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2015年 4月に読んだ本

●7203 つなわたり (フィクション) 小林信彦 (文春社) ☆☆☆★

 

つなわたり

つなわたり

 

 

なぜか勝手に小林の最新作(長編)は、ずっと「うらなり」だと思っていたのだが、そ
れはもはや9年前で、その後「日本橋バビロン」(既読)と「流れる」の2長編が存在
していたことに、いまさら気づいた。

たぶん、僕はもう著者にあまり興味がないのだろう。正直、たった2ページの週刊文春のコラムですら、最近は最後まで読み通せないことが多い。

で、本書なのだが、昭和(万博の頃)が舞台で、主人公は著者がモデルということで、期待したのだが、結論は微妙。文体自体は、83歳という年齢を感じさせず読ませる。

ただ、そのテーマ(昭和のねじれ草食男子?)は確かに83歳で挑むとは意外だし、評価しても良いが、やっぱりねじれ方が古臭く、面倒くさい。これなら「うらなり」の淡泊さの方が、個人的には好み。

 

 ●7204 吉田松陰久坂玄瑞が祭り上げた「英雄」(歴史)一坂太郎(朝日新)☆☆☆

 

吉田松陰――久坂玄瑞が祭り上げた「英雄」 (朝日新書)

吉田松陰――久坂玄瑞が祭り上げた「英雄」 (朝日新書)

 

 

著者の写真を見て思いだした。この間のNHKBSの「英雄たちの選択」(これ、今現
在一番好きな番組。特に司会の磯田氏が好き)の久坂玄瑞のとき、パネラーの一人とし
て登場し、題名のようなことをしゃべっていた。

ただ、祭り上げた、ではなく、利用したというような言い方で、萩博物館特別学会員という肩書もあってか、本書の1/3くらいの過激さで抑えていたが。

個人的には、久坂の存在はあまり良く解らず、他のパネラーが言っていた「学級委員長の悲劇」というのが、一番しっくりくるのだが、一坂の言う陰謀家的な一面(たぶん、それは武市半平太につながる)も、ありえる気はする。

ただ、本書は正に題名がすべてを現していて、それ以上でも以下でもない。その観点(斬新とまでは言わないが)は評価できるが、読み物としては退屈。

 

 ●7205 だれがコマドリを殺したのか?(ミステリ)イーデン・フィルポッツ(創元文)☆☆☆☆

 

 

フィルポッツというか「赤毛のレドメイン家」と乱歩について、語りだすと長くなるの
でやめておく。(ようは、乱歩がいかに戦後推理文壇?に影響力があったか)

で、長らく入手困難だった本書だが、ここでも新訳(武藤崇恵)の力が爆発。1924年の作品というのに、あっという間に読ませる文章力(翻訳力?)に脱帽。しかも、前半はミステリならぬ典型的なハーレクイン・ロマンスなのに。

350ページの作品で、殺人が起きるのが200ページすぎ。主な登場人物は男性3人、女性3人しかいないので、犯人は意外ではありえないのだが、そこは結構頑張っている。

題名もうまくミスディレクションとして機能している。(この題名は、ヴァンダインまたはパタリロを思わせるだろうが、残念ながら本書は童謡殺人ではない)

しかし、努力は認めるが、昨今の複雑なミステリを読んできた読者の多くは、トリックを見破るだろうし、何よりも、やっぱりこのトリックは無茶、無理すぎる。

(まあ、黄金時代ミステリの多くがそうなのだが)というわけで、この評価はたぶんに歴史的価値と、翻訳への賛辞が含まれています。

 

●7206 竜馬史 (歴史) 磯田道史 (文春社) ☆☆☆☆

 

龍馬史

龍馬史

 

 

181ページに会津の「手代木直右衛門」の写真がでてきたところで、アチャー!とな
ってしまった。何と、僕はこの本を過去ハードカバーと文庫(新書?)で二回読んでい
たことに気づいてしまったのだ。

