読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

2013年 4月に読んだ本

●6691 にすいです。 (対談集) 冲方 丁  (角川書) ☆☆☆★

 

 

冲が沖でないことからの題名。そうか、著者は子供の頃海外で暮らし、それがこの妙な
ペンネームへのこだわりとなったのか。対談相手は、かわぐちかいじ富野由悠季、井
上雅彦、養老孟司夢枕獏、伊阪幸太郎、天野喜孝中野美奈子滝田洋二郎、という
豪華メンバー(鈴木一義:科学技術史と山本淳子:平安文学の二人は知らなかった)

全体に面白く読めたけれど、著者は思った以上に常識人で、ちょっと対談相手へのリスペクトが強すぎる気がした。(おかえしもいっぱいあったけど)著者には申し訳ないが、僕が限られた情報からイメージする中野美奈子とは、全く違う彼女の姿が一番印象に残った。しかし、光圀の次は清少納言なのか・・・

 

●6692 放課後はミステリーとともに (ミステリ) 東川篤哉 (実業日)☆☆☆★

 

放課後はミステリーとともに

放課後はミステリーとともに

 

 

冒頭の「霧ヶ峰涼の屈辱」に見事に騙されてしまった。確かこのシリーズの長編読んでるはずなのに情けない。で、次の「逆襲」がまた素晴らしい。トリックがミラー構造で「屈辱」と韻を踏んでいる上に、どんでん返しの連続。

相変らず、ベタなカープギャグはどうかな?と思うが、ミステリとしては何と言うハイレベルな短編集だ、と感心したら、さすがに次からは失速。

後は駄作とは言わないが、平均レベルの作品に終始してしまった。(ホックの「長い墜落」を彷彿させる「屋上密室」が、あまりにベタすぎて面白かったが)というわけで、全体としてはこの評価。でも最初の2作だけでも、読む価値はあると思う。

 

●6693 いつまでもショパン (ミステリ) 中山七里 (宝島社) ☆☆☆

 

いつまでもショパン (『このミス』大賞シリーズ)

いつまでもショパン (『このミス』大賞シリーズ)

 

 

おいおいこれじゃ、くらもちふさこでしょ、と突っ込みながら、たぶん題名が先にできたんじゃないか、と嫌な予感。「ドビュッシー」の映画化もあるし。

で、予感的中。これはダメでしょう。こんな音楽薀蓄ばかり延々読まされても、マニア以外は辛いだけ。ミステリ部分も派手だけれど、薄味。残念ながら著者は書きすぎ。とりあえず「カエル男」シリーズだけ追いかけることにしよう。

 

●6694 マネー・ボール (NF) マイケル・ルイス (ランダ) ☆☆☆☆

 

マネー・ボール (RHブックス・プラス)

マネー・ボール (RHブックス・プラス)

 

 

「球界消滅」でひさびさに意識した「セイバーメトリクス」。アスレチックスを舞台にしたそのベースボールの革命は、最近流行の「統計学」でもよく引用されるが、その元祖というべきなのが本書だ。

正直もはや野球には興味の無い僕だが、一度読んでみようと思って手に取った。で、一気に引き込まれ、前半は興奮しながら読みふけった。

まず、主人公のビリー・ビーンのことを、僕は勝手に野球オタク少年と思いこんでいたが、彼こそは超野球エリートの学生でありながら、その挫折経験のなさとメンタルの不安定さ(短気)によって結局目が出なかった大リーガーであった、という事実に驚いてしまった。

更にこれまた僕は勝手に、彼はアスレチックスの大成功によって、レッドソックスのGMにヘッドハンティングされた、とばかり思い込んでいたのだが、こんなオチが現実に起きていたんだ。無知が恥ずかしい。

また、この物語は2000年前後ということで、僕がまだサッカーにのめりこむ前で、登場する選手が、ジアンビー、デイモン、モイヤー、等々結構なじみがあったのも良かった。(今なら、選手がさっぱりわからない)

