2016年 12月に読んだ本

●7567 池上彰の戦争を考える (企画) (角川書) ☆☆☆★

 

池上彰の戦争を考える

池上彰の戦争を考える

 

 

写真を豊富に使ったムック本。そういえば、ボスニア等々内容のいくつかは、テレビ東京の特集で観ていて、池上の硬派の部分が感じられる良い企画だった。ただ、こうやって本にした場合、本書のテーマである太平洋戦争に関しては、だいたい90%は知っている内容なので、面白かったとはさすがに言えない。

しかし、知識の整理=復習にはなったし、何よりたぶん池上がターゲットとしている若者へのメッセージとしては、偏向が少なく、ビジュアルをうまく使った良書だと思う。

 ●7568 女のいない男たち (フィクション) 村上春樹 (文春社) ☆☆☆☆★

 

女のいない男たち

女のいない男たち

 

 

前作「多崎つくる」が、イマイチの内容だったうえに、文芸春秋連載時のタバコ事件でミソをつけてしまった?ので、ずっと読まずにいたんだけれど、文庫本になったので買おうと思ったら、ブックオフで380円で見つけてしまった。

で、冒頭の「ドライブ・マイ・カー」を読んで、良いではないか!とうなってしまった。文体が引き締まっていて、一気に引き込まれた。そして「イエスタディ」と「独立器官」。この三作には、奇妙なしかし存在感のある三人の女性と、三人の男性(主人公)が登場し、それぞれ人物造形もシチュエーションも全く違うのだが、間違いなく地下の奥深いところでつながっている。「ノルウェイ」の「アフターダーク」バージョンというか。喪失というより、欠落の方がしっくりくる物語たちだ。

そして、次の「シェラザード」は、掲載紙もモンキーに変わり、ファンタジー要素が強くなる。さらに、問題の「木野」。これが本作品集における「かえる君」にあたる、奇妙なオカルティック小説だが、今回は特に怖い。そして、最後に短い書下ろしの表題作。まるで、あとがきのような。

というわけで、読み終えて思うのは、本書は村上が明確に、サージェントペパーのように、コンセプトアルバムとして、短編作品を書き、意図的に並べた短編集だと感じる。そして、それは見事に成功し、ひとつひとつは特別つながりがないのに(時々登場人物がかぶる)喪失と欠落をかかえて生きていかなければならない、村上ワールドが見事に描き出されてる。

 

 ●7569 オールド・テロリスト (フィクション) 村上龍 (文春社) ☆☆☆★

 

オールド・テロリスト

オールド・テロリスト

 

 

両村上を狙ったわけではないのだが、ひょんな拍子で、本書を読んでいないことに気づき、ネットの評価も高く、図書館ですぐ手に入ったので読みだした。というのも、本書の主人公が、あの「希望の国エクソダス」のルポライターだ、というのが気になったからだ。村上龍も春樹ほどではないが(「限りなく」を読んでないのだが)ある時期までは、リアルタイムタイムでかなり追っかけてきた。

(今、勘定したら、小説=長編・短編集53冊中24冊を読んでいた。70年代の「コインロッカー」80年代の「愛と幻想」、90年代の「イビサ」と時代を象徴する傑作を書いてきた、と20世紀は思っていた)

物語はあの「昭和歌謡大全集」&「半島を出でよ」のテロリストたち?がシリアスかつ老人として甦り、それを「トパーズ」的キャラ&文体で描いた、という確かに龍にしか書けない、不気味な傑作である。

ただし、四年も連載したせいか、中盤が必要以上に長くなってしまい、テロより「トパーズ」的な人々の物語が悪目立ちして、疲れてしまった。たぶん、この半分の長さで十分だったと思う。惜しい。残念な作品。

 

●7570 本格力 (企画) 喜国政彦&国樹由香 (講談社) ☆☆☆☆★

 

本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド

本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド

 

 

マンネリ気味だったとはいえ、本棚探偵シリーズが終了したのは、残念だった。と思っていたら、こんな分厚い夫婦合作?が届いた。

内容は雑誌メフィストの連載で、マンガも含めていくつかのパターンがあるのだが、メインはH1グランプリと名打った書評で、マニアの坂東善博士(喜国?)と素人高校生りこ(国樹?)の二人が本格古典ミステリを、毎回テーマに沿って数冊本音で書評するというもので、27回も続く。で、本格古典(しかも海外)というのがミソで、正直◎はめったにでない。

褒めるか無視するしかない、現在の書評状況で、きちんと欠点を書く、ということがいかに重要か再確認した。最近古典を見直している僕も、やはり幻の名作に傑作なし、という地点にもう一度戻るのか?と思ったのだが、これは海外本格古典としたのが悪い。これだけの辛気臭い古典を読み通した二人に拍手。

ただ、このパターンはまったときは、最高に面白く、クイーンやカーの回は楽しく読んだ。素人のりこの評価が結構鋭い。「三つの棺」など全く同感。残念なのは、やはりこれだけ長くやるならば、国内本格(正史や鮎川哲也土屋隆夫などぜひ今からでもやってほしい)や、海外の本格以外や、最近の本格もやってほしかった。で、最高なのは、あいだみつおならぬ、みすおの、だってほんかくだもの。これはもう、脱力して笑うしかない。

 

●7571 知られざる出版「裏面」史 (インタビュー)元木昌彦(出版人)☆☆☆☆
 

 

ネットでよく見かける、こわもての元週刊現代編集長の、雑誌メディアを作ってき13人へのロングインタビューだが、僕は花田紀凱末井昭、井家上隆幸、の三人しか知らなかった。全員が団塊の世代以上で、ちょっと僕には古くて解らないことが多々あった。(一番驚いたのが、末井と坪内の元妻との不倫事件。どう考えても坪内の方が若くていい男なのに・・・・)

で、内容は古き良き時代の雑誌梁山泊物語と、やっぱり出てくる左翼・ゲバルト&人事抗争物語で、後者は光文社のノンフィクションの時もそだったけど、疲れてしまう。本当に面倒くさい。もちろん、雑誌の裏側は面白いのだけど、もはやこんな時代はこないでしょう。

しかし、団塊の世代の引退が日刊紙を壊滅状態に追いやり、キオスクもまた次々姿を消す。これは、まさにリアルな出来事であり、これが次は雑誌、書籍まで行くのだろうか?

 

●7572 生産性 (ビジネス) 伊賀泰代 (ダイヤ) ☆☆☆☆

 

 

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

 

 

「採用基準」は、リーダーシップの本であり、その続編?は「生産性」とは、さすがに著者は目の付け所がいい。日本の誇る生産性は、工場=現場における生産性であり、その結果、生産性=アウトプット/インプットの分母=コスト削減になってしまっていることへの警鐘は、鋭いと感じる。

確かに工場の段階で、クリエイティブなアウトプット向上などは不可能であり、自然に生産性をあげるためには、無駄なコスト削減が歩留りの向上に向かう。しかし、それでは本当の生産性向上にはならないのだ。

生産性をあげると効率を追い、クリエイティビティーがなくなる、のではなく、リスクをとって、圧倒的なアウトプットを実現できたとき、生産性がマックスになるのである。しかしマッキンゼーはPPTのプレゼンは禁止で、会議メンバーはPPTを読むだけで、発表者の説明なしで、いきなり議論に入る、というのには驚いた。

 

●7573 悪魔を憐れむ (ミステリ) 西澤保彦 (幻冬舎) ☆☆☆☆★ 
 
悪魔を憐れむ (幻冬舎単行本)

悪魔を憐れむ (幻冬舎単行本)

 

 

 年末ぎりぎりに、なんとあのタック&タカチシリーズの新刊(短編集)が届いた。世の中では、2012年の「身代わり」以来の新作と騒がれているが、個人的には再読も含めて12年に「西澤祭り」をやったので、ある程度この長いシリーズのストーリーは頭に入っていて、西澤の凄さを堪能した。というか、最近では腕貫探偵の方が目立っているが、やはり西澤の原点はこのシリーズだな、と再確認した。中編、短編がそれぞれ二編、合計四編が収められているが、特に中編が両方とも素晴らしいでき。


もうベスト10は終わってしまったが、個人的には「真実の10メートル手前」を抜いて、本書が国内ミステリの今年のベスト。今のところは。冒頭の「無間呪縛」は、オカルティックな事件の、機械トリックをレッドヘリングとしながら、恐ろしい結末へと読者を導く。これこそ、究極のプロバビリティーの犯罪であり、本作のベストの出来。素晴らしい。

もちろん、ある人物の狂気のような執着や、結末のある人物のもうひとつの貌、などはまさに黒西澤全開で、良く考えるとありえないだろう、となるのだが、ここは西澤ワールドだから、仕方がない。素晴らしくキャラが立っていて、素晴らしく論理的で(論理のアクロバット)素晴らしくダークなのは、四作品とも共通しているが、本編はやはりベスト。

とは言っても、次の表題作も冒頭のショッキングな事件から、こんな無茶苦茶な事件が最終的に見事に論理的に解かれるカタルシスも、遜色なく素晴らしい。ここでも先の3つの特徴は健在だが、この中編二作は、こ のところのシリーズのテーマ(それはタック&タカチの親子関係に顕著)抑圧・束縛・操作からの解放・暴発が、通奏低音として流れていて、かなりいたい。続く短編「意匠の切断」は奇抜な動機は、ある程度予想がついたし、偶然の連続がやや気になるが、これまた素晴らしくダークなのに論理的だ。

そして、やっとボアン先輩が登場する最後の「死は天秤にかけられて」は、お得意の「九マイル」パターンの掛け合いで、これまたダーク&ロジカルで感心してしまう。以上、四編で下手な長編数冊分のミステリ要素がてんこ盛りで詰め込まれていて、個人的には満点でいいのだが、まあ西澤ワールド内でしか許されないだろう点も、正直かなりあるので、この採点とした。でも本書は傑作だ。西澤、恐るべし。

 

●7574 いまさら翼といわれても (ミステリ) 米澤穂信 (角川書)☆☆☆☆★
 

 

で、その「真実」に続く米澤の新刊は、これまた2010年の「ふたりの距離の概算」に続く古典部シリーズの短編集だった。その間に米澤は「満願」(これは僕は評価しないが)「王とサーカス」「真実の10メートル」と三年連続ホームランをかっとばし、まさに日本ミステリの名実ともにナンバーワンに躍り出てしまった。

だのに、まだラノベシリーズを続けるのか、とも感じたのだが、冒頭こそその大人の文体に戸惑ったが、内容はやはり西澤と同じく素晴らしかった。キャラが立ち、論理的で、西澤ほどではないが、作品によっては子供なりにかなりダークで面倒くさい。

結論から言うと「鏡には映らない」がミステリとしてベスト。過去の事件が、あるきっかけでネガとポジが見事に反転し、恐ろしい真実が浮かび上がる。それが、奉太郎の性格と結びついているところがミソ。ここで描かれるダークさは、西澤と違ってリアルでありえるのが怖い。

冒頭の「箱の中の欠落」と「連邦は晴れているか」は、ともに日常の謎。前者は論理はなかなかだが、ホワイ?が描かれていないのが弱い。(まあ、潔いとも言えるが)後者も悪くないのだが、最後の説明が解りにくい。もっとスパッとやれないか。

しかし、それでも米澤が初期に古典部や小市民シリーズで繰り返した、かなりへたくそな日常の謎(あ「さよなら妖精」もそうだった)よりは、格段にレベルが上がっている。成長したのは、文体だけではないのだ。

あと「わたしたちの伝説の一冊」は、伊原の漫画にかける情熱を描いて、読ませるが、正直ここでのダークな部活の覇権争いは、大人の目からは読むに堪えない。面倒くさい。

個人的には、ミステリとは言えないが、奉太郎の省エネスタイルを形作った、過去の事件を描いた「長い休日」と、それと絶妙につながる、千反田えるを描いた表題作の、ラスト二連発が素晴らしかった。もちろん著者はそこを狙っているのだろうが。

しかも、後者のラストは、リドルストーリーになっていて、千反田の将来については、判断を保留のまま、本書は閉じられてしまう。ネットでは、批判が多いが、ここはいきなり結論はダメだと思う。作者の計算勝ち。

というわけで、どうやら古典部はまだまだ続きそうだが、もう一方の小市民シリーズは、ついに冬が「ミステリーズ」に連載ということだが、どうも冬ではなく、番外編のよう。(雑誌が本屋で全然見つからない)ということは、米澤先生らしく、トップになっても、初心忘れるべからず、とふたつのシリーズは続けるようだ。こうなったら、あとは東川の烏賊川市シリーズの新刊が読みたいぞ!

