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2012年 7月に読んだ本

●6478 リリエンタールの末裔 (SF) 上田早夕里 (早川文) ☆☆☆☆

 

リリエンタールの末裔 (ハヤカワ文庫JA)

リリエンタールの末裔 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

これまたSFで嫌になってしまうが、内容は素晴らしい。著者は『華竜の宮』で大きな自信をつけたのか、今までの短編集よりさらに深い味わいがある。表題作は『華竜の宮』と同じ世界を描いたもの。ただしテーマは「飛ぶこと」であり、少しシンプルすぎる気もするが、AIの使い方が気が効いている。

事故による脳の後遺症を描いた「マグネフィオ」と、海洋無人探査機にまつわる逸話を語る「ナイト・ブルーの記録」は一見何のつながりもないようだが、実は脳と人間の機能の拡張というテーマで繋がっている。前者はある意味最高に痛い恋愛(失恋)小説でもあり、後者は恋愛以前小説である。どちらも突き抜けるような感覚と、どうにもならないもどかしさの背景に、人類の技術の急激な進歩が描かれている。

そして、これまた『華竜の宮』のプロローグと呼んでいいのかもしれない。最後の中篇「幻のクロノメーター」はスチームパンクと言うべきか、キース・ローマー的歴史改変ものと言うべきか、著者としては異色の作品。個人的には「ナイト・ブルーの記録」がベストだろうか。

 

 ●6479 インサート・コイン(ズ) (ミステリ) 詠坂雄二  (光文社)  ☆☆☆☆

 

インサート・コイン(ズ)

インサート・コイン(ズ)

 

 

詠坂の新作は、なんと、スーパーマリオぷよぷよスト2、インベーダー、そしてドラクエ、という歴史的なゲームを題材とした連作ミステリ。

最後の「そしてまわりこまれなかった」(実はこの作品が一番古いのだが)の冒頭に「本作の内容は『ドラクエ』についての重大なネタバレを含んでいます。未プレーの人は読まないでください。そんな奴が宇宙にいるとは思えませんが、念のため」とあるが、すまん宇宙に一人僕がいた。

というか、僕はインベーダーも含めて世の中のゲームといわれるののを、一回もやったことがない。そんな時間があったら一冊でも本が読みたい、と思っていた。(インベーダーの頃は、そんな金があったら)でも、結構楽しく読めてしまったんだよね。

後から振り返ると、この評価は甘いとは思うのだが、一回もゲームをやったことがない僕に最後まで読ませたのだから、それはそれでたいしたものではないか。まあ、著者の文章やセンス(古いタイプのオタク?)が好きなだけかもしれないが。ミステリとしては、ぷよぷよをテーマとした「残響ばよえ~ん」(意味不明)が良く出来ているのだが、オチが読めてしまうんだよねえ。

 

 ●6480 黄色い部屋はいかに改装されたか?(評論)都筑道夫 (フリー)☆☆☆☆

 

黄色い部屋はいかに改装されたか?増補版

黄色い部屋はいかに改装されたか?増補版

 

 

フリースタイルが根気良く進めてきた、都筑の仕事の集大成も、ついに四冊目で一番重要な本書の登場となった。(なぜか小森収の名前が見えないが)本書は表題作だけでなく、「私の推理小説作法」や様々なエッセイが収録されているが、何より有名な佐野洋との「名探偵論争」が全て収められているのが素晴らしい。(実は僕は未読だった)

内容に関してはいまさらいうまでもなく、本書が提唱した「モダーン・ディティクティブ・ストーリー」及び「トリックよりもロジックを」というテーゼは、日本ミステリや僕自身に巨大な影響を与えたと思う。

日本ミステリ界には僕も含めて、異常?にクイーンファンが多く、その全員が本書のテーゼを意識せざるを得ない。しかし、テーゼのインパクトは強烈でも、残念ながら読物=評論としてはイマイチ格調がなく物足りない。

そして、その極めつけが最後の「名探偵復活論」だ。この論旨が弱いとはいつも感じていたのだが、今回佐野との論争を読んでもやはり都筑の負けのような気がする。もともと僕はラヴゼイにしてもディーバーにしてもレンデルにしても、ノンシリーズの方が好きで、ハードボイルド以外は名探偵の存在を必要とはしないのだが、今回それ以上の本質的課題に気づいてしまった。

それは、そもそも都筑がこの時期輩出した名探偵たち、キリオン・スレイ、物部太郎、退職刑事、等々に魅力がないため、都筑の論の説得力を著しく殺いでしまっているという事実だ。(どうやら都筑はこの頃、ホックをお手本にしていたようだが、それは違うだろう?と言いたい)