しかし、物語は後半やや失速する。ドラフトの話は面白いが、このトレードは古臭い野球人じゃなくても、鼻白んでしまう。ここまで、選手を商品扱いしちゃダメだろう。そして、冷静に色々調べてみると、アスレチックスの成功の原因は本書の内容だけでは語りきれていないことに、気づかざるを得ない。

案の定、0年代後半アスレチックスは失速してしまう。ただ、ご存知のように昨年アスレチックスは最後の連勝で、ダルビッシュのレンジャーズを歴史的大逆転するのだが、今回はその内幕をライターには語らなかったようだ。

そういや、ルイスはあのIT狂騒曲「ニュー・ニュー・シング」や「ライアーズ・ポーカー」の著者だ。きっと本書もちょっと派手に描きすぎなのだろう。

 

●6695 密室蒐集家  (ミステリ) 大山誠一郎 (原書房) ☆☆☆☆★

 

密室蒐集家 (ミステリー・リーグ)

密室蒐集家 (ミステリー・リーグ)

 

 

確か北村薫が本書を「美しい」と褒めていたように思うが、正にその通り。ひさびさに
美しい論理を堪能した。傑作だ。この読後感は、遥か昔「クイーンの冒険」を読んだと
きの記憶につながる、と言ったら大げさか。

それほど、本書収録の5作のレベルは高い。確かに、物語としては無茶や偶然がないこともないが、本格パズラーであるなら十分な(架空の)リアリティーがある。良く出来たパズラー長編を何冊か読んだ感じで、本当に得した気分。ここには、京大推理研の良い部分が凝縮されている。

素直な麻耶雄嵩と言ったら怒られるか。ただし、最後の「佳也子の屋根に雪ふりつむ」だけは、傑作だけれどトリックにモトネタがあるのと、動機が納得できないので減点かな。

 

●6696 美しい家 (ミステリ) 新野剛志 (講談社) ☆☆☆☆

 

美しい家

美しい家

 

 

これまた、少し古いけど乱歩賞作家で未読作家。北上次郎絶賛ということで手に取った
が、最近は「あぽやん」等々で有名なので、本書も家族小説だとばかり思っていた。まずは主人公の前に、彼女に関わるものが次々死んでいくという謎の女性が現れ、ホラーのような出だし。

また彼女は、幼い頃自分がスパイ学校に暮らしていて、人を殺した記憶がある、という。しかし、そこにどうやらそのスパイ学校出身らしい少年が人々を訪ねまわる、別のストーリーがカットバックで挟まり、当然そのふたつの物語は徐々にクロスし始める。

変わった物語だなあ、と思っていたら、途中のスペースシャトルのあたりで、これがある有名な実際の事件をモチーフにした物語であることがわかる。このあたりは、主人公の作家の家庭の問題も含めて、なかなか読ませる。

ストーリーは良く考えると、桐野夏生が得意としそうな、救いの無い物語なのだが、新野の文章も達者で、また違った雰囲気で良く出来ている。問題はラストだ。少しミステリの意外性にこだわりすぎたかもしれない。

あと、主人公の扱いもちょっと驚いてしまった。あんまりではないかい?というわけで、色々消化不良もあるのだが、これだけ読ませてくれれば十分か。少し甘めの採点。

 

●6697 ノックス・マシン (SF) 法月綸太郎 (角川書) ☆☆☆☆

 

ノックス・マシン

ノックス・マシン

 

 

確か大森が創元で編纂している年間SF傑作集で表題作を読んだが、その時はよく真面
目な顔をして、こんなおバカな小説を書けるものだとあきれたのだが、同じような作品
が四編まとまって、単行本として上梓された。

例によって大森は絶賛なのだが、僕は評価に困る。表題作とその続編の「論理蒸発-ノックス・マシン2」を本当に楽しむにはミステリ古典に対する超マニアックな知識と同時に、グレッグ・イーガンを読みこなせる量子力学知識が求められるのだ。これは読者を選ぶ。