 

●7575 沈黙法廷 (ミステリ) 佐々木譲 (新潮社) ☆☆☆☆

 

沈黙法廷

沈黙法廷

 

 

表紙は、宮部の「ソロモンの偽証」を思わせる重厚さだが、内容はある不幸な女性を描いて、作者名を隠せば、薬丸か葉真中の新刊、と言った方がぴったりくる。まあ、これは書いてもいいだろうが、最後まで内面をきちんと描写されないヒロインは、木嶋某がモデルのように見えるが、それが微妙にずれてくるのがミソ。

被疑者の元恋人、警察、検察、弁護士、マスコミ、さまざまな視点から彼女が描かれることで、彼女の存在が矛盾だらけに見えてくるのに、人間の弱さと本能的な正義感を勘案すると、この矛盾こそが真実に見えてくるのが、素晴らしい。どこまで、作者が計算したのかわからないが、はっきりせず、整合性がないこと自体が、リアルであり、その結果ワーキングプアやマスコミのひどい実態、何よりも老齢の小金持ちの独身男性の、情けなさと気持ち悪さ、が見事に炙り出されている。

惜しいのは、新聞連載ということもあったのか、裁判小説の限界か、中盤(法廷シーン)に繰り返しが多く、必要以上に長くなってしまった点。そして、それに反してラスト数ページでバタバタと片がついてしまう真犯人、ある人物の中途半端な描き方、さらに主人公とヒロインの愛の成就(まあこれはエンタメだから許せるけど)。

というわけで、冷静に考えると、かなり欠点の多い作品だが、舞台が何と赤羽と浦和ということもあり、臨場感溢れて一気に読まされたこともあり、このちょっと甘い採点となった。あと、検察の見込み捜査の怖さも、痛感させられた。

 

●7576 小松左京さんと日本沈没 秘書物語(エッセイ)乙部順子(産経新)☆☆☆

 

小松左京さんと日本沈没 秘書物語

小松左京さんと日本沈没 秘書物語

 

 

小松左京の数々の追悼本において、何度も言及、登場したのが左京の秘書?の著者であり、ずっと記憶に残っていたので、本書が発売されすぐに手に取ったが、正直内容は全然ピンとこなかった。

まあ、推測だが著者はSFの人ではないのだよね、たぶん。まあ、そこが左京の大きさであり、結局腰が定まらなかった理由だろうが。さて、年末年始、ついに「日本沈没」を読んでみようかと図書館で借りてきた。やはり、普通の人にとって、小松左京は沈没の人なんだろうか?

 

●7577 セイレーンの懺悔 (ミステリ) 中山七里 (小学館) ☆☆☆

 

セイレーンの懺悔

セイレーンの懺悔

 

 

このミス大賞出身の作家のツートップとして、著者と柚月を追いかけてきたが、二人とも量産しすぎて難しいところまできてしまった。で、何とか柚月は乗り越えられそうだが(本の雑誌の17年ベストが「慈雨」というのには驚いた。柚月を選ぶなら「あしたの君へ」の方でしょう。まあ、ミステリではないが。本の雑誌編集部には、ミステリが解っている人がいないなあ)中山は、もうあきらめました。

そうは言っても、量産で鍛えられたのか、中山の筆は冴えて、偽装誘拐事件のニュースショーの大誤報を、TVクルーの立場からグイグイ読ませる。ここだけなら、本城のブンヤものと並ぶリアリティーと迫力だ。ただし、そのマスコミ=大衆批判はリアルではあるが底が浅く、結局、主人公もヒロインも、何をも解決できないのだが。

で、どんでん返しの王様としては、やはり最後でひっくり返すのだが、まあこれが安易というか、偶然と言うか。意外性のための意外性であり、学生やヤンキーたち、被害者の家族や近所の人々、そしてマスコミ、弁護士、さらに何より事件を消費尽くす大衆たち。この小説に出てくる人々の汚さに、いやになってしまう。愚か者には、神々自身も勝てない、はアシモフだったっけ。

 

 ●7578 ぼくのミステリ・クロニクル(エッセイ)戸川安宣(国書刊)☆☆☆☆☆

 

ぼくのミステリ・クロニクル

ぼくのミステリ・クロニクル

 

 

読んでいて、胸が締め付けられた。これは、希代の名編集者の語りおろしクロニクルであると同時に、ほとんど同じ時代を生きた、ひとりのミステリマニアとしての、僕の歴史と見事に重なってしまうのだ。

宇山、戸川が新本格というか、日本ミステリのツートップであったことは間違いなく、たぶん早川ではなく、創元推理文庫からスタートした僕にとって、一番影響が大きかったのは、戸川(とかつては厚木淳)であったのだ、と再確認した。

無名の北村薫の企画の、日本探偵小説全集。鮎川哲也と13の謎と有栖川有栖のデビュー。SRの会で会った時から目立っていた、天才松浦正人。そして、鎌倉でお会いした、鮎川先生と戸川氏(北村薫山口雅也我孫子武丸麻耶雄嵩、等々)何もかもがなつかしい。

こんな本を読んでしまうと、あったかもしれないもうひとつの人生を、どうしても夢想してしまう。(個人的には、有栖川有栖と岩崎正吾の軋轢が興味深く、また鮎川哲也の奇妙な結婚生活と、ある意味悲惨な晩年には驚かされた。さらに都筑の挿話ときたら・・・こんなの書いていいの?)

 

●7579 重要事件で振り返る戦後日本史 (歴史)佐々淳行(SB新)☆☆☆★
 

 

じつは「私を通り過ぎた政治家たち」「マンドンナたち」を先に読みだしたのだが、両方とも途中で投げ出してしまった。よく考えれば、○○は素晴らしい。●●はとんでもない野郎、のレベルの(内容の薄い)話を延々聞かされても、全然面白くない。ただ、本書は戦後史のおさらいにはなった。まあ、相変らず最近の佐々は自慢話が多すぎるのだが。最後のオオム事件での、日野原と江川紹子の勇気には感心したが。

 

●7580 メフィストの漫画 (企画) 喜国政彦&国樹由香講談社)☆☆☆☆★
 
メフィストの漫画 (講談社文庫)
 

 

いやあ、こういう作品まで文庫化されてしまった。内容の7割は漫画です。しかし、内容はマニアにはたまらない。(大森も書いているが、有栖川有栖をはじめ、実在の登場人物が、ちょっとかわいすぎるが)とにかく、対談で山口が書いているように、喜国のネタは濃すぎる。数ページの漫画にネタを詰め込みすぎ。クラクラきてしまう。

で、解説で大森が言うように、これってSFファンにおける「不条理日記」だったのか。あまりにも画風が違うので、気が付かなかったけれど、そういわれればそうかもしれない。あと、吾妻には古本ネタはなかったような・・・あ、決定的な違いは、吾妻は説明しないところか。まあ、これはSFとミステリの本質の違いかもしれないけど。

 

●7581 天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトと PART2 (SF) 小川一水 (早川文)☆☆☆☆

 

 

ついに全10巻の9巻まできた。しかし、最終巻「青葉よ、豊かなれ」の刊行は何と18年とのこと。来年はなし。というわけで(今回もかなり遅れて、内容を思いだすのに手間取ったが)来年末は、今までの再読にあてて、最終巻(そうはいっても、たぶん数冊になるんだろうが)に備えたいと思う。

既に刊行7年目を迎えた本シリーズは、個人的には間違いなく、国内SFオールタイムベストである。この先、どんな結末がまっていても、それは変わらない。Ⅷ新世界ハーブCで明かされた、この世界の正体=Ⅰメニーメニーシープのラストのとんでもない謎の完璧な解明、だけでおなか一杯である。

ただ、本書だけを評価すると、セアキとイサリの思いは分かるし、そこに作者のメッセージがあることも解るのだが、人間?はそんなに簡単に恐怖と怨念を超えることができるのだろうか、と感じてしまう。そして、ラストの新展開、いまさら必要だろうか?(ひょっとしたら、カルミアンの正体?)ここは、ミスチフで十分ではないだろうか。

 

●7582 自生の夢 (SF) 飛 浩隆 (河出新) ☆☆☆☆★

 

自生の夢

自生の夢

 

 

ひさびさというか、待望の飛の新作は、残念がら廃園の天使ではなく、NOVA等々に書いた短編を集めたものだった。

が、冒頭の「海の指」で頭を張り飛ばされた。何だ!これは?やはり、ものが違う。何という、異形で壊れたイメージだ。それでいて、リアルに恐ろしく、かつまたなぜか懐かしい。ハムカツに参ってしまった。何だ、このイメージの氾濫は。諸星大二郎つげ義春山本直樹、そして電脳コイル。ゴルディアスの結び目。ソラリス。いや、もう凄いとしか言いようがない。

そして、表題作を中心とした<忌字禍>の連作は、正直良く解らない部分も多いのだが、モチーフは虐殺器官であり、ストーリー展開は「あなたの人生の物語」「ゴルディアス」等々を思わせた。その他「星窓」や「はるかな響き」など、小松左京が書きそうな、ハードなアイディアSFなのだが、飛の表現は圧倒的に新しいのだ。まあ、だから量産が効かないのだろうが。

今年のSFは、「夢見る葦笛」がダントツのベストと思っていたのだが、上田には申し訳ないが、相手が悪かった。作品の平均値や解り易さ(葦笛も決して解り易い、単純な話ではないが)は葦笛の方がはるかに上だが、もうとにかく本書は存在自体が屹立しているのだ。その稀有の世界感は、あの「ラギッドガール」につながっている。

満点にするには、たぶん僕の理解が追い付いてないことがひっかかるだけ。次も何年でも待ちます。自由に書いてください。満足のいく作品を。そういう作家がいるだけで、素晴らしい。

 

●7583 ヤマンタカ 大菩薩峠血風録 (伝奇小説) 夢枕獏 (角川書)☆☆☆★

 

ヤマンタカ 大菩薩峠血風録

ヤマンタカ 大菩薩峠血風録

 

 

いまさら「大菩薩峠=机竜之助」かよ、という感じであんまり触手が動かなかったのだが、読みだしたら竜之助より、新撰組土方歳三の物語、という感じで、原作がどうなのか知らないが、時代設定は合っていて、そうくるか!と驚いた。(読了後、あとがきで確認する限り、獏が勝手に土方を登場させたみたい)

そうは言っても、ここで描かれる血に飢えた?土方は、司馬の描いた冷徹なオーガナイザーとは真逆のキャラクターで、かなり違和感があるのだが。(まあ、沖田の描き方はもっとひどくて、こりゃファンからかなり文句がでるのでは)

で、内容は武闘大会の剣豪バージョンで、さすが格闘シーンを描かせたら第一人者の獏は読ませるのだが、一方でこのパターン(「餓狼伝」も「獅子の門」も)は、いつの間にかどんどん強さがインフレーションし、「リンかけ」「聖闘士星矢」状態に突入し、いやもう誰が勝とうとどうでもいいよ、と今回もなってしまった。まあ竜之助と土方が生き残るのは、解っているのだし。


もちろん、獏も色々工夫はしているのだが、途中で面倒くさくなってきた。内容的に一番近いのは「妖星伝」かもしれないが、SF要素はないし、新聞連載のせいか描写にも縛り?があって、駄作ではないし、珍しく一巻で終るのだが、やっぱりちょっと冗長に感じる。はやく、キマイラを完結させてください。

 

●7584 英国一家、日本を食べる (NF) マイケル・ブース (亜紀書)☆☆☆

 

英国一家、日本を食べる (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

英国一家、日本を食べる (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

 

 

