが、このシリーズ「進撃の巨人」にそっくりなんだよね。偶然だろうが。(TVドラマ化されたようなので、見てみたい)

ただ、次作はどうも単純な○○○VS人間の戦いになるみたいなので、反則だけれど立ち読みで最後のオチを知ってしまった。(これは、長い小説を読まないでよかった、というオチ)

北上次郎が解説を書いていたのには驚いたけれど。一応断わりはあるが、北上がオチを割った解説を書いたのは初めてじゃないか?

 

 ●7316 住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち (エッセイ) 川口マローン恵美 (講α新) ☆☆★

 

 

これも良く売れて、続編もでたようだが、本書は「聞く力」以上にひどい。これは、サギと言ってもいいレベル。8勝も2敗もイメージにすぎず、何の裏付けもないのだ。愕然。

だいたい冒頭が尖閣列島の話で、全然ドイツも関係なくて、唖然。次が原発事故の話で、書いてる内容は解るが、なんでこの題名でそんなことを語るのか?

さらに、教育に関しては、日本を全然褒めていない。新書って、どんな題名をつけてもいいのか?さすがに、この内容には驚いてしまった。

 

●7317 大量絶滅がもたらす進化 (科学) 金子隆一 (サイ新) ☆☆☆☆
 

 

調べたら傑作「大進化する『進化論』」は95年の作品で、もう20年たってしまったんだ。で、何か最近進化論に関する本が減ったなあ、と感じていた理由が分かった。

本書の前半はラマルク、ウォレス、ダーウィンメンデルから木村資生、今西錦司、グールド、ドーキンスに至る進化論の歴史だが、ちょっと駆け足かな。モンキー裁判に触れてないのは物足りない。(獲得形質の遺伝に関して、カンメラー事件を、というのはマニアックか)

そして、ヒトゲノム計画の顛末に、予想はしていたが愕然。結局、素粒子と同じくゲノムにおいても、ミクロの世界は全く人間のリアリティーを越えていて、ほぼ超ヒモ理論状態になっているとは。

DNAの役割は小さく、RNAの方が実は重要、とは少し聞いていたが、これでは二重螺旋はどうなってしまうのか。ドーキンスはどうするんだ?

で、本書の目玉の大絶滅と進化の爆発。ただ、その正体はマントル・プリューム(前はプルームだった?)というのは前作一緒であり、目新しさはない。(ガンマ線バーストもやっぱりでてくる)

ただ、この20年の進化として、マントル・プリュームが大量絶滅時に必須の海退と海進を起こすメカニズムを明らかにし、さらには海洋無酸素事変の解明まで到達する。さらには、恐竜絶滅における隕石衝突、さらにはネメシス理論も、明確に否定していて、それは説得力がある。

以上、後半に絞った方が僕のような進化論マニアにはうれしいが、まあ最近少なくなった進化論の最新レポートとしては、貴重な本であることは確か。

 

●7318 タモリ論 (エッセイ) 樋口毅宏 (新潮新) ☆☆★

 

タモリ論 (新潮新書)

タモリ論 (新潮新書)

 

 

偶然「ヨルタモリ」を見て、タモリってこんなに面白かったっけ?と驚いて、毎週録画して見ていたら、あっという間に終わってしまった。

そんなときに本書を図書館で見つけて読みだしたのだが、これまた「ドイツ」以上にあきれてしまった。(著者の本は「民宿雪国」を読んで、変な作家だとは思っていたが)

冒頭こそまだいいのだが、途中からたけしやさんまの話になり、タモリの話がちっともでてこない。しかも、後半やっとでてきても、それは論でもなんでもない、うんちくと自分の感想にすぎない。しかも、たいして面白くない。ああ、新書っていうのは、こんなレベルでもOKなのか?新潮社のレベルを疑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:文春新書

*2:文春新書

*3:文春新書