で、なんでそんなバカなことになったか、というと少し前に書いたように、今僕は著者が司会を務めるBSの「英雄たちの選択」にはまっていて、内容より著者から今度は読もうとしたら、見事にかぶってしまったのだ。

なのに、またも最後まで読んでしまったのは、やはり著者の記述がバランスがとれ、読みやすいから。

特に、竜馬暗殺の黒幕はなかったとする説は、僕の黒幕=薩摩説を完膚なまでに否定しているのだが、残念ながら説得力がある。井沢の本能寺黒幕無し説と同じく、結局普通が一番説得力があるのだ。面白くないけど。 

 

 ●7207 乱歩ワールド大全 (企画) 野村宏平 (洋泉社) ☆☆☆★

 

乱歩ワールド大全

乱歩ワールド大全

 

 

著者はWMC出身の2つ年上のライターなので、その経験はことごとく僕とかぶる。た
だ、乱歩に関しては、僕はその通俗長編や少年探偵団には全く興味が無く、あるのは初
期の短編と、戦後の評論活動のみ。というわけで、第一章キャラクター論や第二章キー
ワードはイマイチのれない。

で、第三章は何とあの類別トリック集成を乱歩作品でやるという愛すべき暴挙にでたが、まあ玉砕というところか。

しかし、最後の探偵作家・乱歩クロニクルにおける、乱歩のほぼ全作品の解題は、非常にセンスが良く、バランスもいい。個人的には、短編ベスト3は「押し絵」「心理試験」「赤い部屋」。長編は残念ながらベストはない。

 

●7208 誓 約  (ミステリ) 薬丸 岳 (幻冬舎) ☆☆☆☆

 

誓約

誓約

 

 

今、僕が一番期待する作家、薬丸の新刊は今回も傑作だ。本の雑誌の評でも絶賛されて
いた。去年は「神の子」が年末ベストで惨敗したが、今回こそは。(でも、あの時も北
上おやじが激賞したはず?)

ただ、こうやってずっと彼の作品をフォローしてくると、残念ながら今回は手放しで、絶賛とはいかない。

まあ、今回もまた過去の犯罪が現在に復讐し、犯罪者の贖罪がテーマとなるのは、さすがにまたか!という感じだが、色々工夫もしているし、まあこれと埼玉県(川越)が舞台なのは、もはやお約束のレベル。

特筆すべきは、後半の主人公が落ち込む最悪の状況の醸し出す、強烈なサスペンスで、これは作者の新境地かもしれない。そういう意味では、今までにない薬丸ファンが評価する可能性はある。

ただ、登場人物が少ないので、この真犯人の設定は、ある程度読めてしまうのが残念。また、その動機と犯行方法も、シェイマス・スミスの「わが名はレッド」を思わせて、嫌いではないのだが、やはり冷静に考えるとリアリティーが足りないと思う。

もっと単純なやり方がいくらでもあるはず。というわけで、傑作であり、ぜひ読んでほしい作品ではあるが、薬丸のベストとするのは、ちょっと足りない、という感じか。でも、普通の新人がこの作品を上梓したら、たぶん大絶賛するだと思うなあ。勝手なものだけれど。

 

 ●7209  太宰治の辞書 (ミステリ) 北村 薫 (新潮社) ☆☆☆

 

太宰治の辞書

太宰治の辞書

 

 

98年の「朝霧」以来の、シリーズ最新作、ということだけれど、僕は「六の宮の姫君」以降、このシリーズに興味を無くしており、「鷺と雪」以降は著者にも興味がない。

上に惰性で、ミステリ、と書いたが、本書はミステリはおろか、小説と呼べるのだろうか。こういう文学薀蓄物語は、エッセイでやってもらえばいいと思う。

また中年になった私もそうだが、(前から思っていたが)正ちゃんっていうのは、間違いなく男が創造したキャラクターだと感じる。

「空飛ぶ馬」を初めて読み、「日常の謎」というミステリの新しい可能性に心震えたのは、もはや遠い過去の世界となってしまった。ネットでは絶賛の嵐だが、北村がガチガチのパズラーを書かない限り、もはや興味はない。