大ヒットして、続編やアニメなどが続々作られたと記憶しているが、13年の作品で簡単に図書館の棚で見つけた。しかし、内容はそれほどでもない、というか日本食に関しても、日本文化に関しても、かなり底が浅くて、読んでいて退屈だった。

また、ここで、アイヌ差別について語るか?という感じで、かなり自分勝手な印象。一番問題なのは、日本食の描写がちっともおいしそうに感じないこと。まあ、だから英国は、とは言わないでおくが、キャチャーなタイトルと、藍色をフィーチャーしたこれまたキャッチャーな表紙、以外に感心するところはなかった。

 

●7585 松本城、起つ (SF) 六冬和生 (早川J) ☆☆☆

 

松本城、起つ

松本城、起つ

 

 

大森絶賛の歴史改変SFだが、どうにものれなかった。もちろん、あの「みずは無限」
を書いた著者だから、「異星人の郷」のような格調高い作品は望まないが、やっぱり
このラノベ的な文体が合わない。で、今回は作品のキモである、歴史改変のロジック
が正直よく分からない。マーカー(主人公)の意味がよく分からないのだ。

 

●7586 刑罰0号 (SF) 西條奈加 (徳間書) ☆☆☆

 

刑罰0号 (文芸書)

刑罰0号 (文芸書)

 

 

著者は今はなきファンタジー大賞出身だと思うが、どうにも書いてる小説のジャンルがイメージできずに、ずっと読まずに来た。しかし、しぶとく生き残り、本書は本格SF?と評判が高い。

が、読み出してすぐ「ジャッジメント」を思い出した。世間では「代体」と比べられることが多いが、それは技術的なことにすぎず、小説としてのレベルは、遙かに及ばない。正直、冒頭なぜ被爆者の話がでるのか、よく分からなかったが、一応とんでもないラストへの伏線ではあった。

ただ、次の「疑似脳0号」の陳腐さは如何ともしがたく、その後もパターンが繰り返され、飽きてくる。確かに物語は「ジャジメント」的復讐法の物語から、どんどん予想外にエスカレーションするが、いかにも無茶ぶりが多くて、美しくない。

そして、何よりSF的部分、0号の科学的論拠が下手すぎる。たぶん、大森をはじめとしたSFプロパーには受けないだろうし、本書はそうあるべきだと思う。ネットの評価は結構高いが。

 

●7587 モネのあしあと (芸術) 原田マハ (幻冬新) ☆☆☆☆

 

 

副題:私の印象派鑑賞術。題名からわかるように、「ジヴェルニーの食卓」の裏話のような内容で、小説と重なる部分も多いし、一方ではある程度の知識がないと読みこなせない。正直、「ジヴェルニーの食卓」を呼んでいない人には、どうかと思う。

ただ、短い新書なのに、ふんだんに写真(絵画&風景)を使っているので、いちいちネ
ットで確認せずにすむ。まあ、個人的には結構楽しんでしまったので、この評価。できれば、残りの三篇も補足して一冊にしてもらいたかったけれど。

 

●7588 新・リーダー論 (政治経済) 池上彰佐藤優 (文春新)☆☆☆☆★

 

 

副題:大格差時代のインテリジェンス。この対談も三冊目だが、調子が出てきた、というか、大統領選に関しては池上も詳しく、内容がかみ合ってきた。たぶん、収録自体はトランプ勝利が確定する前だろうから、内容はかなり修正がかかっていると思う。


それでも、佐藤はトランプの勝利をかなりの確率で見込んでいたのではないか、と思わざるを得ない内容だ。佐藤の博覧強記には驚くしかないのだが、一方では相変わらず胡散臭さも抜けず、なんでこんなに自信を持って言い切れるんだろう、と鼻白んでしまうことも多かった。しかし、今回は脱帽である。

「トランプが大統領になった場合注目すべきなのは、新政権がどういう諮問会議を作るかです。大統領に直結して、議会での手続きが不要で、いわばまったく無責任な立場で参加できるのが諮問会議。この会議のメンバーに誰がなるか」

「少々乱暴に米国をWASPが支配する国と考えた場合、WASPが共和党に自分たちの利益を代表させようとしても、ラティーノや黒人の支持が得られないから、選挙では絶対に勝てない。かといって、民主党の政策も受け入れがたい。するとWASPにとって、誰が大統領になっても自分たちの利益を確保する方法、民主的な手続きを得ない迂回路をつくっておくことが重要になります」

「その意味で、トランプは非常に便利な存在です」こんな説得力のある陰謀論?を初めて読んだ。怖い。

 

●7589 エラリー・クイーン 推理の芸術 (評論) フランシス・M・ネヴィンズ (国書刊) ☆☆☆☆☆

 

エラリー・クイーン 推理の芸術

エラリー・クイーン 推理の芸術

 

 

かつて、本書の原型である「エラリー・クイーンの世界」を読んだ時は(当時はジュニアがついていた)今の米国にも、クイーン=本格パズラーの研究者がいるんだ、とうれしかったが、内容は驚くものではなかったのか、あまり覚えていない。(あのバールストン・ギャンビットも後で気づいた)まあ、当時の僕は、後期の作品の本質が理解できていなかったのが問題だったのだろうが。

そして、本書はその新訳かと思っていたのだが、良い意味で完膚なまでに裏切られた。クイーン信者にとっては、何と熱く、痛く、衝撃的な本だろうか。それは、「世界」ではまだ生存していたダネイに気を使ったのと、著者のつきあいの度合から、リーの記述が非常に少なかったのだが、前者はダネイもなくなり、後者はリーとバウチャーの大量の書簡がオープンになったことで、劇的に変わってしまった。

そして、クイーン信者にとっての最大の試練、汚点であった、代作問題=大量のペーパーバックオリジナルの真相が、ついに明かされたのである。それは、単純な金儲けではなく、その本質は痛切であった。基本的に後期において、リーとダネイのコンビは、実質的に既に解消されていたのだ。その文学観の違いにおいて。

繰り返される口論。争い。そして、各自(特にリー。ダネイにはEQMMがあった)が色んな試み=従来のエラリー・クイーン・コンビ以外の試みを、勝手に繰り返した。これが、代作問題の本質だったのだ。エラリー・クイーンは既に崩壊していた。信者にとってはつらいが、残念ながらそれが真実なのだ。

しかし、晩年「顔」「最後の女」「心地よく秘密めいた場所」において、コンビは復活した。のだがリーには、すでに時間は残されておらず、「間違いの悲劇」はダネイのシノプシスのまま残され、誰の代作の原案ともならなかった。(ということは、代作はスランプに落ち込んだリーが主導したのだ)ああ、何と真摯かつ痛切な福音書だろう。本書は。

 

●7590 花の下にて春死なむ (ミステリ) 北森 鴻 (講談文) ☆☆☆☆

 

花の下にて春死なむ (講談社文庫)

花の下にて春死なむ (講談社文庫)

 

 

年末、「突変」の続編や、宮部の短編集、大阪城を描いた歴史小説集、等々全部投げ出してしまい、結局北森の「香菜里屋」シリーズを読み始めた。かつて、書いたように僕は本書を米国行きの飛行機の中で読んで感心した。しかし、本屋で「香菜里屋を知っていますか」という短編集を見つけてしまい、本書とごっちゃになっていた。

それがきちんと調べれば、本書、「桜宵」「蛍坂」「香菜里屋」の四冊が、同じお店と
主人公=工藤のシリーズであることに気づき、さらに驚くべきことに、予約なしで四冊とも図書館で入手できたのだ。そして、著者の急逝によって、シリーズはこれ以上書かれることはない。

本書は上記のように「香菜里屋」を舞台に、マスターの工藤が常連客たちの不思議な物語を、安楽椅子探偵として解決する、という「黒後家蜘蛛の会」のパターンを踏襲しているのだが、お客が常に同じでも別でもなく、ゆるやかにつながっている点と、ストーリー展開がワンパターンを避けるようにかなり工夫されている点と、何より謎の複雑さ、解決のひねりが本家を凌駕している。

もうひとつの魅力である料理のレシピと描写に関しては、本家はどうだったのか、あんまり記憶がない。

で、第一作が表題作(協会賞受賞)であり、これが本書のラストの「魚の交わり」とリンクしてザ・ウォール的展開となるが、個人的には後者の方が、悲惨ではあるが気に入った。正史のある作品を彷彿させるラスト。ともに評価はAー。

次の「家族写真」は、題材はいいがちょっと論理の展開が弱いというか隙がある。基本このシリーズは駄作が少ないのだが、驚くべきトリックもなく、論理のアクロバットが勝負なのだが、結構そこに隙がある作品も多い。B+。

そして、本書の最高傑作「終の棲み家」。シンプルだからこそ、美しい。A。「殺人者の赤い手」は、子供の都市伝説を使っているが、少しひねりすぎ。ラスト、いまいちぴんとこない。B+。

「七皿は多すぎる」は、題名はケメルマンなので、西澤テイストの強いこのシリーズだから、頑張ってはいるんだけれど、ちょっと複雑すぎる、まさに西澤的作品。B+。

 

●7591 桜 宵 (ミステリ) 北森 鴻 (講談社) ☆☆☆★

 

桜宵 (講談社文庫)

桜宵 (講談社文庫)

 

 

冒頭の「十五周年」が、前作と同じく最終話の「約束」とつながる構成を今回もとっているのだが、それほど成功していない。前者は、面白いがちょっと無茶ぶりだし、後者は北森にしては、ダークすぎて好みではない。評価は両方B+。

次の表題作は、ある植物の特殊性に目をつけた刑事の妻の行動が恐ろしい、はずなのに、西澤と違って北森は暖かい物語にしてしまい、それがいいのか悪いのか微妙。途中、民俗学の先生とやらの話がでてくるのが、ご愛敬。B+。

「犬のお告げ」題名はチェスタトンだが、内容は何とリストラがらみで、これまたかなり無茶なストーリー。B+。「旅人の真実」これも必要以上にひねりすぎて、わかりにくくなっている。工藤の親友兼ライバルの香月登場。

というわけで、このシリーズ特徴である、適度に論理的で、キャラが立っていて、読ませるが、駄作もない代わりに、突出した傑作もない、という典型的な作品集。また、論理、キャラ、料理(酒)とくると、まさに西澤テーストなのだが、北森の場合、そこまでダークにはなれないのが、特徴を弱めているのかもしれないなあ。

 

 ●7592 蛍 坂 (ミステリ) 北森 鴻 (講談社) ☆☆☆★

 

螢坂 (講談社文庫)

螢坂 (講談社文庫)

 

 

シリーズものの宿命というか、やはり三冊目となると、ミステリとしては弱くなる。冒頭の表題作の仕掛けも、残念ながら陳腐としか言い様がない。B。「猫に恩返し」は、前半のネコの物語が面白いが、後半はちょっと無理筋。B+。「雪待ち人」は、珍しくダークだけれど、偶然すぎる。B。

「双貌」は、何と記述トリックを使っていて、きれいに決まったとは言いがたいが、ミステリ的には一番。Aー。「狐拳」は妙に複雑にねじれていて、好みではない。B。

ということで、一冊ごとにミステリとしての評価は下がるのだが、一方ではキャラになじみが出てきて、読むのに苦痛はないので、せっかくだから四作制覇しよう。評価はミステリとしては、ワンランク落ちることを容赦ください。

 

●7593 香奈里屋を知っていますか (ミステリ) 北森 鴻 (講談社)☆☆☆

 

香菜里屋を知っていますか (講談社文庫)
 

 

「ラストマティーニ」老バーテンダーの失敗の理由は、意外ではなく、可もなく不可もない出来。B。「プレジール」ミステリとしてはとりえはないが、ある主要キャラクタ
ー三人の結婚の話であって、読んでしまうしかない。B。

「背表紙の友」古本にまつわる犯罪?に関しては、まあ面白いが、その後の展開はちょっと偶然すぎる。B+。「終幕の風景」これはちょっと解決がないので評価できない。で、ラスト書き下ろしの表題作。