また「引き立て役倶楽部の陰謀」に関しては、クリスティーに関するかなりディープな知識、特にあの若島正のクリスティーに関する考察「明るい館の秘密」が必読となる。

(唯一SF色の濃い「バベルの牢獄」は正直良くわからなかったのだが、これは法月版「ローウェル城」なのだろうか)

しかし「ソーカライズとは、科学技術系の専門用語を文学的なレトリックでねじ曲げ、ある種の隠語として使用することをいう。二十世紀の故事にちなんだ言葉だ」なんて文章に出会うと、見事に著者の罠にはまって、僕の知的スノビズムがくすぐられてしまう。まあ、ノー・チャイナマンの前では、全てが脱力するしかないが。

 

 ●6698 色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年(小説)村上春樹(文春社)☆☆☆★

 

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

 

 

大森望はダメ出しをしているが、箕浦さんが絶賛なので、今回は自腹でリアルタイムで読むことにした。あっという間に読んだが、評価は難しい。村上ファンとしては、いつ
もの安心できる文体とストーリーそのものであり、面白く読めることは間違いない。

基本は「ノルウェイの森」であり、ユズ(シロ)は直子、沙羅は緑ということだろう。冒頭の緑川の「トークン」は「羊をめぐる冒険」の「羊」であり、「ねじまき鳥」の「痣」である。

「アカ」の現在の姿は「ダンス・ダンス・ダンス」の五反田君に重なり、冒頭の主人公の夢に到っては「海辺のカフカ」から「1Q84」まで、いったい何度繰り返されたか。そして、答えの無い終わり方は「スプートニクの恋人」。

というように本書には、これでもかと今までの作品のモチーフが繰り返される。しかし、本書を集大成と言うのはさすがに憚られる。やはり、停滞、マンネリズムを感じてしまい、晩年のロス・マクドナルドと重なってしまう。

たぶん村上はほとんど設計図を書かずに、即興で描いていったら、おなじみのモチーフだらけになってしまったんだろうが。本書はいつものように、喪失と再生の物語であり、崩壊した秩序の再構築を願う物語である。

ひょっとしたら、そこに震災のメタファーが込められているのかもしれないが、あからさまなものは何も無い。巡礼の果てにフィンランドで主人公が「クロ」と出会うシーンなど、ファンにはたまらないのだが、これも冷静に読めばかなり自分勝手な話であるかもしれない。

はっきりしているのは、本書は村上ファンが、ブチブチ文句をいいながらも(いったい灰田の父親はどうなったんだ?シロを殺した犯人は誰なんだ?)結構楽しんでしまう佳品であり、間違っても100万部も売れてしまうベストセラーではない。

何かが狂っていて、その結果村上春樹の評価も、必要以上に二極分化してしまう。さすがに、次はカウントダウンはやめようよ。

 

 ●6699 臨床真理 (ミステリ) 柚月裕子 (宝島社) ☆☆☆

 

臨床真理 (このミス大賞受賞作)

臨床真理 (このミス大賞受賞作)

 

 

中山七里が信頼できなくなってしまった今、「このミス大賞」作家の唯一のホープが「
最後の証人」「検事の本懐」と連続ヒットをかました著者である。

しかし、著者の受賞作である本書はアチコチで評判が悪く、ずっと読まずに来たのだが、ついに読む本がなくなり手に取った。

相変らずというか、最初から達者な文章でクイクイ読ます。正直、声に込められた感情が色となって見える、という共感覚とやらは、もうちょっと説明してくれないとしっくりこないが(お前は榎木津か)キャラクター造型は申し分ない。

ただ、問題は後半の展開である。残念ながら、ここには全く意外性がなく、特に真犯人像と結末に関しては、陳腐というか予定調和というか、これはやはりダメでしょう。その後の作品の奥の深さとは対極の、薄っぺらい物語に堕してしまった。ちょっと後の二作が素晴らしかったので、厳しい評価となってしまったのかもしれないが。