佐野はちらりと触れているが、たぶん当時もみんなそう思っていたはずだ。そして、それに比べてデビュー当時の都筑のノンシリーズの作品群の素晴らしさ。ここは是非、昔の植草甚一全集のように、ポケミス装丁で都筑の初期作品集を上梓してくれることを期待したい。

 

●6481 惨劇アルバム (ホラー) 小林泰三 (光文文) ☆☆☆★

 

惨劇アルバム (光文社文庫)

惨劇アルバム (光文社文庫)

 

 

いかにも著者らしい、ひねくれた記憶改変ホラー。冒頭は素晴らしいんだけれど、その後の家族それぞれの悲(喜)劇が、有機的に繋がらないのが残念。またこちらも慣れてきたので、ラストはある程度予想がついてしまう。そろそろ、文庫書下ろしでなく、ハードカバー長編を期待したい。(まだ、サラリーマン兼任なんだろうか)

 

 ●6482 清洲会議 (歴史小説) 三谷幸喜 (幻冬舎) ☆☆☆★

 

清須会議

清須会議

 

 著者初の長編小説、とは言っても、全編登場人物のモノローグで構成されているので、
小説と言うべきかは微妙なところ。読んでいる間は、登場人物もストーリーも良く知っているところなので一気に読めたが、読み終えてはたと評価に困ってしまった。

まあ面白く読んだんだけど、ここには別に新しい発見はないんだよね。というより、かなりデフォルメはされているが、正にイメージそのままで、どうかな?と思ってしまう。

更に歴史に興味がある人にとっては、こんな物語は何も目新しくないが、普段三谷の映画を見ている人は、果たしてどこまでついてこれるか?信長は知っていても、信長の息子を知っている人がどれだけいるだろうか。アマゾンの所感でいろんな配役予想があった、イノシシ=伊東四郎に笑った・・・

 

 ●6483 一応の推定 (ミステリ)  広川 純 (文春文) ☆☆☆★

 

一応の推定 (文春文庫)

一応の推定 (文春文庫)

 

 

ずっと気になっていて、いつか読もうと思っていた宿題をやっと果たした。本書は松本
清張賞受賞作だが、いかにも清張賞という感じの、今時珍しい愚直なまでの社会派ミステリ。良く言えばレトロで懐かしい香り。悪く言えば、あまりに古臭い。

で、清張賞なら昭和の香りは許せてしまう。乱歩賞なら許せないけど。ただ、このラスト、人形から真相に辿り着く部分は、省略の美学は感じるが、やっぱり強引すぎる気がする。そう言えば最近ヒットしたミステリドラマが同じトリック?を使っていたけど。

 

 ●6484 読むのが怖い!帰ってきた書評漫才~激闘編 (書評) 北上次郎 × 大森望 (ロッキンオン) ☆☆☆☆

 

読むのが怖い!―帰ってきた書評漫才 激闘編

読むのが怖い!―帰ってきた書評漫才 激闘編

 

 
シリーズ最新刊を予約したついでに、過去のも予約したら、途中で既読だったことに気
づいたけれど、やっぱり最後まで読んでしまった。たぶん、この二人が僕が一番好きな(影響を受けた)書評家であることは間違いないのだが、その二人がここまで意見が違うとは・・・で、僕自身も二人の間を漂っている感じ。「風味絶佳」と「赤い影法師」が読みたくなった。

 
 ●6485 大帝の剣1 (伝奇小説) 夢枕 獏 (角川文) ☆☆☆☆

 

大帝の剣 1 (角川文庫)

大帝の剣 1 (角川文庫)

 

 

どうやら、今度は「大帝の剣」が完結したということなので、第一巻から読み始めた。(とは言っても、文庫本にはノベルス2冊分が入ってます)舞台は大阪の陣から23年。正に「妖星伝」の王道に、獏流の明るさを付け加えて、物語は快調にぶっ飛ばす。

これは、ひょっとしたら「混沌の城」並みの傑作になるのかもしれん。まあ、サイコダイバーは結局途中で挫折してしまったので、油断は禁物?なのだが。

 

●6486 先生はえらい (思想哲学) 内田 樹 (ちくま) ☆☆☆☆

 

先生はえらい (ちくまプリマー新書)

先生はえらい (ちくまプリマー新書)

 

 