個人的には、必ず「メインディッシュ」のネコがでてくる(工藤はイヌといつも描写されるし)と思ったのだが、何と蓮丈那智と冬狐堂がでてくるとは驚きだが、それが全然落ちてないのには、逆にあきれて驚いてしまった。残念なラスト。

 

●7594 800年後に会いに行く (SF) 河合莞爾 (幻冬舎) ☆☆☆☆★

 

800年後に会いにいく

800年後に会いにいく

 

 

期待していた香菜里屋四部作が、残念ながら盛り下がってしまったのだが、16年の最後の最後に、期待以上の大傑作にあたり、少し幸せな気分。著者は横溝賞出身のミステリ作家だが、確か二冊くらい読んで、あまりのミステリ音痴に嫌気がさして、読まなったのだが、不思議と毎回印象的なシーンがあり、そうか本書のようにSF仕立てにすれば、著者の長所が生きるんだ、と納得した。

本書の魅力は3つある。ひとつはタイムトラベル(のように見せかけた?)800年未来のパンデミックで滅びかけている地球(のメイという少女)と主人公旅人との、地球を救うためのやりとり。(少しインチキ臭いが)

そして、次が科学的蘊蓄であって、進化論に関する色んな説や、自由意志=人間には意志や感情はなく、反応に脳=心が後付けで理由を与える、という有名なリベットの実験。さらには、それをAIの心の発生と結びつける豪腕。等々、僕好みの蘊蓄が相次ぐのだ。

そして、最後にあまりにも平凡かつ素直な主人公と天才ヒロイン=マリアのベタな恋愛小説。

読み終えて、満足のため息をついたのだが、ネット時代の悪いところで、本を読む前と後で、ついネットを確認して反省会を実施してしまう。そうすると、もちろん肯定的意見が多いのだが、なるほど、と思う欠点も多々見えてきて、最初は満点だったのだが、この評価となった。

まず、壮大なストーリーのわりには、やたら登場人物が少なく(セカイ系のバリエーション?)物語世界に緻密なリアリティーが感じられない。また、登場人物も旅人こそ意図的だが、その他の人物造形もラノベ的に底が浅い。

「セブン・トランペッツ」というテロにある人物がかかわるのも、説得力がない。最後に、これは長所かもしれないが、キーとなる伏線がわかりやすいのだ。マリアがあることを事前に知っていたり、PCの電源を抜くと、ウィンドウズがストップしたり。(するわけがない)

いや、それでも本書を読んでいる間、僕は幸せだった。ただ、冷静に考えると、本書を飛や上田の上位に置くことはありえない。またSF的な考証は、正直心許ない。ということで、ミステリ扱いし、「虹を待つ彼女」の上に置くと、とてもしっくりきた。

2016年は以上、226冊でした。

 

 

 

 

 

 

 

古典(20世紀)ミステリベスト(国内ジャンル別①ー⑦)

①本格パズラー

 

●黒いトランク

 

●影の告発

 

●獄門島

獄門島 (角川文庫)

獄門島 (角川文庫)

 

 

●招かれざる客

招かれざる客―笹沢左保コレクション (光文社文庫)

招かれざる客―笹沢左保コレクション (光文社文庫)

 

 

匣の中の失楽

新装版 匣の中の失楽 (講談社文庫)

新装版 匣の中の失楽 (講談社文庫)

 

 

●乱れからくり

乱れからくり (創元推理文庫)

乱れからくり (創元推理文庫)

 

 

 

●サマーアポカリプス

サマー・アポカリプス (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

サマー・アポカリプス (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

 

 

占星術殺人事件

 

 

●双頭の悪魔

双頭の悪魔 (創元推理文庫)

双頭の悪魔 (創元推理文庫)

 

 

人狼城の恐怖

 

次、時計館の殺人

 

次、金雀枝荘の殺人

金雀枝荘の殺人 (中公文庫)

金雀枝荘の殺人 (中公文庫)

 

 

 

②サスペンス・犯罪小説

 

大いなる幻影

大いなる幻影 (講談社文庫 と 3-1)

大いなる幻影 (講談社文庫 と 3-1)

 

 

●異郷の帆

異郷の帆 (傑作時代小説叢書)

異郷の帆 (傑作時代小説叢書)

 

 

●99%の誘拐

99%の誘拐 (講談社文庫)

99%の誘拐 (講談社文庫)

 

 

●頼子のために

頼子のために (講談社文庫)

頼子のために (講談社文庫)

 

 

●悪意

悪意 (講談社文庫)

悪意 (講談社文庫)

 

 

●OUT

OUT 上 (講談社文庫 き 32-3)

OUT 上 (講談社文庫 き 32-3)

 

 

レディ・ジョーカー

レディ・ジョーカー〈上〉 (新潮文庫)

レディ・ジョーカー〈上〉 (新潮文庫)

 

 

バトル・ロワイアル

バトル・ロワイアル 上  幻冬舎文庫 た 18-1

バトル・ロワイアル 上 幻冬舎文庫 た 18-1

 

 

模倣犯

模倣犯1 (新潮文庫)

模倣犯1 (新潮文庫)

 

 

●邪魔

邪魔(上) (講談社文庫)

邪魔(上) (講談社文庫)

 

 

次、永遠の仔

永遠の仔〈1〉再会 (幻冬舎文庫)

永遠の仔〈1〉再会 (幻冬舎文庫)

 

 

 ③ハードボイルド・警察小説

 

●追いつめる

追いつめる (光文社文庫)

追いつめる (光文社文庫)

 

 

●暗い落日

暗い落日 (角川文庫)

暗い落日 (角川文庫)

 

 

●リンゴウ・キッドの休日

THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ

THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ

 

 

●背いて故郷

背いて故郷 (新潮文庫)

背いて故郷 (新潮文庫)

 

 

●逃れの街

逃がれの街 (集英社文庫)

逃がれの街 (集英社文庫)

 

 

●そして夜は甦る

そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501))

そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501))

 

 

ダブルスチール

ダブル・スチール (角川文庫)

ダブル・スチール (角川文庫)

 

 

●毒猿

毒猿 新装版: 新宿鮫2 (光文社文庫)

毒猿 新装版: 新宿鮫2 (光文社文庫)

 

 

●ブルース

ブルース (角川文庫)

ブルース (角川文庫)

 

 

不夜城

不夜城 (角川文庫)

不夜城 (角川文庫)

 

 

次、イコン

イコン 新装版 (講談社文庫)

イコン 新装版 (講談社文庫)

 

 

④冒険小説・スパイ小説・PF

 

●滅びの笛

滅びの笛―長編小説 (1976年)

滅びの笛―長編小説 (1976年)

 

 

喜望峰

喜望峰 (集英社文庫)

喜望峰 (集英社文庫)

 

 

●元首の謀反

元首の謀叛 (上) (文春文庫 (311‐1))
 

 

●ぼくの小さな祖国

ぼくの小さな祖国 (サンケイノベルス)

ぼくの小さな祖国 (サンケイノベルス)

 

 

●山猫の夏

山猫の夏

山猫の夏

 

 

●虎口からの脱出

虎口からの脱出

虎口からの脱出

 

 

●エトロフ発緊急電

エトロフ発緊急電 (新潮文庫)

エトロフ発緊急電 (新潮文庫)

 

 

●海は涸いていた

海は涸いていた (新潮ミステリー倶楽部)

海は涸いていた (新潮ミステリー倶楽部)

 

 

●ホワイト・アウト

ホワイトアウト (新潮ミステリー倶楽部)

ホワイトアウト (新潮ミステリー倶楽部)

 

 

亡国のイージス

亡国のイージス 上 (講談社文庫)

亡国のイージス 上 (講談社文庫)

 

 

次、スリー・アゲーツ

スリー・アゲーツ―三つの瑪瑙

スリー・アゲーツ―三つの瑪瑙

 

 

次、燃える波涛

燃える波涛 (1) (トクマノベルズ)

燃える波涛 (1) (トクマノベルズ)

 

 

 

 ⑤ユーモア・パロディー

 

●虚無への供物

虚無への供物 (講談社文庫)

虚無への供物 (講談社文庫)

 

 

大誘拐

大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫)

大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫)

 

 

●名探偵なんか怖くない

名探偵なんか怖くない (講談社文庫 に 1-2)

名探偵なんか怖くない (講談社文庫 に 1-2)

 

 

●小説・熱海殺人事件

小説 熱海殺人事件―つかこうへい劇場〈1〉 (つかこうへい劇場 (1))

小説 熱海殺人事件―つかこうへい劇場〈1〉 (つかこうへい劇場 (1))

 

 

●幽霊列車

新装版 幽霊列車 (文春文庫)

新装版 幽霊列車 (文春文庫)

 

 

●大統領の晩餐

大統領の晩餐 (角川文庫)

大統領の晩餐 (角川文庫)

 

 

●ぼくと、ぼくらの夏

新装版 ぼくと、ぼくらの夏 (文春文庫)

新装版 ぼくと、ぼくらの夏 (文春文庫)

 

 

●探偵の夏、あるいは悪魔の子守歌

探偵の夏あるいは悪魔の子守唄 (創元推理文庫)

探偵の夏あるいは悪魔の子守唄 (創元推理文庫)

 

 

怪人二十面相

怪人二十面相・伝

怪人二十面相・伝

 

 

●一九三四年冬ー乱歩

一九三四年冬―乱歩 (創元推理文庫)

一九三四年冬―乱歩 (創元推理文庫)

 

 

次、邪馬台国はどこですか?

邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫)

邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫)

 

 

⑥技巧派ミステリ

 

●猫の舌に釘を打て

猫の舌に釘をうて (講談社文庫)

猫の舌に釘をうて (講談社文庫)

 

 

●百舌の叫ぶ夜

百舌の叫ぶ夜

百舌の叫ぶ夜

 

 

●殺戮にいたる病

殺戮にいたる病 (講談社文庫)

殺戮にいたる病 (講談社文庫)

 

 

●生きる屍の死

生ける屍の死

生ける屍の死

 

 

●七回死んだ男

七回死んだ男 (講談社文庫)

七回死んだ男 (講談社文庫)

 

 

●十二人の手紙

十二人の手紙 (中公文庫)

十二人の手紙 (中公文庫)

 

 

●空飛ぶ馬

空飛ぶ馬 (鮎川哲也と十三の謎)

空飛ぶ馬 (鮎川哲也と十三の謎)

 

 

●僕のミステリな日常

ぼくのミステリな日常 (創元推理文庫)

ぼくのミステリな日常 (創元推理文庫)

 

 

●ガラスの麒麟

ガラスの麒麟 (講談社文庫)

ガラスの麒麟 (講談社文庫)

 

 

●しゃべくり探偵

 

次、明治断頭台

 

次、仮題・中学殺人事件

 

 ⑦クロスオーバー

 

ガダラの豚

ガダラの豚〈1〉 (集英社文庫)

ガダラの豚〈1〉 (集英社文庫)

 

 

●リング

 

ハルモニア

ハルモニア (文春文庫)

ハルモニア (文春文庫)

 

 

●Y

Y (ハルキ文庫)

Y (ハルキ文庫)

 

 

●リスクテイカー

リスクテイカー

リスクテイカー

 

 

●山妣

山妣(やまはは)

山妣(やまはは)

 

 

神々の山嶺

神々の山嶺(下) (集英社文庫)

神々の山嶺(下) (集英社文庫)

 

 

血と骨

血と骨(上) (幻冬舎文庫)

血と骨(上) (幻冬舎文庫)

 

 

●三本の矢

三本の矢〈上〉

三本の矢〈上〉

 

 

●欲望

欲望

欲望

 

 

次、鷲の驕り

鷲の驕り

鷲の驕り

 

 

次、オホーツク諜報船

オホーツク諜報船 (現代教養文庫―ベスト・ノンフィクション)

オホーツク諜報船 (現代教養文庫―ベスト・ノンフィクション)

 

 

古典(20世紀)ミステリベスト(海外・ジャンル別①-⑥)

①本格パズラー

●Yの悲劇

Yの悲劇 (角川文庫 ク 19-2)

Yの悲劇 (角川文庫 ク 19-2)

 

 

そして誰もいなくなった

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 

 