 

 ●6700 論理爆弾 (ミステリ) 有栖川有栖 (講談社) ☆☆☆

 

論理爆弾

論理爆弾

 

 

シリーズ第3弾だが、正直著者には申し訳ないが、このシリーズはイマイチ合わない。著者としては、本書はパズラーではなく、書きたいことは別のところにあるのだろうが、僕はやはりこの結末は納得できない。

たぶん、題名の「論理爆弾」が従来のパズラーの論理をぶち壊してしまった、ということなんだろうが、それを描くなら、もっと別のやり方が必要な気がする。

 

 ●6701 天使に見捨てられた夜 (ミステリ) 桐野夏生 (講談文) ☆☆☆★

 

天使に見捨てられた夜 (講談社文庫)

天使に見捨てられた夜 (講談社文庫)

 

 

ずっと綾辻館シリーズの第二作「水車館」を読まなかったように、桐野のミロシリーズ第二作の本書もなぜか読まなかった。ただ、これでたぶん桐野の小説は全部読んだことになる。

「水車館」がパズラーというコードにあまりにも忠実にこだわったため、やや平板になってしまったように(法月の「雪密室」もそうかな)、本書もハードボイルドの定型にこだわったため、堅苦しくなってしまった感じがする。

真相はいかにもロス・マク的な家庭の悲劇。ただし、ミロとアーチャーではあまりにも違う。どう考えても、ミロを始めとした桐野の濃いキャラクター達は、ミステリの定型の中で生きていくのは無理なのだ。

本書を読んで、「柔らかな頬」で直木賞を獲ったときの桐野の言葉の意味が良くわかった。またそのことは、日本エンターテインメント界にとっても、幸せであった。(高村薫の場合は良くわからないが)

ただ、まさかミロが「ダーク」まで行ってしまうとは思わなかったし、そのことが良かったかどうかは保留。

 

●6702 幻 坂 (ホラー) 有栖川有栖  (メディ) ☆☆☆☆

 

幻坂 (幽BOOKS)

幻坂 (幽BOOKS)

 

 

「幽」連載の八篇に書下ろしを一編足した短編集。ホラーと書いたが、怖さよりファンタジーと言った方が良い作品が多い。また大阪というと水の都という常識に、坂(天王寺七坂)をぶつけてきたのは、さすが地元のディープな作家の技。

冒頭の「清水坂」の語りにはっとさせられる。これこそ、ほんまもんの大阪弁。物語自身に新味はないが、見事な語りが哀しい物語を締めくくる。ただ、文体は作品によって変わってしまい、少し物足りなさを感じていたら、「口縄坂」の容赦の無さにぞっとさせられる。

そして、本書の個人的な白眉は、「天神坂」と芭蕉の最期を描いた「枯野」の二編。前者はオチは見当がついたが、奇妙な味がおかしい。(この作品は、ひょっとしたらかつて著者が褒めていた、T・S・ストリブリングの短編「ベナレスへの道」がヒントになっているのではないだろうか?)

後者は著者にもこんな作品が書けるんだ、とちょっと驚いてしまった。失礼な話かもしれないが。いずれにしても、有栖川有栖のもうひとつの顔を知るには絶好の、そしてたぶん彼にしか書けなかった、端正な大阪ホラーファンタジー集だと思う。写真や地図も効果的だ。

 

●6703 夢幻花 (ミステリ) 東野圭吾 (PHP) ☆☆☆★

 

夢幻花(むげんばな)

夢幻花(むげんばな)

 

 

何となく、ミステリらしいミステリが読みたくて「新参者」以降初めて自腹で購入。期待は裏切られず、今回は伏線や小技が良く効いた、東野らしい丁寧なミステリ。特にかなり複雑なストーリーなのに、偶然に頼らず論理的に収斂していく点には感心した。