 

●7210 デュアル・ブランド戦略 (ビジネス) 矢作敏行 (有斐閣) ☆☆☆☆★

 

デュアル・ブランド戦略 -- NB and/or PB

デュアル・ブランド戦略 -- NB and/or PB

 

 

根本さんのお薦めですが、何と出版社は有斐閣(懐かしい)で、値段は3300円、ず
っしり手に重くてちょっと引いたけれど、読み終えて結構感動している自分がいる。

というのも、ここ数年ずっと自分の中でもやもやしていたものが、度のピッタリ合ったレンズをかざしてくれた結果、はっきり全体像が見えてきた、そんな気がしたからだ。

PBを巡るメーカーと流通の「闘い」(敢えてこう表現する)は、7×11の力によってついに違う次元に突入した、と常々感じていたのだが(個人的に来店頻度は3倍以上になった。最近だと朝のスープは抜群の出来だと思う)ここまで、きっちり書いてもらうと、日用雑貨が完全にガラパゴスになってしまった感が強い。

冒頭の日本PB史とも言うべき歴史(主役はダイエー)や、第四章「PBの台頭とNBメーカーの戦略」も面白いが、本書の白眉は第五章「トップメーカーのデュアル・ブランド戦略」であり、そこで描かれる、キューピー、山崎パンカルビー日本ハム、の事例は、生々しいくらいリアルで迫力があり、こういう論文において、ここまで詳細かつ本音なものは読んだことがない。

これは著者の力もあるが、時代が変わったと感じるべきだろうか。(変な例えだけれど、「新撰組血風録」において、物語の表面には出ないが必ず絡んでいる土方と近藤が、セブンと重なってしまった)

ただ、残念ながらその後の事例は(中食、惣菜は面白かったが)少々マンネリ気味になり(まあ、エンタメではないので、当然なのだが)最後のまとめも、結局冒頭にループしただけ感もあるが、ここはそこまで求めるのは酷なのだろう。

デュアル・ブランド戦略という言葉の選択も、異論があるかもしれない。しかし、はっきりしているのは、違う次元に突入したメーカーのブランド戦略(特に食品メーカー)の現状報告としては、本書は最高のレベルであり、間違いなく今後の日本メーカーのブランド・マーケッターには必読の書であろう。

4Pの時代は終わり、マーケッティングも本当の意味でのコラボレーションの時代がきた、素人を顧みずこう言ってしまいたい。

 

●7211 戦国武将の明暗 (歴史) 本郷和人 (新潮新) ☆☆☆★

 

戦国武将の明暗(新潮新書)

戦国武将の明暗(新潮新書)

 

 

今週は、どうにも小説が読めず(藤井大洋と鈴木光司の新作をギブアップしてしまった。なぜか、SFやホラーという気分にはなれない)歴史エッセイのような軽いものばかり読んでいる。

本書は週刊新潮の連載をまとめたもの。まあ、悪くはないんだけれど、細かすぎる。大河ドラマ軍師官兵衛)に絡んだ、歴史とドラマの比較あたりは、面白く読めたけれど。

 

 ●7212 面白くて眠れなくなる社会学 (社会学) 橋爪大三郎 (PHP) ☆☆☆
 
面白くて眠れなくなる社会学

面白くて眠れなくなる社会学

 

 

最近の著者の旺盛な執筆活動を楽しんできたので、本書にも期待したのだが、読了して
微妙な気分。はっきり書かれてはいないのだが、本書の内容は、初心者=学生への社会
学の講義のようでありながら、実はあまり内容が体系だっていない。

というわけで、同じコンセプトのはずの「はじめての構造主義」の方が、深くて解り易く、したがって残念ながら、本書は物足りない。

 

 ●7213 日本人の叡智 (歴史思想) 磯田道史 (新潮新) ☆☆☆☆★
 
日本人の叡智 (新潮新書)

日本人の叡智 (新潮新書)

 

 