ブログで本書が韓国に訳されることが紹介されていて、気になって読み出した。あっと言う間に読了したのはいいが、どうにもアンビバレンツな思いが胃の底で消化しきれず少々もたれ気味。

何度か書いたが、僕は内田の思想哲学・社会学については高く評価するが、実務=外交や政治に関する言説=本は、それほど評価しない。更に言うと、本職の学校=先生に関してもかなり微妙。

例えば今回のいじめ事件に関するブログも、正しいけど、いや正しすぎて役に立たないように感じてしまう。(それに対して、伊丹十三を論じた文章は最高としか言いようがない素晴らしさ)

そして、本書も本当に顧客である中高生に届いているのだろうか?と疑問に思ってしまう。この本が論じていることを突き詰めつつ否定形で書くと「えらい先生なんてのは、客観的に誰もが認める形で存在したりはしない」「学ぶというのは、買いたいものをお金を払って買うような等価交換ではない」となる。

著者が何度も言うように、教育とは学習者にとって学んだ後でしか価値の分からないようなことを伝えることこそ大切であり、教育内容を学習者に取捨選択させるいわば「消費」としての教育には根本的な問題がある、ということは一応は理解できる。

しかし、その中間だって現実には存在している。どうしても学びたい、身につけたい知識を持っている師は存在しており、そこでの対等の知の交換によって螺旋階段が回り始める経験もいくつもあるのだ。

レヴィナスラカンを一概に否定しようとは思わない。しかし、単純さと深遠さの中間にもリアルは絶対あると僕には思える。もちろん、そんなことは内田にはあたりまえすぎて書く必要のないことかもしれないけど。

で、やっぱり、この文章本当に中高生に届くのかなあ?内田は、非論理的(メタ論理)なことを、わかりやすく(論理的に)語る天才だとは思うが、やっぱ最初はハードルが高いように感じるなあ。

 

 ●6487 大帝の剣2 (伝奇小説) 夢枕 獏 (エンタ) ☆☆☆★

 

大帝の剣 2<大帝の剣> (角川文庫)
 

 

さてさて、いつもの癖で話はどんどん広がっていく。どうやら、「妖星伝」だけでなく本書は「魔界転生」のようである。真田、柳生、服部だけでなく、武蔵や天草四郎まででてきて、主人公の影がどんどん薄くなってきた。

こっちは「混沌の城」を期待していたのだが、このままではちょっと違う感じ。どうやら、この後「野生時代」の休刊で15年くらい執筆が中断されるようだが、その間に求心力を取り戻してくれることを願いたい。

 

 ●6488 韃靼の馬 (歴史小説) 辻原 登 (日経新) ☆☆☆

 

韃靼の馬

韃靼の馬

 

 

辻原の歴史小説というと傑作「翔べ麒麟」を思い起こすが、どうにもそれ以降はあまり良い経験がない。本書は、日経に連載されていた頃から注目していたのだが、残念ながら、「許されざる者」や途中で挫折した「ジャスミン」のようにイマイチのれなかった。

最大の問題は長すぎることだが、キャラがたっていないのも困ってしまう。なぜなら、著者はやろうと思えばそんなこと簡単にやれるはずなので、「許されざる者」のときと同じく、ここに何らかの意味があるんじゃないか、とつい考え込んでしまうのだ。

 

 ●6489 幽女の如き怨むもの (ミステリ) 三津田信三 (原書房) ☆☆☆★

 

幽女の如き怨むもの (ミステリー・リーグ)

幽女の如き怨むもの (ミステリー・リーグ)

 

 

シリーズ最新作にして、異色作であることは間違いない。本書は四つのパーツに分かれ一番長い第一部は、ある遊郭の花魁の哀しい物語である。一応、この部分を褒める書評が結構多いが、僕はイマイチのれなかった。著者にそれを求めなくとも、もっと達者な書き手が時代小説作家にはいくらでもいる。

そうやって、最後にやっと刀城が登場して謎を解くのだが、まあこれまた努力賞という感じで、駄作とは言わないが驚きと切れ味が足りないんだよねえ。まあ、僕の著者への期待が高すぎるのかもしれないが、今回はちょっと(かなり?)物足りない。文章はうまくなったけど。

 

●6490 深呼吸する惑星 (戯曲) 鴻上尚史 (白水社) ☆☆☆☆

 

深呼吸する惑星

深呼吸する惑星

 

 

何か最近は演劇よりも、「クールジャパン」の司会者のイメージが強い鴻上のひさびさの新刊。といっても、何と「第三舞台」封印解除&解散公演、ということで、これで本当の最後かもしれない。既に公演は終わっており、HPで見かけた6000円のDVDを買うべきか、悩んでいる。