プロローグの使い方もうまい。ただ、最初から気にはなっていたのだが、このテーマだとすぐ思い浮かべてしまうオチが、正にその通りだったのは残念。まあ、これしかないのだろうが、普通やっぱりこのオチはわかってしまうでしょう。もちろん、それでも読ませるのはさすがなのだが。

 

 ●6704 越境捜査 (ミステリ) 笹本稜平 (双葉社) ☆☆☆★

 

越境捜査

越境捜査

 

 

「やがて、警官は微睡る」で、例によって潮崎が本書についてしゃべっていたのが記憶に残っていて手に取った。(正確に言うと、柴田恭平主演のTVドラマの方だったかな)なかなか読ませる。特に宮野や韮沢等々の脇役のキャラが立っているのが良。

ただ、12億の裏金に関しては、これだけ読まされるとさすがにうんざりしてくる。気持ちはわかるが、そろそろ警察小説からいったん裏金ものを除く、休戦協定でも結んでくれないかなあ。

あとこの真犯人は、やはりちょっと強引。さらに9億円の隠し場所も、記述がそこだけ少し浮いていたので、すぐ気づいてしまった。まあ、少し厳しい採点かな。

 

●6705 孤独なき地 K・S・P (ミステリ) 香納諒一 (徳間書) ☆☆☆★

 

孤独なき地 K・S・P(Kabukicho Special Precint)
 

 

K・S・Pとは、歌舞伎町特別分署の略。どうやら、香納版新宿鮫と言うことかもしれないが、主人公の沖幹次郎を筆頭に、あまりにも曲者揃いでちょっとリアリティーが無い。

ストーリーは「心に雹の降りしきる」がそうだったように、複雑な上にジェット・コースターのような猛スピードでぶっ飛ばすので、細かいことを考える暇なくラストまで一気に読ませる。

ただ、やっぱり、ストーリー、人物造型、会話、文章、等々全てに荒っぽく、傑作というには気が引ける出来かな。今回は真犯人の設定が目玉で、それは成功していると思うが、キャリアが悪徳すぎるのがパターンとはいえ嫌になってしまう。

ただこのシリーズ、女にもてたことがない蛸坊主の沖と、美貌のキャリア村井貴里子の絡みは、面白くなるかもしれない。しかし、世の中ミステリもTVドラマも刑事モノばっかりだなあ。「相棒」恐るべし、なのかな。

 

●6705 挑発 越境捜査2 (ミステリ) 笹本稜平 (双葉社) ☆☆☆☆

 

越境捜査2 挑発

越境捜査2 挑発

 

 

前作の内容と終わり方から、続編は難しいのでは?と感じたのだが、題名からして今野敏「隠蔽捜査」と同じく、シリーズ化。僕は前作で韮崎が死んだのだと勘違いしていたんだ。

で、今回はパチンコ業界と警察の癒着がテーマ。薀蓄話としては色々興味深いんだけれど、そろそろ外部に敵を作って欲しいと切に願う。そうは言っても、本書を読んで、このシリーズの魅力が、警視庁の鷺沼、神奈川県警の鼻つまみ宮野、そして「ススキノ探偵」の相田を思わせる、やくざの福富、このトリオにあることが明確になった。

鷺沼は望まないのに、結局この三人がそれぞれの能力を発揮して巨悪に対抗する、という毒をもって毒を制する、というパターンがなかなか新しくて魅力的なのだ。さらに今回は、パソコン・オタクの井上も加わり、その会話がやけに面白い。

そして、謎の女深見亜津子。ラスト、彼女の口から真相があっけなく語られるのはちょっと興醒めだが、最後の最後に彼女が仕掛けた罠は、前作の真相(実はそれは本書の冒頭で詳しく語られる)と比べて、見事なオチとなっている。