●三つの棺

三つの棺〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

三つの棺〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

●僧正殺人事件

僧正殺人事件 (創元推理文庫)

僧正殺人事件 (創元推理文庫)

 

 

●クロイドン発12時30分

クロイドン発12時30分 (創元推理文庫 (106-11))

クロイドン発12時30分 (創元推理文庫 (106-11))

 

 

●帽子から飛び出した死

帽子から飛び出した死 (1957年) (世界推理小説全集〈46巻〉)

帽子から飛び出した死 (1957年) (世界推理小説全集〈46巻〉)

 

 

●緑は危険

緑は危険 (ハヤカワ・ミステリ文庫 57-1)

緑は危険 (ハヤカワ・ミステリ文庫 57-1)

 

 

●ホッグ連続殺人

ホッグ連続殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ホッグ連続殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

●マダムタッソーがお待ちかね

マダム・タッソーがお待ちかね (ハヤカワ・ミステリ文庫)

マダム・タッソーがお待ちかね (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

●骨と沈黙

骨と沈黙 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

骨と沈黙 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

次点 死の蔵書

 

死の蔵書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

死の蔵書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

 

②サスペンス

 

●喪服のランデヴー

喪服のランデヴー (ハヤカワ・ミステリ文庫)

喪服のランデヴー (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

●死の接吻

死の接吻 (ハヤカワ・ミステリ文庫 20-1)

死の接吻 (ハヤカワ・ミステリ文庫 20-1)

 

 

●第八の地獄

第八の地獄 (1976年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

第八の地獄 (1976年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

●狙った獣

狙った獣 (創元推理文庫)

狙った獣 (創元推理文庫)

 

 

●子供たちはどこにいる

子供たちはどこにいる (新潮文庫 ク 4-2)

子供たちはどこにいる (新潮文庫 ク 4-2)

 

 

●恐怖の誕生パーティー

恐怖の誕生パーティ (新潮文庫)

恐怖の誕生パーティ (新潮文庫)

 

 

●ロウフィールド館の惨劇

ロウフィールド館の惨劇 (角川文庫 (5709))

ロウフィールド館の惨劇 (角川文庫 (5709))

 

 

●静寂の叫び

静寂の叫び (Hayakawa novels)

静寂の叫び (Hayakawa novels)

 

 

●音の手がかり

音の手がかり (新潮文庫)

音の手がかり (新潮文庫)

 

 

●秘密の友人

秘密の友人 (角川文庫)

秘密の友人 (角川文庫)

 

 

次点 二人の妻を持つ男

二人の妻をもつ男 (創元推理文庫)

二人の妻をもつ男 (創元推理文庫)

 

 

次点 死者の中から

 

 

③ハードボイルド

 

●血の収穫

血の収穫 (創元推理文庫 130-1)

血の収穫 (創元推理文庫 130-1)

 

 

●長いお別れ

長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))

長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))

 

 

 ●さむけ

さむけ (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-4)

さむけ (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-4)

 

 

郵便配達は二度ベルを鳴らす

郵便配達は二度ベルを鳴らす (光文社古典新訳文庫)

郵便配達は二度ベルを鳴らす (光文社古典新訳文庫)

 

 

●殺しあい

殺しあい (ハヤカワ・ミステリ文庫 24-2)

殺しあい (ハヤカワ・ミステリ文庫 24-2)

 

 

●初秋

初秋 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

初秋 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

 

 

●八百万の死にざま

 

●酔いどれの誇り

 

●源にふれろ

源にふれろ (Hayakawa novels)

源にふれろ (Hayakawa novels)

 

 

●疑り屋のトマス

疑り屋のトマス (ハヤカワ ポケット ミステリ)

疑り屋のトマス (ハヤカワ ポケット ミステリ)

 

 

次点 オールドディック

オールド・ディック (ハヤカワ・ミステリ文庫 90-1)

オールド・ディック (ハヤカワ・ミステリ文庫 90-1)

 

 

④警察小説

 

●笑う警官

笑う警官 (角川文庫 赤 520-2)

笑う警官 (角川文庫 赤 520-2)

 

 

●脱獄九時間目

脱獄九時間目 (創元推理文庫)

脱獄九時間目 (創元推理文庫)

 

 

●夜の熱気の中で

夜の熱気の中で (1967年) (世界ミステリシリーズ)

夜の熱気の中で (1967年) (世界ミステリシリーズ)

 

 

●殺意の楔

殺意の楔 (1960年) (世界ミステリシリーズ)

殺意の楔 (1960年) (世界ミステリシリーズ)

 

 

●事件当夜は雨

事件当夜は雨 (創元推理文庫)

事件当夜は雨 (創元推理文庫)

 

 

パンドラの匣

パンドラの匣 (ハヤカワ・ミステリ 1300)

パンドラの匣 (ハヤカワ・ミステリ 1300)

 

 

●法と秩序

法と秩序 (1978年) (Hayakawa novels)

法と秩序 (1978年) (Hayakawa novels)

 

 

●警察署長

警察署長 (1984年) (Hayakawa novels)

警察署長 (1984年) (Hayakawa novels)

 

 

●熱い街で死んだ少女

熱い街で死んだ少女 (文春文庫)

熱い街で死んだ少女 (文春文庫)

 

 

●クリスマスのフロスト

 

次点 非常線

非常線 (創元推理文庫 155-1)

非常線 (創元推理文庫 155-1)

 

 

⑤犯罪小説・コンゲーム

 

●内なる殺人者

内なる殺人者

内なる殺人者

 

 

●世界をおれのポケットに

世界をおれのポケットに (創元推理文庫)
 

 

●明日に賭ける

明日に賭ける (1959年) (世界ミステリシリーズ)

明日に賭ける (1959年) (世界ミステリシリーズ)

 

 

 ●ザ・400 

ザ・400 (1981年) (海外ベストセラー・シリーズ)

ザ・400 (1981年) (海外ベストセラー・シリーズ)

 

 

●真夜中の相棒

真夜中の相棒 (文春文庫)

真夜中の相棒 (文春文庫)

 

 

●ザ・シシリアン

ザ・シシリアン (ハヤカワ・ノヴェルズ)

ザ・シシリアン (ハヤカワ・ノヴェルズ)

 

 

 

●ディーバ

ディーバ (新潮文庫)

ディーバ (新潮文庫)

 

 

 

シンプルプラン

シンプル・プラン (扶桑社ミステリー)

シンプル・プラン (扶桑社ミステリー)

 

 

●ストーン・シティ

ストーン・シティ〈上〉 (新潮文庫)

ストーン・シティ〈上〉 (新潮文庫)

 

 

次点 百万ドルをとり返せ!

百万ドルをとり返せ! (新潮文庫)

百万ドルをとり返せ! (新潮文庫)

 

 

次点 俺たちの日

俺たちの日 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

俺たちの日 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

⑥技巧派ミステリ

 

●トライアル&エラー(試行錯誤)

試行錯誤 (創元推理文庫)

試行錯誤 (創元推理文庫)

 

 

●殺人交叉点

殺人交叉点 (創元推理文庫)

殺人交叉点 (創元推理文庫)

 

 

●彼の名は死

 

●ある死刑囚のファイル 

    ライオネル・ホワイト(データ無)

 

●さらばその歩むところに心せよ

さらばその歩むところに心せよ (1959年) (世界ミステリシリーズ)

さらばその歩むところに心せよ (1959年) (世界ミステリシリーズ)

 

 

●盗聴

盗聴 (ハヤカワ文庫 NV 31)

盗聴 (ハヤカワ文庫 NV 31)

 

 

●心引き裂かれて

心ひき裂かれて (角川文庫)

心ひき裂かれて (角川文庫)

 

 

 

●そして赤ん坊が落ちる

そして赤ん坊が落ちる (ハヤカワ・ミステリ文庫)

そして赤ん坊が落ちる (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

●偽りの契り

偽りの契り―私立探偵ジョン・タナー (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

偽りの契り―私立探偵ジョン・タナー (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

 

 

●わが心臓の痛み

わが心臓の痛み

わが心臓の痛み

 

 

 

次点 暗い夜の記憶

暗い夜の記憶 (現代教養文庫―ミステリ・ボックス)

暗い夜の記憶 (現代教養文庫―ミステリ・ボックス)

 

 

 

次点 赤毛の男の妻

赤毛の男の妻 (創元推理文庫 M ハ 5-1)

赤毛の男の妻 (創元推理文庫 M ハ 5-1)

 

 

 

 

 

 

古典(20世紀)ミステリベスト(海外・ジャンル別⑦ー⑫)

⑦スパイ小説・ポリティカルフィクション

 

●寒い国から帰ってきたスパイ

寒い国から帰ってきたスパイ

寒い国から帰ってきたスパイ

 

 

●武器の道

武器の道 (1977年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
 

 

●ホップスコッチ

ホップスコッチ (1977年) (Hayakawa novels)

ホップスコッチ (1977年) (Hayakawa novels)

 

 

ジャッカルの日

 

●パンドラ抹殺文書

パンドラ抹殺文書 (ハヤカワ文庫NV)

パンドラ抹殺文書 (ハヤカワ文庫NV)

 

 

●明日を望んだ男

 

●第五の騎手

 

●暗殺者

暗殺者 (上) (新潮文庫)

暗殺者 (上) (新潮文庫)

 

 

●マエストロ

マエストロ〈上〉 (創元推理文庫)

マエストロ〈上〉 (創元推理文庫)

 

 

●闇の奥へ

闇の奥へ〈上〉 (扶桑社ミステリー)

闇の奥へ〈上〉 (扶桑社ミステリー)

 

 

次点 鉄の薔薇

鉄の薔薇 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

鉄の薔薇 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

次点 スリーパーにシグナルを送れ

スリーパーにシグナルを送れ (新潮文庫)

スリーパーにシグナルを送れ (新潮文庫)

 

 

 

 ⑧冒険小説

 

●興奮 

興奮

興奮

 

 

●もっとも危険なゲーム

もっとも危険なゲーム (1976年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

もっとも危険なゲーム (1976年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

●最後の国境線

最後の国境線 (ハヤカワ文庫 NV 132)

最後の国境線 (ハヤカワ文庫 NV 132)

 

 

●鷲は舞い降りた

鷲は舞い降りた (ハヤカワ文庫NV)

鷲は舞い降りた (ハヤカワ文庫NV)

 

 

●高い砦

高い砦 (ハヤカワ文庫 NV 216)

高い砦 (ハヤカワ文庫 NV 216)

 

 

●針の眼

針の眼 (創元推理文庫)

針の眼 (創元推理文庫)

 

 

 ●タイタニックを引き揚げろ

タイタニックを引き揚げろ (新潮文庫 カ 5-2)

タイタニックを引き揚げろ (新潮文庫 カ 5-2)

 

 

●血の絆

血の絆 (新潮文庫)

血の絆 (新潮文庫)

 

 

 ●北壁の死闘

北壁の死闘 (創元推理文庫)

北壁の死闘 (創元推理文庫)

 

 

●極大射程

極大射程 上 (扶桑社ミステリー)

極大射程 上 (扶桑社ミステリー)

 

 

 次点 カーラのゲーム

カーラのゲーム〈上〉 (創元ノヴェルズ)

カーラのゲーム〈上〉 (創元ノヴェルズ)

 

 

 

⑨ネオエンターテインメント&サイコスリラー

 

●シャドー81

シャドー81 (新潮文庫)

シャドー81 (新潮文庫)

 

 

エヴァ・ライカーの記憶

エヴァ・ライカーの記憶 (創元推理文庫)

エヴァ・ライカーの記憶 (創元推理文庫)

 

 

●超音速漂流

超音速漂流 (文春文庫 (275‐21))

超音速漂流 (文春文庫 (275‐21))

 

 

●摩天楼の身代金

摩天楼の身代金 (文春文庫 (275‐7))

摩天楼の身代金 (文春文庫 (275‐7))

 

 

バスク、真夏の死

バスク、真夏の死 (角川文庫)

バスク、真夏の死 (角川文庫)

 

 

羊たちの沈黙

羊たちの沈黙 (新潮文庫)