で、内容なんだけれど、「モダンホラー」ばりのSF設定で、悪くはないんだけれど、「天狼新星」なんかに比べたらかなりベタな展開。鴻上のSF力ってどのくらいのレベルか、ちょっと気になってしまう。

で、戯曲を小説と読むことにどれだけ意味があるかは置いておいて、ラストまでギャグも含めて楽しく読めた。ただ、今回は結構明るい?解りやすい?残念ながら「モダンホラー」の、あのドクラマグラ的な底無しの洞窟のような奥行きはもはや感じられない。

まあ、でも最後の「第三舞台の軌跡」の写真集は81年から始まっていて、正に僕の人生とシンクロしてしまった。というわけで、少しおまけの評価。

 

 ●6491 中国崩壊か繁栄か!? (対談) 副島隆彦 石平 (李白社) ☆☆☆☆

 

中国 崩壊か 繁栄か!? 殴り合い激論

中国 崩壊か 繁栄か!? 殴り合い激論

 

 

最初に全く本書とは関係ないうんちくをひとつ。どこかで、石田衣良宮沢章夫がけんか(論争)をして、宮沢がいじわるで石平という人物を自作に登場させて、いたぶり続けたので、遂に石田がわびを入れた、とかいう話を聞いていた。

で、最近本当に石平と言う人物がいることに気づいてびっくり。(ところがググッてもこの逸話は出てこず、逆に石田の本名が石平であることに、気づいてしまった・・・)

で、本書ですがあまり期待してなかったのだが、結構面白い。特に中国首脳の政治抗争の歴史を読んでいるとまるで「三国志」でも読んでいるような気持ちになった。副島と石両氏は、かたや中国擁護、かたや中国批判(のため石平は日本に帰化した)と立場は全く逆だが、互いに膨大かつ論理的かつ現場感覚溢れた圧倒的な知識を有しており、一気に読ませる。

時々激しく副島のプラグマティズム(白い猫でも黒い猫でも鼠を獲ればOK。中国は豊かになったのだから、どんな政体でも良いじゃないか)と、石平の理想=原理主義(そもそも共産党毛沢東がいなければ、中国人民は飢えることなどなかったのだ)が激しくぶつかるが、全体を通じては互いの違いを超えたリスペクトが感じられる、良い対談であった。(副島氏が小室直樹の弟子だと聞いて、なるほどと思い、本当かよ、と問い直した)

問題は前半はほとんどなかったのだが、後半になると副島の悪癖である(米国)陰謀説がまたも頭をもたげてくること。幸い今回は許容範囲だったけど、ここだけは認められないなあ。副島の「アジア人同時戦わず」というテーゼは僕にはしっくりくるのだが。

 

●6492 「超」入門 失敗の本質 (ビジネス) 鈴木博毅 (ダイヤ) ☆☆☆☆

 

「超」入門 失敗の本質

「超」入門 失敗の本質

 

 

超訳」から始まって、超とつくとろくなことはないが、本書は違った。名著「失敗の本質」に失礼なことをするなよな、と思いつつも、現状分厚い原書を安易に読めとも言いづらい。というわけで、ビジネス本として読むだけなら、本書の方が手軽で簡単に読めるのは間違いない。いや、逆にポイントが明確になるかもしれない。

そして、戦時中と現在、日本はやっぱり何にも変わっていないことに愕然とするのではないだろうか。敢えて文句つけるなら、ポイント(組織的ジレンマ)が23もあるのは、多すぎるかなあ。

でも、20「居心地の良さが、問題解決能力を破壊する」は、今の僕の問題意識とシンクロして、心に染みた。まあ、でも原書も読むことをお薦めします。

 

 ●6493  大帝の剣3 (伝奇小説) 夢枕 獏 (エンタ) ☆☆☆★

 

大帝の剣 (3) (角川文庫)

大帝の剣 (3) (角川文庫)

 

 

前言撤回というか、修正。本書にも「飛騨大乱編」と「天魔望郷編」のノベルス2冊分の内容が収められているが、この2冊の間に「野生時代」の休刊によって15年の空白が生まれたみたいなのだ。

で、再開のきっかけは映画化。堤&阿部のTORICコンビで07年に公開されているようだ。こりゃ「テルマエ・ロマエ」と同じじゃ?と思ったら、監督は違っていた。(が「テルマエ」の連載も本書と同じくエンターブレインだ)