実は、本書が読みたかった。著者のまえがきで、古文書に憑りつかれ、ついに書庫の中
で倒れ、救急車に搬送されたエピソードを読み、TVで流暢に語る姿とのギャップに驚
き、だからこそ彼の言葉は軽くならず、魅力があるのだと納得した。

しかし、読みだして最初はとまどった。なにせ、登場人物は97人(それぞれの言葉を2ページで解説)もいて、そのうち名前を知っているのは半分くらい。しかも、世の中に流布している言葉をわざとはずしているので、言葉自体はそれほど魅力がない。

ただ、冒頭の小早川隆景が象徴しているように、言葉は平凡でも、たった2ページで著者が解説する、その背景が素晴らしいのだ。やはり、勉強というものがいかに大事か。そして、その膨大な知識をシンプルに解り易く語る。

それこそ、表題の「叡智」そのものだ、と考えると、この二年間の新聞連載(週一回)のために、著者が使っただろう膨大な時間が愛おしく、素晴らしく誠実に感じてきた。

例えば、秋山真之などあの長大な「坂の上の雲」よりも著者の2ページの解説の方が、よほど彼の天才的な先見性を示している(なんて書いたら司馬に怒られそうだが)

また、これまた色んな歴史書に登場するが、イマイチイメージが明確でない板垣退助が、こんな苛烈な平等主義者だったとは。他に横井小楠こそ知行合一の人だったんだ、とか、斉彬が西郷をかわいがった理由、なんかも良く解る。

さらには、鈴木貫太郎や山梨勝之進のような(素晴らしいというしかない)矜持を持った軍人もいたんだ、と感銘を受けた。

というわけで、本自体は薄いが、内容は非常に濃い一冊であることは間違いない。著者の博覧強記に脱帽である。

 

●7214 芸人という生きもの (エッセイ) 吉川 潮 (新潮選) ☆☆☆☆

 

芸人という生きもの (新潮選書)

芸人という生きもの (新潮選書)

 

 

本当に小説が読めない。今度は柴田哲孝の「WOLF」を100ページくらいで投げ出
してしまった。というわけで、本書を読みだしたが、さすがに著者の文章はリズムがあ
って、くいくい読める。

内容は、正直言って僕は江戸落語はさっぱりわからないのだがそこは、「江戸前の男 春風亭柳朝一代記」の著者、それでも読んでしまう技の冴え。

そういえば、今はなき児玉清司会の週刊ブックレビューで、隣の女性が推薦した難しそ
うな科学ノンフィクションを、申し訳ないが読み物とは思えなかった(で読まなかった)と秒殺してくれたのは著者だった。

というわけで、一番良い先生にリハビリしてもらったのかもしれない。また本書は写真は比較的多いのだが、語られる人物を全員ネットで画像確認できる、というのは本当に便利な世の中になったと思う。ついでに、著者の嫁の音曲師、柳家小菊も確認できたし。

 

 ●7215 地獄の読書録 (書評) 小林信彦 (集英文) ☆☆☆☆☆

 

地獄の読書録 (集英社文庫)

地獄の読書録 (集英社文庫)

 

 

今度は磯田の江戸の殿様の本を読みだしたのだが、結局はのれず、月に1-2回近所で
開かれる古本市で本書を100円でゲットして読みだした。そして、一気に引き込まれ
た。たぶん、これで3回目くらいの通読だと思うが、小林の凄さと僕への影響の大きさ
を、改めて認識させられた。

僕の生まれた59年から69年までの10年間、翻訳されたミステリをすべて書評する、という蛮勇にはあきれるしかない。そして、その慧眼には驚愕するしかない。「第八の地獄」「世界を俺のポケットに」「もっとも危険なゲーム」、そうかライアルもマクリーンも、僕は彼から教わったのだ。

現在彼にもっとも近い存在は、ジャンルは違うが、大森望だろう。(しかし、大森と僕の好みは、半分くらいずれていて、その影響は小林に比べるべくもない)だからこそ、3年前体調が最悪だった時読みふけったのは大森であり、今回は小林だった。