羊たちの沈黙 (新潮文庫)

 

 

●嘘、そして沈黙

嘘、そして沈黙 (扶桑社ミステリー)

嘘、そして沈黙 (扶桑社ミステリー)

 

 

●凶手

凶手 (Hayakawa Novels)

凶手 (Hayakawa Novels)

 

 

●リオノーラの肖像

リオノーラの肖像 (文春文庫)

リオノーラの肖像 (文春文庫)

 

 

●ゴールド・コースト

ゴールド・コースト〈上〉 (文春文庫)

ゴールド・コースト〈上〉 (文春文庫)

 

 

次点 五輪の薔薇

五輪の薔薇〈上〉

五輪の薔薇〈上〉

 

 

⑩ユーモア・パロディー

 

●スカイジャック

スカイジャック (角川文庫)

スカイジャック (角川文庫)

 

 

●スイートホーム殺人事件

スイート・ホーム殺人事件〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

スイート・ホーム殺人事件〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

●シュロック・ホームズの冒険

シュロック・ホームズの冒険 (ハヤカワ・ミステリ文庫 42-1)

シュロック・ホームズの冒険 (ハヤカワ・ミステリ文庫 42-1)

 

 

●ジミー・ザ・キッド

ジミー・ザ・キッド (角川文庫)

ジミー・ザ・キッド (角川文庫)

 

 

●三人の名探偵のための事件

三人の名探偵のための事件

三人の名探偵のための事件

 

 

●死体をどうぞ

死体をどうぞ (1977年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

死体をどうぞ (1977年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

●衣装戸棚の女

衣裳戸棚の女 (創元推理文庫)

衣裳戸棚の女 (創元推理文庫)

 

 

●豚は太るか死ぬしかない

豚は太るか死ぬしかない (ハヤカワ・ミステリ文庫―トレース・シリーズ)

豚は太るか死ぬしかない (ハヤカワ・ミステリ文庫―トレース・シリーズ)

 

 

●大魚の一撃

大魚の一撃 (扶桑社ミステリー)

大魚の一撃 (扶桑社ミステリー)

 

 

⑪法廷ミステリ

 

推定無罪

推定無罪(上) (文春文庫)

推定無罪(上) (文春文庫)

 

 

●罪の段階

罪の段階〈上〉 (新潮文庫)

罪の段階〈上〉 (新潮文庫)

 

 

●弁護

弁護

弁護

 

 

●依頼なき弁護

依頼なき弁護〈上〉 (集英社文庫)

依頼なき弁護〈上〉 (集英社文庫)

 

 

●真実の行方

真実の行方 (福武文庫)

真実の行方 (福武文庫)

 

 

●復讐法廷

復讐法廷 (文春文庫 (275‐19))

復讐法廷 (文春文庫 (275‐19))

 

 

●最終法廷

最終法廷〈上〉 (Hayakawa Novels)

最終法廷〈上〉 (Hayakawa Novels)

 

 

●屠所の羊

屠所の羊 (ハヤカワ・ミステリ文庫 4-1)

屠所の羊 (ハヤカワ・ミステリ文庫 4-1)

 

 

●破戒裁判

破戒裁判 (光文社文庫)

破戒裁判 (光文社文庫)

 

 

●事件

 

⑫クロスオーバー(SFミステリ・他)

 

悪童日記

悪童日記 (Hayakawa Novels)

悪童日記 (Hayakawa Novels)

 

 

星を継ぐ者

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

 

 

鋼鉄都市

鋼鉄都市 (ハヤカワ文庫 SF 336)

鋼鉄都市 (ハヤカワ文庫 SF 336)

 

 

●渇きの海

 

 

●ゴールデン・フリース

ゴールデン・フリース (ハヤカワ文庫SF)

ゴールデン・フリース (ハヤカワ文庫SF)

 

 

●生存の図式

生存の図式 (1983年) (海外SFノヴェルズ)

生存の図式 (1983年) (海外SFノヴェルズ)

 

 

●フィーバー・ドリーム

フィーヴァードリーム〈上〉 (創元ノヴェルズ)

フィーヴァードリーム〈上〉 (創元ノヴェルズ)

 

 

グリーンマイル

 

上院議員

上院議員〈上〉 (創元推理文庫)

上院議員〈上〉 (創元推理文庫)

 

 

ウィンブルドン

ウィンブルドン (創元推理文庫)

ウィンブルドン (創元推理文庫)

 

 

古典(20世紀)SFベスト(国外・国内)

①海外SF

 

夏への扉

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

 

 

●都市と星

都市と星(新訳版)

都市と星(新訳版)

 

 

●永遠の終り

永遠の終り (ハヤカワ文庫 SF 269)

永遠の終り (ハヤカワ文庫 SF 269)

 

 

タイタンの妖女

 

 

●夜の翼

夜の翼 (ハヤカワ文庫 SF 250)

夜の翼 (ハヤカワ文庫 SF 250)

 

 

●光の王

 

●人類皆殺し

人類皆殺し (ハヤカワ文庫)

人類皆殺し (ハヤカワ文庫)

 

 

●パーマー・エルドリッチの三つの聖痕

パーマー・エルドリッチの三つの聖痕

パーマー・エルドリッチの三つの聖痕

 

 

●所有せざる人々

所有せざる人々 (ハヤカワ文庫SF)

所有せざる人々 (ハヤカワ文庫SF)

 

 

●ハロー・サマー・グッドバイ

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

 

 

次、エンダーのゲーム

エンダーのゲーム〔新訳版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)
 

 

次、リングワールド

リングワールド (ハヤカワ文庫 SF (616))

リングワールド (ハヤカワ文庫 SF (616))

 

 

 ②海外SF・短編集

 

●都市

都市 (ハヤカワ文庫 SF 205)

都市 (ハヤカワ文庫 SF 205)

 

 

●われはロボット

 

●10月はたそがれの国

10月はたそがれの国 (創元SF文庫)

10月はたそがれの国 (創元SF文庫)

 

 

●伝道の書に捧げる薔薇

伝道の書に捧げる薔薇 (ハヤカワ文庫 SF 215)

伝道の書に捧げる薔薇 (ハヤカワ文庫 SF 215)

 

 

●世界の中心で愛を叫んだ獣

 

●残像

残像 (ハヤカワ文庫 SF ウ 9-4)

残像 (ハヤカワ文庫 SF ウ 9-4)

 

 

●九百人のお祖母さん

九百人のお祖母さん (ハヤカワ文庫SF)

九百人のお祖母さん (ハヤカワ文庫SF)

 

 

●愛はさだめ、さだめは死

 

●鼠と竜のゲーム

 

●キリンヤガ

キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)

キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)

 

 

次、火星夜想曲

火星夜想曲 (ハヤカワ文庫SF)

火星夜想曲 (ハヤカワ文庫SF)

 

 

 ③国内SF

 

●夢の木坂分岐点

夢の木坂分岐点

夢の木坂分岐点

 

 

●たそがれに還る

たそがれに還る (角川文庫 (6033))

たそがれに還る (角川文庫 (6033))

 

 

●果てしなき流れの果てに

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)

 

 

●妖星伝

完本 妖星伝〈1〉鬼道の巻・外道の巻 (ノン・ポシェット)

完本 妖星伝〈1〉鬼道の巻・外道の巻 (ノン・ポシェット)

 

 

●消滅の光輪

消滅の光輪 (1979年)

消滅の光輪 (1979年)

 

 

上弦の月を喰べる獅子

上弦の月を喰べる獅子 上 (ハヤカワ文庫 JA ユ 1-5)

上弦の月を喰べる獅子 上 (ハヤカワ文庫 JA ユ 1-5)

 

 

●火星人先史

火星人先史 (角川文庫 (5691))

火星人先史 (角川文庫 (5691))

 

 

●アドバード

アド・バード (集英社文庫)

アド・バード (集英社文庫)

 

 

●わが赴くは蒼き大地

わが赴くは蒼き大地 (ハルキ文庫)

わが赴くは蒼き大地 (ハルキ文庫)

 

 

アフロディーテ

アフロディーテ (1980年)

アフロディーテ (1980年)

 

 

次、クリスタル・サイエンス

クリスタルサイレンス

クリスタルサイレンス

 

 

 ④国内SF短編集

 

●ゴルディアスの結び目

ゴルディアスの結び目 (ハルキ文庫)

ゴルディアスの結び目 (ハルキ文庫)

 

 

●バブリング創世記

バブリング創世記 (徳間文庫)

バブリング創世記 (徳間文庫)

 

 

●あたしの中の・・・

あたしの中の…

あたしの中の…

 

 

●一人で歩いて行った猫

一人で歩いていった猫 (ハヤカワ文庫 JA 149)

一人で歩いていった猫 (ハヤカワ文庫 JA 149)

 

 

宇宙ゴミ大戦争

宇宙ゴミ大戦争 (ハヤカワ文庫JA)

宇宙ゴミ大戦争 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

●決戦日本シリーズ

 

●異星の人

 

●地球はプレインヨーグルト

 

●光の帝国

光の帝国―常野物語

光の帝国―常野物語

 

 

●肉食屋敷

肉食屋敷 (角川ホラー文庫)

肉食屋敷 (角川ホラー文庫)

 

 

次、神聖代

神聖代 (定本荒巻義雄メタSF全集 第 6巻)

神聖代 (定本荒巻義雄メタSF全集 第 6巻)

 

 

2016年 11月に読んだ本

 ●7548 転落の街 (ミステリ) マイクル・コナリー (講談文) ☆☆☆☆

 

 

シリーズ前作「ナインドラゴン」は衝撃的だった。ネオ・ハードボイルド最後の戦士、といった感じの、あの重たかったボッシュシリーズが、ここまでハリウッド映画的に堕落?するか、と初期からのファンは驚いた。

そして、リンカーンシリーズばかりが訳され、コナリーもボッシュを描けなくなったのかと危惧してしまい、正直本書を読むべきか迷ったのだが、こういう時はすぐに手に入る。で、今回は大方の評価と同じく、かなりもとに戻った。

事件は現在の政治がらみと、過去の事件の二本立てのモジュラー。で、どちらもコナリーらしく考えられてはいる。ただ、結論から言うと何か足りない。ネタは明かせないが、どちらも消化不良なわりには、引っ張りすぎ。途中でネタが割れてからが、長すぎる。

そして、それ以上に、やはり最近のボッシュシリーズには、過去の重さ=陰影がない。のっぺりしている。イクメンボッシュなど見たくはない。というわけで、かなり甘い評価かもしれない。(欠点はそれほどないので、消去法でこうなった)

 

 ●7549 壁の男 (ミステリ) 貫井徳郎 (文春社) ☆☆☆★

 

壁の男

壁の男

 

 

ある人物(村の建物に稚拙な絵を描き続ける男)の過去をどんどん洗っていく、というプロットは、有栖川有栖の「鍵の掛かった男」と相似。そして、その過去の悲惨さは、貫井の「我が心の底の光」に通じるものがある。

というわけで、この物語を泣ける話として評価する人がいてもかまわないが、僕はもうこの手の悲惨な物語は読みたくない。特に子供と動物は、勘弁してほしい。

 

 ●7550 リーチ先生 (フィクション) 原田マハ (集英社) ☆☆☆☆

 

リーチ先生

リーチ先生

 

 

今回は分厚い作品。題名から、おいおい、原田が麻雀小説?阿佐田哲也伊集院静か?と驚いた(あきれた?)のだが、リーチの意味は陶芸家のバーナード・リーチということで(早とちりしてすまん)原田の芸術シリーズは必読と手に取った。

とは言っても、内容はNFに近いもので(主人公は架空のようだが)MOMAシリー
ズより「太陽の棘」のテーストか。

リーチをめぐる白樺派柳宗悦高村光太郎濱田庄司といった面々が、非常に魅力的に描かれており、僕は白樺派=おぼっちゃまの道楽?的な印象を勝手に持っていたので、その欧米をも上回る先鋭さと守備範囲の広さに、驚いてしまった。(リーチ=英国人が知らない、ゴッホセザンヌをいち早く絶賛。その熱い芸術論に引き込まれる)申し訳ないが、白樺派の印象が180度変わってしまった。