正直、前作と本作の出来にそれほど差はないのだが、両方合せて一本の評価と思って欲しい。それにしても、宮野の料理が良い味を出している。鷺沼=柴田恭平、宮野=寺島進のキャストはイメージぴったりで、(特にWEBで見た、エプロン着けた寺島に爆笑)DVDを探しにツタヤに行ったのだが、どうやらDVD化されてないみたい。

残念。それとTVだと福富が出ないんだよね。まあ、映像的には三人いるとややこしいのかもしれないが、これまた残念。(代わりに「アウトレイジ」「ビヨンド」「家族ゲーム」を借りて一気に鑑賞)

 

●6706 毒のある街 K・S・P (ミステリ) 香納諒一 (徳間書) ☆☆☆☆

 

毒のある街 K・S・P〈2〉

毒のある街 K・S・P〈2〉

 

 

今度はK・S・PのⅡ。前作は全体に荒削りだなあ、と感じていたが、シリーズ2作目にして、急激にレベルアップ。冒頭はあまりに血生臭く、ちょっとやりすぎと感じたが、途中からは一気に引き込まれた。

沖と貴里子だけでなく、マルさん、ヒラ、ヒロ、そして柏木、というメンバーたちのキャラが、今回は見事に描きわけられている。さらにそれだけでなく、前作でも登場した中国マフィアの朱栄志が、聡明なる狂人として抜群の存在感を醸し出す。

そして、鬼崎というサブ・キャラクターも良い味を出している。何より、前作はちょっと解りにくかったストーリーが、今回は複雑だがくっきり良くわかる点が素晴らしい。

シリーズものは年末ベスト10などでは不利だとは言え、このシリーズはもっと評価されていいのではないか。ただ、前作のネタバレオンパレードなので、順番に読まなければいけないのがやや辛いが。

 

 ●6707 噛む犬 K・S・P (ミステリ) 香納諒一 (徳間書) ☆☆☆☆

 

噛む犬 K・S・P

噛む犬 K・S・P

 

 

本当は「越境捜査3」を読むつもりだったのだが、K・S・Pシリーズに予想以上に嵌ってしまい、こちらを先に手にとった。

今回も予想に違わない出来。本書は初めて中国マフィアが登場しないのだが、新宿の都心で発見された白骨死体が貴里子の先輩であった、という衝撃的かつ印象的な冒頭から素晴らしい。(その真相も、東電OL事件を想起させて哀切だ)

そして栄転した深沢の事件への関わり方や、マルさん自身の事件も良く出来ているし、沖と貴里子の関係も益々目が離せない。さらに、助川という出家した元組長の物語もいい味を出している。

唯一の欠点は、悠衣の第四の男が見え見えなところか。いや、完全にこのシリーズに嵌ってしまった。

 

●6708 女警察署長 K・S・P (ミステリ) 香納諒一 (徳間書) ☆☆☆☆

 

女警察署長 K・S・P

女警察署長 K・S・P

 

 

このシリーズは全10冊の構想(マルティン・ベック以来の警察小説の定番?)らしいが、今のところ第四作の本書が最新刊。今回も素晴らしい出来。当然というか、今回は朱栄志が再登場。沖の父親を拉致してしまう。

そこに、意外なことにヴァイオリンの名器盗難事件が絡んでくる。題名からわかるように、本書で貴里子はついにK・S・Pの署長に就任する。そして、沖との関係も急速に発展するが、ラストは哀切な幕切れとなる。

また前作に続いて、妻と娘を殺されたマルさんから目が離せない。うまい。このシリーズ、今や本家の「新宿鮫」に貫禄は劣っても、生きの良さでは負けていない。11年度「心に雹の降りしきる」がこのミス9位で、本書は12年度の圏外(投票者は2名のみ)というのは解せない。こっちの方がずっと良い出来。

やはり、シリーズものはよほど人気がでないと、ベスト10では不利ということか。まあ、僕だって読んでなかったのだけれど。

 

 関係ないけど、娘に借りて「進撃の巨人」10巻を読破。