さらに、本書はあの田中潤司との対談や小林のあとがきもあって、懐かしくも日本翻訳ミステリ黎明期の再勉強を楽しく行うことができた。まあ、ここは著者の最近の衰えは言わずにおこう。

(しかし、流れる」を読みだして、すぐ既読なことに気づいてしまった。いったい、僕の記憶力はどうなってしまったのだろうか)

最後に関係ないけど、筒井の新刊が上梓された。なんか読むのが怖いなあ。

 

 ●7216 竜が最後に帰る場所 (ファンタジー) 恒川光太郎 (講談社)☆☆☆☆★

 

竜が最後に帰る場所

竜が最後に帰る場所

 

 

そろそろ小説を読まないと、と思ってやっと手に取ったのが、昨年「金色機械」「スー
パースター」の二作で、個人的なMVPだった著者。とはいっても、図書館で借りだすこと3回目でやっと読みだしたのだが。

冒頭の「風を放つ」は正直言って、嫌悪感に近い違和感を感じたのだが、次の「迷走のオルオネラ」は、ミステリ的なオチは予想できたのだが、その強烈な歪んだ世界観に引きつけられた。こんな小説、普通は書けない。

と思ったら、つぎの「夜行の冬」「鸚鵡幻想曲」にノックアウトされた。なんだ、これ
は?前記の長編も、変な話であるが、強烈なクリエイティブさ、新しさを感じることは
できた。しかしこれはもう、何と言ったらいいのか。疑似集合体には、まったくまいってしまった。よくこんなこと、考え付くとあきれてしまう。

最後の「ゴロンド」も表題とリンクして、内容は予想がつくけど、良い出来。ただやっぱり「鸚鵡」がすごすぎて、これはかなり素直な作品に感じてしまった。

とにかく、恒川の才能に脱帽。Wさんから薦められたとき、うまく反応できなかった僕の不明を恥じるのみ。これは全作読まなければ。幸い小説不感症も何とか克服できたようだし。

 

 ●7217 金色の獣、彼方に向かう (ホラー) 恒川光太郎 (双葉社)☆☆☆☆★

 

金色の獣、彼方に向かう

金色の獣、彼方に向かう

 

 

前作と違って、ホラーとしたのには深い意味はない。著者の作品を安易にジャンル分け
することは不可能であり、無意味だ。今回は「異神千夜」「風天孔参り」「森の神、夢
に還る」、表題作の四編が収められているのだが、これまた傑作揃いで溜息をついてし
まった。

今回は、共通したテーマ(登場人物?)として、鎌鼬の存在があるのだが、そ の内容は統一されているように見えて、素晴らしく奔放に暴れまくる。

特に前作でもその萌芽はあったのだが、とんでもないストーリーが必ず途中で、それ以上にとんでもなく変調するのだが、普通ならそこでオチ、一件落着となるところが、著者の場合その変調したストーリーもまた、一編の短編として成り立ってしまうのだ。

何か、今まで味わったことのない、濃厚・芳醇なストーリーに、少し酩酊気味である。こんな魅力的な違和感は、ちょっと今までなかった。やっぱり恒川は凄い。

 

 ●7218 夜市 (ホラー) 恒川光太郎 (角ホ文) ☆☆☆★

 

夜市 (角川ホラー文庫)

夜市 (角川ホラー文庫)

 

 

しかし、難しいものだ。恒川をきちんと勉強しようと思って、その処女作にして出世作
日本ホラー大賞受賞作の本書を読みだしたのだが、期待が高すぎたこともあって、正直
喰足らなかった。

第二作の「風の古道」も含めて、異界小説として(普通の作家に比べれば十分異常なのだろうが)上記の二作を読んだあとでは、定型通りの作品に感じてしまったのだ。

またその文体も、確かに新人としては素晴らしいのだが、まだまだ若書きに感じてしまった。読者とはわがままなものだ、とつくづく思う。それでも、当分順番に著者をフォローしていこうと思う。