しかし、厳しく言うと、物語としての面白さはそれほどなく、新聞連載ということもあり分厚いのだが、その魅力は実在のキャラクターに頼っている。しかも、本来は名もなき地上の星として、ヒーローにならなければならない、架空の主人公亀之介が、イマイチ輝かないんだよねえ。

でも、今回もネットの力は素晴らしく、登場する人物や何より陶器をビジュアルで確認しながら読み、日本の庶民の美というものに、ほんわり暖かくなってしまった。というわけで、これまた少し甘い採点。

 

 ●7551 慈 雨 (ミステリ) 柚月 裕子 (集英社) ☆☆☆★

 

慈雨

慈雨

 

 

「孤狼の血」の大胆な作風の変化で驚かせた著者の新作は、かなり地味目の警察小説だった。とは言っても、主人公は引退と同時に、過去を償うため妻と四国お遍路の旅に出た元刑事なのだが。

ところが、お遍路中に、現実に事件が起きてしまい、それが主人公神場の過去の冤罪事件と絡む、というのは、やはりいくらなんでもご都合主義。娘やその婿である刑事という設定も、ここ三冊くらいかぶっていて、いいかげんにしろと言いたくなる。

さらに、マニア的に言うと、ここで使われるトリックは、古典的短編やハードリーチェイスの「世界を俺のポケットに」等々で、既に使い古されたもの。(たぶん、アニメ・ルパン三世でも何度も使われたのでは?)これに、警察含めた登場人物が全員驚いては、しらけてしまう。

と、かなり貶したが、もちろん著者の筆力は確かで、それでも一気に読ませる。ただ、薬丸の「ラスト・ナイト」と比べると、どちらもオリジナリティーはないが、その語り口に薬丸に一日の長を感じてしまう。また、やっぱりこのおやじ、自分勝手な気がするなあ。

 

 ●7552 ゴジラエヴァンゲリオン (評論) 長山靖生 (新潮新) ☆☆☆★

 

ゴジラとエヴァンゲリオン (新潮新書)

ゴジラとエヴァンゲリオン (新潮新書)

 

 

たぶん「シン・ゴジラ」公開に合わせて上梓された、「戦後SF事件史」のスピンアウト本。ゴジラに関しては、僕は生れたタイミングが良くなく、子供だましのイメージが強い。まだ、ガメラの方が良い印象がある。

で、本書を読み、こんなに多くのゴジラ映画があるんだ、と驚いてしまった。そして。エヴァ。ひさしぶりに、そのストーリーをたどって、楽しい時間をすごした。しかし、厳しく言うと、新しい情報は皆無。(当初のエヴァの映画化案が、「進撃の巨人」に似ていた、というのは面白かったが)

まあ、楽しめたからそれでいいのだけれど。そして、著者の言う僕らの世代への、特撮かアニメか、の究極の二者択一は、僕はアニメと感じる。特撮で、一番影響を受けたのは、「マグマ大使」かもしれないなあ。青血病が本当に怖かった・・・

 

 ●7553 脇坂副署長の長い一日 (ミステリ) 真保裕一 (集英社) ☆☆☆

 

脇坂副署長の長い一日

脇坂副署長の長い一日

 

 

やや復調とは言いながらも、相変らず模索が続く真保の新作は、題名と表紙からわかるように、ジェットコースター・モジュラー警察小説、らしい。

冒頭から主人公脇坂の家族(妻と息子)の謎の失踪?部下の仮病&バイク事故&やっぱり失踪、地元出身のアイドルの一日署長の日に、次々と起きる何だか間の抜けた事件の数々。

そして、そのアイドルがとんでもない行動をとり、さらにはとんでもない、等々ととんでもない事件が続く。最初のうちは、こういう偶然が偶然を呼ぶミステリが嫌いな僕も、さすが真保、定型の中で見事に定型を破っている、と喜んだのだが、だんだん、それらの事件がひとつに収斂してきてしまい、いくらなんでもご都合主義と今度もまた叫んでしまった。

そして、何より問題なのは、このいくつもの事件が絡む複雑な犯罪の本質が、じつにつまらないことである。この犯罪は、ちっとも美しくないのである。で、今回もまた、主人公の娘の婿が刑事で、事件に絡むところが、いいかげんにしろ、となってしまった。このパターン禁止。

 

 ●7554 Dの殺人事件、まことに恐ろしきは 歌野晶午(角川書)☆☆☆★

 

Dの殺人事件、まことに恐ろしきは

Dの殺人事件、まことに恐ろしきは

 

 

題名から、密室ゲームシリーズだと、ちょっと苦手、という意識が合ったのだが、そうではなく、本書は乱歩のパロディー?集で、「椅子? 人間!」「スマホと旅する男」表題作「お勢登場を読んだ男」「赤い部屋はいかにリフォームされたか?」「陰獣幻戯」「人でなしの恋からはじまる物語」 の八編が収録されている。

この中では「お勢登場」と「人でなしの恋」は、読んだ記憶がないのだが、その他チョイスはGOOD。僕の乱歩の短編のベストは「押し絵と旅する男」であり、次点が「赤い部屋」だ。

で、冒頭の「椅子? 人間!」が結構面白く(一気に引き込まれ、人間椅子を忘れたのが正解)期待したのだが、残りは駄作とは言わないが、やや物足りなかった。全ての作品で、ハイテク?が使われるのだが、これがそれほど効果をあげていないのだ。

 

 ●7554 小説、君の名は。   (SF) 新海 誠 (角川文) ☆☆☆★

 

 
 ●7555 君の名は。Another Side(SF) 加納新太 (角ス文) ☆☆☆☆

 

君の名は。 Another Side:Earthbound (角川スニーカー文庫)
 

 

TVで古館と新海の対談?を観て少し興味を持ち、何となく嫁さんと浦和パルコで映画「君の名は。」を観て、はまった・・・。

新海の作品は、「秒速5センチメートル」をTVで観たことがある。そして、その精密画のような絵と光のマジックに感動し、痛いまでの喪失のせつなさは感じたが、正直ストーリー展開がかなり勝手で解りにくく、モノローグの多用も好みでなく、さらに見ようとは思わずそのままだった。

で、今回はとにかく、まったく情報なしで観たのが大正解だった。正直いまさら「転校生」かい?と僕らの世代ならみんな思ったように僕も当然思い、全く興味を持たず見事に情報を遮断していたら、後半の展開に底が抜けてしまった。そうくるのか?

だから、もし幸い僕のように「君の名は。」の内容を全く知らない人は、この後の文章を読まずに、すぐに映画館に直行してほしい。この映画は、やはり大スクリーンで見るべきと思うので。

で、そうは言っても後半の展開には、一回見ただけでは納得できない?が結構浮かぶ。そこで、これまた評判のいい小説&アナザーストーリーを買ってきて一気に読んでみた。

小説の方は、新海自身が映画が完成する前に書いたようだが、読み易いが、内容的には映画とほぼイコールで、敢えて読む必要性は感じなかった。まあ、僕は映画を観て、読んだので、すべてのシーンがよみがえり、それはそれで復習を兼ねて面白かったのだが、映画を見ずに読むのはやめたほうがいいと思う。

そしてアナザーサイド。ここでは、三葉ではなく、1、瀧、2、テッシー、3、四葉、4、三葉の父(と母)、の四つの視点から、同じストーリーを語り直していく。とは言っても、それほど大したものではなく、これまたこの作品だけ読んでも、何も理解
できないだろう。

本書の特徴は(以下・映画ネタバレ)映画を観た人が誰でも感じるテッシー、何でそんな大それたことを簡単にやるんだ!と、結局ラスト何で助かったの?父親は何で、急に三葉を信じたの?という巨大な謎への回答が書かれていることである。

そうは言っても、前者はまだ説得力が足りない。ネットでも大絶賛なのは、三葉の父親の物語で、民俗学者として三葉の母親の二葉と出あい、宮水家に婿入りし、二葉の死によって、宮水家を出て、市長選に打って出る父親の思いと行動が、映画のやや拍子抜けのラストの裏の物語として、見事に補完機能を果たしている。

正直、この物語は後付かもしれないし、映画に盛り込むと理屈っぽくなり、ストーリーの流れが崩れるかもしれない。でも、映画に感動した人は、ネットでもいいからこのサイドストーリーを読むべきだと感じた。(何か、碇ゲンドウ・小市民バージョンのような感じがした)

というわけで、冷静に考えると、新海、ちょっと川村元気に毒されすぎだぞ、作家性の危機、という気も少しするが、いやいやこれこそが、ポスト・ジブリのシン・アニメの王道だ、という気もする。というか、これほどアニメに興奮したのは、社会人一年目、富山の映画館で木村と「ナウシカ」を観たとき以来かもしれない。

 

●7556 また、桜の国で (フィクション) 須賀しのぶ (祥伝社) ☆☆☆★

 

また、桜の国で

また、桜の国で

 

 

「革命前夜」が予想以上の傑作だったので、須賀の分厚い新作にも大いに期待した。今回もまた第二次大戦下の欧州が舞台だが、ポーランドというところがミソか。しかし、残念ながら期待はかなわなかった。

もちろん、駄作というわけではないのだが、主人公の棚倉、そしてヤンとイエジという三人がメインなのだが、イマイチ人物造形が単純で、感情移入しづらい。そして、何よりストーリーが単調なのだ。

もちろん、ポーランドの悲劇を語る作者の筆には力がこもるのだが、エンタメとして観た場合、ちょっと力みすぎで、空回りを感じてしまう。正直、長すぎて、まじめすぎるのだ。

 

 ●7557 横溝正史読本 (企画) 小林信彦編 (角川書) ☆☆☆☆☆

 

横溝正史読本 (1976年)

横溝正史読本 (1976年)

 

 

偶然、いやシンクロニシティーはあるものだ。NHKで「獄門島」のリメイクをやるということで、その前に横溝の角川映画を毎日放映していて「手毬唄」「犬神家」を観た後、図書館で本書を見つけた。

小林が編集した「横溝正史読本」というのは、高校時代に幻影城から上梓されたのを買って読んだ記憶があるので、その本と思ってパラパラめくったら、どうも内容が違う。横溝と小林の対談が全体の半分を占めるボリュームがあるのだ。

詳細はまだ分からないが、本書は別物で角川からでていて、時期は76年で、「犬神家」によってブームが大爆発する前夜、とでもいうべきタイミングだ。そして、その対談のレベルの高さに驚いてしまった。

もちろん、小林の博学は当然で、それがまた事前勉強をしているのだから(対談前夜に二時半まで「獄門島」を読んで、寝不足状態)すごいにきまってるし、冒頭で横溝も小林の姿勢に大いに感謝している。たぶん、小林は当時40歳前後で、いまやこんな評論家は絶滅だろうなあと思う。

しかし、今回驚いたのは、横溝正史の博学、というかミステリ力の凄さにある。(「Yの悲劇」の評価など完璧で、だからこそ「きちがいじゃが」が生まれたのだ)そして、そうか横溝もまた、小林と同じく作家であると同時に、雑誌編集長(新青年、他)だったことを、思い出すのだ。この二人の本質は、相似なのだ。だからこそ、こんなレベルの高い対談が実現したのだ。

戦後日本のミステリ文壇は、評論の乱歩と実作の正史が引っ張ったとずっと思っていたし、もちろんその通りである。しかし、正史にもこんなレベルの高いミステリ論があり、それは乱歩との交流によって常に互いに刺激を与えてきたのだ。しかし、今時原書でミステリをここまで勉強する作家が、どこにいるだろうか。

戦後、「本陣」「蝶々」「獄門島」が続いて上梓された時が、日本ミステリのひとつのスタートであり、ひょっとしたらピークだったかもしれない。歴史的意義の「本陣」、完璧な様式美の「獄門島」、そして実は中学時代一番面白く感じたのは「蝶々」だったのだが、この三冊の比較が面白い。