内容は、15年を経て変わったような、変わらぬような。何とか著者の努力で収斂は始まったが、まだまだ話はとっちらかっている感じ。

 

●6494 読むのが怖い!Z(書評) 北上次郎 × 大森望 (ロッキ) ☆☆☆☆

 

読むのが怖い!Z―日本一わがままなブックガイド

読むのが怖い!Z―日本一わがままなブックガイド

 

 こっちが本命。まず(どうでもいいけど)驚いたネタを2つ。何と「百瀬、こっちを向いて」の中田永一は、乙一の別名だった!何と原田マハ原田宗典の妹だった。(しまった「楽園のカンヴァス」乗り遅れてしまった)

相変らず楽しめるのだが、取り上げる小説の冊数が増えた分、漫才?の量が減ってしまったか?しかし、北上オヤジのワガママぶりは、正しく僕の理想。(気に入らないと書評対象本でも、読まずに投げ出す!)

今回読みたいと思ったのは「一回こっくり」志水辰夫の時代小説、東川篤哉の初期のマニアックな作品「交換殺人には向かない夜」「密室の鍵貨します」(何か西村京太郎みたい)「忘れられた花園」「はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか」

 

 ●6495 エラリー・クイーンの災難 (企画) 飯城勇三 (論創社) ☆☆☆☆

 

エラリー・クイーンの災難 (論創海外ミステリ)

エラリー・クイーンの災難 (論創海外ミステリ)

 

 何と、クイーンの贋作集です。何気に著者は地味に良い仕事をしています。(著者はたぶん同じ年で、彼が学研の中学コースの投稿魔だったときから知っている)ただ、すごく面白いかと言われると、やや疑問。マニアでなければ楽しめないでしょう。

パロディーとしては、やっぱりホームズには勝てないかな。ホックの贋作2作「インクの輪」と「ライツヴィルのカーニバル」はさすがの出来だけれど。

 

●6496 風味絶佳  (小説) 山田詠美 (文春文) ☆☆☆★

 

風味絶佳 (文春文庫)

風味絶佳 (文春文庫)

 

 人生初山田体験。むかし「美味礼賛」という作品が大好きだったこともあって(四文字
熟語のタイトルってあんまりない?)いつか読みたいとは思っていたが、「読むのが怖い」が背中を押した。冒頭の「間食」を読んで、文章の素晴らしさに驚く。まるで橋本治の「蝶のゆくえ」のようだ。

ただ、主人公が過去暴走族?の頭だったりするところが、少し引っかかる。そして、それは読み進むにつれて更に顕著になる。家庭に疲れた主婦が、清掃作業員に惹かれて、清掃車と一緒に家を出て同棲を始める、なんてねえ。何かマンガチックというかリアリティーが欠けている。

と思っていたんだが、いや本質はたぶん著者と僕の世界・世界観が、全く掛け離れているところにあるんだろう。あまりにも本能的な肉食系でありながら、油が抜け落ちている著者の世界は、たぶん僕の世界と対極にある。

(尚、同じく談四楼の「一回こっくり」も借りてきたんだが、冒頭を読んで既読であることに気づいた。と思っていたんだが、更に記憶が蘇えり、そうか前回もこのあざとい冒頭に嫌になって、読むのをやめたんだった。人の感性ってやっぱなかなか変わらないもんだ)

 

●6497 レ・ブルー黒書 (NF) ヴァンサン・デュリュック (講談社)☆☆☆★

 

レ・ブルー黒書――フランス代表はなぜ崩壊したか

レ・ブルー黒書――フランス代表はなぜ崩壊したか

 

 

副題に「フランス代表はなぜ崩壊したか」とあるように、本書はワールドカップ南アフリカ大会における、フランスチーム(レ・ブルー)の内紛(アネルカが監督ドメネクに暴言を吐き、追放処分。それに対して選手達は練習をボイコット。結果フランスは一次予選敗退)のレキップ誌の名物記者による詳細なレポート。

ということで、期待したのだが、正直これがフランス流なのか、持って回った表現、なかなかはっきり書かない晦渋な文章、等々読みづらくてしょうがなかった。もちろん、日本のサッカージャーナリズムの不毛に比べれば、うらやましいとは言えるのだが。

しかし、著者が批判するメンバーの名前を見れば、そもそもフランスチームにかつての力がないのは明らか。やはり、ここはカペッロとまでは言わないが、ドメネクのリーダーシップ不足をもっと攻めるべきではないか、と思ってしまうのだが。(それにしても、やっぱりギャラスは頼りなく、ナスリは悪童だなあ)