ああ、「幻影城」といい、本書といい、日本ミステリは二人の巨人によって、戦後すぐにここまでのレベルに到達し、未だにそこからのがれられていないのかもしれない(どうやら、僕が読んだのは「横溝正史の世界」という幻影城の別冊ムック本で、小林は関係していないようだ。このあたり、小林の乱歩本と混乱しているかもしれない)

 

●7558 セカイからもっと近くに (評論) 東 浩紀 (東京創) ☆☆☆☆

 

 

副題:現実から切り離された文学の諸問題。東が、新井素子法月綸太郎押井守、そして小松左京の作品をもとに、現代における想像力と現実の折り合いの悪さ、自己と社会の結びつきの不毛さを、セカイ系の限界として描いた作品。東はラカン分析の「想像界」「現実界」「象徴界」を援用し、セカイ系の小説群を「想像界現実界が短絡し、象徴界の描写を欠く」と定義するが、これはわかりやすい。

そして、それは「象徴界」=社会、政治を描いてきた(たとえば「日本沈没」)小松の諸作とセカイ系の作品の対比によってより明らかになる。僕らはもはや、特に震災後は、社会を堂々と描くことは難しい。そして、日本沈没のリメイク映画は、見事に社会を描かない。(そういう意味では、「君の名は。」はセカイ系であり、「シン・ゴジラ」はその確信犯的反動といえるのかもしれない)

しかし、小松の作品だけでなく、日本SF最高傑作とされる「果てしなき流れの果てに」は、そのスケールの大きさから社会を描くことは不可能で、その物語は見事にセカイ系と言える。小松は、逆説的にセカイ系ともつながってしまったのだ。

そして、小松の作品における、あまりにも古くさい女性像とマザコン的感性。しかし、東はSFという存在をピュアに受け止め、小松へのリスペクトも強く感じる。何より取り上げる作品が「神への長い道」「ゴルディアス」「虚無回廊」と非常に僕好みである。まあ「虚無回廊」は未完であり、小松の弱点をさらけ出してしまった作品でもあるが。

しかし、本書を読み終えて、いや最初からずっと、本書には東のあきらめと疲れが充満している。だからこそ、最後の文芸評論と冒頭に宣言したのだろう。東の疲れは、時代の疲れであり、少し先輩の僕も共有するものだ。

新井や法月の分析も面白いのだが(押井はまたか、という感じ。新井の「絶句」を読みたくなった)ここは、小松を中心に語ってみた。

 

 ●7559 僕が愛したすべての君へ (SF) 乙野四万字 (早川文) ☆☆☆☆
 ●7560 君を愛したひとりの僕へ (SF) 乙野四万字 (早川文) ☆☆☆☆

 

 

平行宇宙というものが、科学的に立証された未来、人は腕に巻いたIP端末で、今自分がどの世界にいるかを確認できる。元の世界が000であり、人は自然に001の世界や003の世界と短時間入れ替わり、時にはかなり離れた世界(登場人物がかなり変わっていたりする)に長時間滞在することもある。(新井素子に似た設定の作品があったな)

そういう世界で、平行世界を研究する科学者の息子と娘が主人公の、もちろん別の平行世界の物語、いやラブストーリー。「僕」の主人公は高崎暦(れき)であり、「君」の主人公は日高暦(こよみ)。そして、双方のヒロインが、別人であるところが、ミソ。

ネットでは読む順番が論争になっており、「君」→「僕」が優勢だが、僕は逆に読んでしまった。確かに、「君」→「僕」だと伏線がうまく回収される気がするが、小説としては「僕」の方がよくできている。

和音に比べて栞にちょっと魅力が足りないこともある。(まあ、おばかすぎるのだが)しかし、読み方は逆だったかもしれないが、もう一度「僕」のラストを読み返すと、ある意味定番のラストが、非常に丁寧に書き込まれていて、うれしくなってしまう。

このラストは「時をかける少女」から「君の名は。」まで続く、時間SFの王道だが、ここまで書いてくれると満足するしかない。「名のるほどの者ではありません。」には苦笑。

著者は全く知らないラノベ系の人らしいが、野崎の「Know」と同じく話題になり、またもSF界には期待の新人の登場だ。実際、作風や文体も野崎に似ている。まあ、こっちは白野崎、という感じだが。(実はそうは言っても、両作ともにかなりきついストーリーがまっているのだが)次作に期待したい。

 

●7561 紙の城  (フィクション) 本城雅人 (講談社) ☆☆☆★

 

紙の城

紙の城

 

 

「ミッドナイトジャーナル」に続く、新聞社を舞台にした新作。ただし、今回はITの時代における、衰退する新聞業界というビジネスモデルがテーマとなっており、旧態依然たるプロ野球の新しいビジネスモデルを描いた、著者の最高傑作「球界消滅」のテーストも強くあり、期待は膨らむ。

ホリエモンをモデルにしたIT企業の風雲児轟木はTV会社を買収しようとしたが、方針を急遽変えてその子会社の全国紙東洋新聞の株を譲り受け、子会社化しようとする。その裏には、孫正義を思わせるIT業界の巨人、米津がいた。

というストーリーだが、主人公の安芸やヒロイン霧島、そしてダークヒーロー権藤、等々キャラクターは相変らず立っているし、得意の新聞社内部のディティール描写もうまい。

しかし、肝心のビジネスモデル、轟木がなぜ新聞社を買収しようとするのかが、最後までよく解らなかった。米津と権藤の意志は一応わかるが、それもまた弱いし、何より新しいIT時代の新聞の姿が、あいまいというか魅力がない。

ここが「球界消滅」と決定的に違う。「球界消滅」の新しいプロ野球のモデルは、非常に魅力的だった。そして、最後のオチも、こうくるか、という感じで、竜頭蛇尾に感じてしまった。読んでる間は面白いが、残念ながら小説としての出来は、やや物足りない残念な作品。

 

●7562 メイン・ディッシュ (ミステリ) 北森 鴻 (集英文) ☆☆☆☆

 

メイン・ディッシュ (集英社文庫)

メイン・ディッシュ (集英社文庫)

 

 

著者のデビュー作「狂乱廿四孝」は、期待が大きすぎたせいかあまり良い記憶がない。しかし、著者の「花の下にて春死なむ」という連作ミステリには、感心した。(ちょ
うど米国に向かう飛行機の中で読んだ)しかし、蓮丈那智シリーズが読みにくくなり、大作「蜻蛉始末」がイマイチで、すっかりご無沙汰していたら、何と著者が亡くなってしまった。

しかし、ネットの評価で読んでみた本書もまた、「花の下」と同じテーストの丁寧な連作集だった。読み終えて思うのは、北森と西澤の共通点である。(あくまで、ダークじゃない方の西澤)丁寧なロジック展開、キャラ立ち、そして何よりB級グルメ描写の冴え。

ひょっとしたら、北森にとって蓮丈シリーズは、鬼門だったのかもしれない。そうは言っても、本書は人間関係にすこし無理が多くて、傑作とは言いずらいが、このパターンならもっと読んでみたくなった。やや、甘目の採点。

 

 ●7563 あなたのいない記憶 (ミステリ) 辻堂ゆめ (宝島社) ☆☆☆★

 

あなたのいない記憶

あなたのいない記憶

 

 

このミス大賞受賞の作家の第三作。帯では、有栖川有栖大森望も絶賛、虚偽記憶というテーマも、結構好みなので(筒井の「鍵」や高橋の「赫い記憶」は大好物)早速手に取った。

まず、文章のうまさに驚いた。高知弁がちょっとうっとおしいが、流れるようにスムーズな文体は、とても24歳とは思えない。また、これまた予想通り、幼馴染が大学で再会し、タケシという人物のそれぞれの記憶が、全く食い違う、という発端も素晴らしい。

ただ、この謎解きが結構時間がかかり、中盤ややだるくなる。そして、ラスト。正直、こんな面倒なことしないでしょう、の感が強く、努力は分かるが、物足りなさが残る。このネタは中短編でないと、アラが目立つでしょう。タケシはともかく、両親の行動は納得できない。

で、実は本書はミステリと書いたが、殺人があるわけでもなく、ラストを読めば恋愛小説と言うべきかもしれない。そう、これはもっとシンプルに、中編でまとめれば、余韻の残る恋愛小説の傑作になったかもしれない。ただ、この作者は書ける。「完全なる首長竜」を思い起こした。次に期待。

 

●7564 比ぶ者なき (歴史小説) 馳 星周 (中公社) ☆☆☆☆☆

 

比ぶ者なき

比ぶ者なき

 

 

読み始めてすぐ思った。そう、こんな歴史小説を待ってたんだ、と。馳の新作が歴史小説というのは、過去の多くのミステリ作家の例を見ても驚きはなかった。陳舜臣のように歴史小説が本業になった作家もいれば、最近では垣根の「室町無頼」の成功が記憶に新しい。

しかし、馳の場合はやはり北方の影響を感じる。北方の「三国志」がそうであったように、本書において馳は説明的な地の文章を全く使わず、流れるような会話の中で、奈良時代という普通の人にはなじみの薄い時代背景を、見事に描くというはなれわざをなしとげた。

これほど、ストレスの少ない歴史小説はなく、よく考えれば合戦シーンも全くない。本書は、題名からわかるように、日本のグランドデザインを作り上げた天才政治家、藤原不比等とその妻の橘三千代を描いた、日本初と言ってもいい、躍動感あふれる歴史小説だ。

しかも、馳が描いたのは「政」の心理的駆け引きのみ。しかし、その裏には日本の歴史をねつ造し、天皇制=藤原時代を確立するプロジェクト、という不比等の圧倒的なスケールが描かれていて、感嘆するしかない。聖徳太子架空説の使い方も素晴らしい。(巻末の参考資料に大山誠一の著作が並ぶ)

正直、本書の文体から、あのエルロイ大好き馳のハードボイルドをイメージすることは不可能だ。しかし、三千代から持統、元明、元正、という三代の女性天皇の描き方は凄いとしか言い様がない。(大海人皇子鎌足の描写が少し物足りないが。中大兄皇子は、登場しないのに信長並みの存在感がある)

さて、本書の続編があるとするならば、長屋王の変、すなわち長屋王VS藤原四兄弟の戦いとなる。(しかも、天然痘つき)それは是非読みたいし、奈良時代となれば、道鏡まで描くのだろうか?

この時代を描いた作家は、黒岩重吾しか思いつかないが、僕は過去から結構興味があって勉強してきた。そして、やっとこんな素晴らしい小説に出会った。ぜひ、直木賞をとって、奈良時代の第一人者となってほしい。

 

●7565 村上春樹と私 (エッセイ) ジェイ・ルービン (東洋経) ☆☆☆★

 

村上春樹と私

村上春樹と私

 

 

村上春樹の翻訳者にして、傑作「ハルキ・ムラカミと言葉の音楽」の作者、ジェイ・ルービンの、村上春樹との具体的な付き合いを描いたエッセイ。なのに、ここには村上春樹の姿は、なぜかあまり感じ取れない。

冒頭の著者が編纂した芥川の短編集への村上の解説、などは非常に面白かったのだが、それも繰り返し語られるのはイマイチ。翻訳裏話としての、村上とのやりとりも、もっと面白く書けるんではないか、と感じる。

たぶん、著者はファンとして、必要以上に村上をリスペクトしてしまっているのだろう。途中とても面白かった、ニューヨカーに村上の短編が載った時の話や、村上の短編の朗読会の話が、ともに「ハルキ・ムラカミ」からの再録だったのには、ちょっとがっかり。しかし、東洋経済がこんな本を出すんだ?

 

●7566 伝える力 (ビジネス) 池上 彰 (PHP) ☆☆☆

 

伝える力 (PHPビジネス新書)

伝える力 (PHPビジネス新書)

 

 

07年の本で、14年度で何と124刷。ブーム前夜か、始まったばかりの頃か。NHKの週刊こどもニュースのことがよく出てくることからも、そう感じる。

ただ、内容は正直物足りない。個別に書いていることは、間違ってはいないけれど、驚きもない。そして、なにより全体の構成に、論理的な体系化を感じないのだ。

まあ、これは最近の池上の新書にも、良く感じる欠点だが。そのあたりは、やはり本職の斎藤孝あたりに、一日の長がある。